正確さの精度

美術解剖学を学ぶ目的

これから解説する技術は、「何も見ずに人間をそれらしく描く方法」です。本物の人間やポーズ集を見ながら写す「模写」とは異なり、いわば「創作」の領域になります。

 

しかしながら、人体の構造というのはとても複雑です。体には多くの筋肉や脂肪がついており、関節が動くときにはそれらはとても複雑に動きます。
どういう動きをしたときにどの筋肉が動くか、あるいはどの骨が見えるか見えないかは、実際に体を動かしてみないと正確にはわからないものです。構造だけ把握していても限界があります。

 

通常、画家を志す人が美術解剖学を学ぶ理由は、人体の構造を把握することで、模写するときにモデルの筋肉や骨の構造を把握しやすくするためです。
「ここにこの筋肉があるはずだ」とわかっていると、よく観察することでその細かなくぼみなどを察知することができるからです。何も知識がないと、細かい部分を見逃しがちです。

 

つまり美術解剖学を学ぶのは、人体を模写するときにより正確に写し取ることができるためであり、「何も見ずに描く」という目的ではあまり使われない、とアカデミックな美術の世界では考えられていました。
このように超リアルな絵を描きたいときには「人体の構造を学んだ上で模写する」のですが、現代の美術では必ずしも超リアルな模写だけが要求されるわけではありません。

 

たとえばアニメーターという職業では、まさか1枚のアニメ絵をレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」のようにリアルに描け、とはいわないでしょう。アニメの絵なので非常に大雑把で、正確さも欠けている場合もあります。しかし「30分程度」という非常に速い速度で描かなければなりません。

 

漫画家なども同様で、正確さよりも速度が要求されます。人体と描画する際、正確さよりもはるかに速度が求められることはよくあります。
そして正確さと速度は、いうまでもなく反比例します。

 

 

描く「速度」と「正確さ」

速度と正確さ、どちらを優先するかは、絵を描く目的によります。

 

先述の漫画家やアニメーターの場合、もちろん速度のほうがずっと重視されます。
たとえば4コマ漫画の漫画家は、1ヶ月で64コマの絵を描かなければなりません(1ページに8コマ×8ページ)
1ヶ月は30日しかないので、仮に初日からいきなりペンを入れ始めたとしても、休みなしで1日に2枚は描かなければなりません(実際にはストーリーを考えたり打ち合わせをしたリするため、もっと短時間で描かなければならないでしょう)

 

これに対し、たとえば美術大学では、目の前にある卵を一つ模写するのに、24時間かけて超リアルに描いたりします。卵という単純な形のものを描画するだけで24時間とは驚くべき時間のかけ方です。これは速度よりも正確さをはるかに重要視した描きかたです。

 

 

あなたの「目的」

あなたが絵を描く目的によって、絵を描く速度と正確さ、どちらを優先するかを選ぶ必要があります。

 

仮にあなたが漫画を描きたいとして、1コマあたりどれくらいの時間がかかったでしょうか?そこから目的のページ数描くのにどれくらいの時間がかかりますか?これらははじめから計算してはじめなければなりません。さもないと、完成までに何十年とか、とてつもない時間がかかる計算になるかもしれません。

 

もしあなたが絵つきのゲームの作りたいとして、1枚絵が1000枚必要な大型ゲームを一人で作ることを企画したとします。
たとえば1枚の絵を描くのに2週間かかったとしたら、1000枚の絵を描くのに2000週間、つまり約41年かかることになります。

お知らせ

次回の「関西創作交流会(主に自分の作品を見せながら雑談する会)」は9月9日(土)寝屋川市で行います。参加費無料なのでぜひご参加ください。

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