倍数の感覚

倍数の感覚とは?

等分と逆に、倍数を求めることもよくあります。
倍数とは何かというと、たとえば

 

画像:長い線と短い線
長い線と短い線
ここにある長い線は、短い線の何倍か、というような感覚です。
短い線は長い線の何倍か、を求めるのが「等分の感覚」ですが、その逆ですね。

 

これはたとえば、最初に頭部を描き、次に胴体を描くときに「胴体の長さは頭部の2.25倍」というふうにです。

 

ただしこの倍数の感覚は、正確に長さを出すのが困難な場合が多いです。
2倍ならわかりやすいかもしれませんが、3倍や4倍を定規を使わずに正確に出すのは困難です。

 

そしてまた、倍数を使う場合というのはたいてい、元の線よりもずっと長い線を描くために使用します。
長い線を描くとき、長さを間違って描いてしまうと、その線を基準にしたすべての部分の長さは狂ってしまいます。
正確に描くのが難しい割りに、いい加減に描いてしまうと致命的です。

 

長い線はあまり頻繁に描くものではなく、概形の基準点を取るくらいしか使いません。
なので倍数に関しては、感覚的にやるよりも素直に定規を使って正確に測定したほうがいいでしょう。

 

倍数の感覚については、ここでは練習しないことにします。
感覚に頼るより、定規やデジタルソフトウェアの力を使って、数字で正確に描画しましょう。

 

 

定規が使えない場合

倍数の感覚を求めるとき、定規が使えないことがあります。

 

紙に描画するときは定規を使えばいいのですが、たとえば人物の模写をするとき、元の人物の胴体の長さは頭の長さの何倍か、を知りたいことがよくあります。
直接モデルの人物に定規を当てることはできませんので、見た感じの感覚で倍率を求めることになります。

 

このような場合、倍数ができるだけ小さくなるように基準点を取ってください。

 

画像:人間の概形の線画。腰にベルトをつけている。
人間の概形の線画。腰にベルトをつけている。
このような画像の場合、「胴体が頭部の何倍か」とすぐに考えるより、まず胴体を2等分し、「2等分した部分と頭部の比率はいくらか」と考えます。
あるいはもう少し近い比率の部分を基準点にとります。せめて2対1くらいのところを基準に取りましょう。

 

画像:基準点の取りかた。胴体の2分割の部分と頭部を比較。
基準点の取りかた。胴体の2分割の部分と頭部を比較。
なぜかというと、倍率が大きいほど不正確になるからです。
ある線の2倍の長さを描くより、6倍の長さを正確に描くほうが難しいからです。

 

どうしても倍数の大きい線を描く場合は、写真に取ったりして何とかして定規で測れるようにしましょう。
指や鉛筆で長さの倍率を測る方法もありますが、たいてい正確に測れず、当てになりません。

 

画像:頭部と足の先までの倍率を測定。
頭部と足の先までの倍率を測定。