関節点とは?

実際に人体寸法の統計を取り、BOXを作るとこんな感じになります。

 

画像:3DCGのBOX。
3DCGのBOX
このような人間と同じ基準位置を持つロボットのようなものを作り、これにポーズをとらせた状態を想定し、紙にBOXを描きます。そしてこれらBOXを参考にしながら線を描くわけです。

 

ここで一つ気をつけなければならないことがあります。それは「関節」です。
人間はポーズをとったり運動したりするには、主に関節を回す必要があります(関節以外の運動もありますが)
人間の運動のほとんどは関節運動によって行われます。

 

それぞれのBOXの形状がどんなに正確でも、関節の回し方が間違っていればおかしな絵になってしまいます。

 

ところで関節の回し方を間違うとはどういうことでしょうか?
2種類あります。

 

 

「関節点」の位置

関節の間違いで起こりうる問題として、一つは「関節の位置がおかしい場合」です。
関節同士はBOXをつないでいるものですが、この「つなぎ目」の位置がおかしいと、運動させてもおかしな絵になります。

 

3DCGでは「ボーン」というものがあり、図の黄色く光っている部分がボーンです。

 

画像:3DCGでボーンを光らせたもの
3DCGでボーンを光らせたもの
3DCGでは、ボーンを回転させるとそれにしたがって本物の人間のように関節が回ります。

 

画像:ボーンでBOXを少し回転させたもの
ボーンでBOXを少し回転させたもの
このように回すとき、回すときの基準点があります。「このボーンはここを中心に回る」という点です。
ふつうなら骨の関節の位置がその点だと思うでしょう。ほとんどの場合は確かにそうなのですが、しかし例外もあり、実は人体の関節運動は、必ずしも「骨の関節部分」を中心に回転するわけではありません。

 

これは骨の構造や筋肉や脂肪の厚さなども関係しており、早い話が自分で実際に関節を動かしてみるとよくわかります。
人体の骨格図と比較してみると、必ずしも関節の位置を中心に回っているわけではないのがわかります。

 

たとえば背骨はたくさんの骨がつなげられてできている形をしていますが、どこを中心に回っているかといわれると答えが難しいです。
しかし実際には「この辺を中心に回すとだいたい正確に描ける」というような点があります。

 

腕の関節にしても、下腕の関節(つまり肘)は少し複雑になっており、下腕は2つの骨が平行して並んでいるため、どこが関節なのかといわれると答えにくかったりします。
ところが実際には下腕は、ある一点を中心に回っていると考えて描いても差支えがありません。それはおよそ肘の中心辺りですが、ここを中心に回すとおよそ正確に下腕を描けます。

 

そこでこのウェブサイトでは「必ずしも関節の位置そのものとは限らないが、実質そこを中心に体の各部(BOX)が回っている点」を「関節点」と呼ぶことにします。
BOXや人体の各部(腕や脚など)を関節運動に従って回すとき、どこを中心にして回すかといえばこの「関節点」を中心にまわすことになります。

 

ほとんどの関節点は骨の関節の位置ですが、そうでないこともたまにあります。
人体を描画するとき、重要なのは骨の関節の位置や形ではなく、実質的な「関節点」のほうです。

 

もちろん骨の関節が実際にどこにあり、どのような構造で動いているか知っておいたほうがいいでしょう。ところが常に関節を中心にして回してしまうと、なんだかおかしな回り方になる、ということがたまに起こります。
これは実質的な「関節点」と「関節」の位置が同じだと思っているからです。回転の中心はいつも「骨の関節の位置」とは限りません。

 

回転の中心になる位置を「関節点」と呼ぶことにし、BOXを回すときには常にこの関節点を中心に回します。

 

 

関節の回転角度

もう一つ間違えてはならないのが、関節の回転角度です。
人間の関節は回転角度の限界が決まっており、多くの人で同じくらい回転します。体の柔らかい人もいますが、そういうのではなく、ありえない方向に曲がりすぎるとかはありえません。

 

関節の曲がりうる角度内で、関節点を回転させなければなりません。
しかし実はこれが意外と難しく、特に紙面上で描いていると、いつの間にかありえない角度に曲げていることがあります。

 

特に難しいと思われるのは上腕の付け根や肘の回転角度です。
これは線画だけ描いているとわからないのですが、線を描いた後に細かく陰影をつけてみると、意外にもおかしな形であることが後でわかったりします。

 

これについてはずっと後の解剖学の章で説明することにします。
こういう難しい問題については、概形の線だけ描いているときにはあまり気になりませんので、とりあえずは順を追って、まずはBOXと各部の大まかな形状、そしてそれらをつないでいる関節点についてみていきましょう。

 

 

関節の回転の3種類

関節の回転には3種類あります。
「前屈と後屈(前後に曲げる)」「即屈(横へ曲げる)」「回旋(ひねり)」です。
3DCGの世界では前屈後屈をピッチ、即屈をヘディング、回旋をバンク(ツイスト)といわれます。
これは骨の方向と、それに対する回転方向によってこのように呼ばれます。

 

前屈あるいは後屈(ピッチ)とは、骨に対して下図のように回転するものです。

 

画像:前屈後屈(ピッチ回転)
前屈後屈(ピッチ回転)
即屈(ヘディング)は骨に対して下図のように回転します。

 

画像:即屈(ヘディング回転)
即屈(ヘディング回転)
前屈と即屈(ピッチとヘディング)は同じと思うかもしれません。確かに似たようなものです。
どのように区別されているかというと、「およそ正面とみなされるの面に対して曲がるのを前屈あるいは後屈(ピッチ)」「前屈(ピッチ)の90度方向を即屈(ヘディング)」のように呼んでいます。
この区別は割と感覚的なもので、どちらかというと「折り曲げる」のが前屈(ピッチ)で、「横に曲げる」のが即屈(ヘディング)といった感じです。

 

たとえば肘の回転の場合、前屈(ピッチ)回転はこのようになり

 

画像:肘のピッチ回転
肘のピッチ回転
即屈(ヘディング)はこのようになります。

 

画像:肘のヘディング回転
肘のヘディング回転
肘なら前屈(ピッチ)は160度くらいまがりますが、即屈(ヘディング)はほとんど曲がりません。

 

さらに「回旋(バンク)」という方向がありますが、これは先ほどの前屈後屈や即屈とは明らかに性質が異なるもので、いわば骨を「ひねる」回転です。「ツイスト」とも呼ばれます。

 

画像:回旋(バンク回転)
回旋(バンク回転)
回転時の輪郭の描画:
回転するときの描画の注意ですが、前屈後屈と即屈はおよそ、関節付近だけ曲がります。
これに対し、回旋については、骨についている肉全体が少しずつひねられると考えてください。

 

たとえば上腕を前屈方向に曲げると、下図のように関節付近だけ曲がりますが、

 

画像:肘をピッチ方向に曲げた肉の動き
肘をピッチ方向に曲げた肉の動き
回旋させると、上腕全体の肉が少しずつひねられる動きになります。

 

画像:肘をバンク回転した肉の動き
肘をバンク回転した肉の動き
しかし全ての筋肉や脂肪がこの法則通りに動くわけではありません。例外もありますので、それぞれ見ていきましょう。