頭部

まずは頭部の形状を見ていきましょう。

 

画像:頭部の正面、側面の図
頭部の正面、側面の図

 

BOXの長さ

縦は26.4センチ、横が18センチ、奥行きが19.8センチとします。
6センチメートル=1モジュールとして計算すると、縦4.4モジュール、横3モジュール、奥行き3.3モジュールです。
縦の長さ4.4モジュールは、髪の長さを含めます。また横3モジュールは耳を含めず、奥行き3.3モジュールは鼻を含めませんが、髪の厚みを含めます。

 

現実の人間はもう少し頭部の横幅が狭い傾向にありますが(15センチ程度)、とりあえず今はキャラクター描画を目的とするので、これで話を進めましょう。

 

 

髪の厚さは、全縦長の半分(13.2センチ、2.2モジュール)のさらに8分の1の長さ(4分の1モジュール)です。丸坊主の場合はここが頭部の最上部になります。
この位置は重要になります。なぜなら髪を描くときは生え際の位置がわかっていないといけないからです。
これらの位置の長さをセンチメートル単位、あるいはモジュール単位で覚える必要はありません。「何分の何」という等分割で覚えておけば十分です。細かい位置まですべて長さを記憶し、定規で測っていたのでは時間がかかりすぎます(どうしても正確に描きたいなら長さを覚えてもいいのですが)

 

髪を描くときは、最初丸坊主の状態で描いて、この上に髪を描いていきます。
髪の1本1本はほとんど厚みのない「線」に近いですが、塊になると厚さがあります。
髪の厚みを考慮しながら、方向や長さを設定しつつ髪を描いていかないと、紙がおかしな形に見えてしまうことがあるので注意しましょう。

 

慣れれば丸坊主の状態を下書きしなくてもいきなり描けるかもしれませんが、慣れるまではちゃんと丸坊主の状態から生え際のラインを下書きしてから髪を描くようにしましょう。

 

 

頭身数と身長

身長が頭部の縦の長さの何倍か、をあらわすのに「頭身」という数値を使います。
昔から、頭が小さく背が高いほどスタイルがいいといわれ、「8頭身」になるとモデルのようにスタイルがいい、などといわれます。

 

さて、頭部の縦の長さが26.4センチ(髪を含む)とすると、身長158センチで6頭身、身長184センチで7頭身となります。
これは髪の毛を含むので、丸坊主にするともう少し頭身数が上がります。

 

マンガやアニメのキャラクターは、特に頭身数が低く描かれる傾向がありますので、画風のよって頭部の大きさを微調整するといいでしょう。
リアルな形状をそのままキャラクターの絵に持ち込むと、意外にも脚が長すぎるように見えることがよくあります。そういう場合は頭部を少しだけ大きくします。

 

 

顔面パーツの描画

 

眉毛・鼻・口の位置

縦の長さ4.4モジュールのうち、半分に分けた位置が眉毛の位置になります。
またその半分が鼻の位置で、鼻からあごまでの長さの約3分の1の位置が口の位置になります。

 

横位置に関しては、目は頭部の左右半分をおよそ4分割した中に、以下のように入ります。

 

画像:目、鼻、口の位置、正面図
目、鼻、口の位置、正面図
リアルな人間ではこのような比率になっているか、あるいはもう少し眉毛の位置が比率的に高いところにあります。
一方マンガやアニメのキャラクターの絵では、眉毛の位置や鼻の位置はかなりバラバラで、口の位置も上下していることがよくあります。

 

マンガやアニメの画風は本当にさまざまなので、どれが正しい比率か、というようなことはいうことができません。
しかしとりあえず、あまりおかしな位置にパーツを描くと絵として奇妙になります。
まずは実際の人間のパーツがどれくらいかを把握しておき、そこから必要に応じてずらしていくといいでしょう。
そして一度正しい位置が決まったら、その比率をメモしておき、いつでも同じキャラクターに見えるようにしておきましょう。顔面パーツの位置の比率を間違うと、違うキャラクターに見えてしまいます。画風を一定化させるためにも、比率だけ数字で覚えておくと確実です。

 

 

目の位置

 

目の位置ですが、これも画風によってバラバラです。とりあえずは私の画風で説明しますが、人によって違うので参考程度にしてください。
ただし目の部分の「表面の形状」はどんなキャラクターで同じです。特に目の外側の部分に行くにつれて、皮膚は奥へ入り込んでいきますので、そこも考えながら下書きしましょう。目が前に出すぎないように気をつけましょう。
目の描き方についての詳細は後述します。

 

 

輪郭の描画

頭部の形状を把握するために補助的な輪郭線を描きたいところですが、先に顔面のパーツを描いてしまうと輪郭線もわかりやすくなります。
なので先に、眉毛、目、鼻、口を描いてしまいます。

 

 

先ほど眉毛、鼻、口の縦の位置や長さを説明しましたが、本当は縦方向だけ覚えていてもだめで、実際に描くときは横方向や奥行き方向についても長さを知っていなければなりません。
これらの横位置と奥行きを把握すると同時に、顔面そのものが「斜め方向へ奥行きを持っている」ということも把握しましょう。

 

まず顔面の形状ですが、この画像を見てください。

 

画像:顔面をかなり上から見た3DCGの図
顔面をかなり上から見た3DCGの図
顔面はこのように、横方向に広がる「面」のようなものではなく、外側へ行くにつれて奥へ入っていきます。
目の端あたりまで行くと、頭部全体の奥行きの4分の1くらいまで奥行きを持っていきます。

 

縦、横、高さを正確に描くにはどうしたらいいでしょうか?

 

要はそれは「縦、横、奥行き」が一つに決まればいいので、方法はいくつかあります。
その中で私が使いやすいと思った方法を紹介します。

 

 

まず鼻を描いてしまいます。これは顔の中心部にあるので簡単です。
正面から見ると、縦は頭部全体の縦長さの半分の高さを取り、その下半分をさらに半分したその間。
横はもちろん顔の中心部、奥行きは、側面図で見ると最も前の面です。
図を見たほうがわかりやすいでしょう。斜め上から見るとこのような位置にあります。

 

画像:斜め上から見た図。鼻の位置。
斜め上から見た図。鼻の位置。
正面から見るとこのような位置になります。鼻は横幅があるので、陰影を使って実際の形を描くとこのようになります。

 

画像:斜め上図。鼻に陰影をつけたもの。
斜め上図。鼻に陰影をつけたもの。

 

眉毛

眉毛の位置ですが、まず耳の付け根から手前へ向かって線を引き、それを10分の9した位置をチェックします(点B)

 

画像:点B
点B
そして鼻の最上点である点Aから点Bへ線を引き、これの6分の1の点が眉毛のもっとも内側の位置。これを点Cとします。

 

画像:点A、点B、点C
点A、点B、点C
点Cから、さきほどの耳の付け根からの線を半分に割った点へ線を引き、それの5分の4の位置を点Dとし、点CからDへ線を引けば、それが眉毛の位置となります。

 

画像:点Cと点Dへ線を引いて眉毛
点Cと点Dへ線を引いて眉毛
このように、顔の正面の中心から側面の線のある点へ向かって線を引き、それをまた決まった割合で分割で位置を出すと、楽に計算できます。
最初はややこしいですが、慣れると簡単にできるようになります。数字は細かいので、どこかに記録しておくといいでしょう。

 

もちろんこの数字がすべて正しいというわけではなく、自分の画風に合わせた最適な割合がほかにあるかもしれません。
その場合は数字を変えればいいのですが、描きかたのプロセスは同じです。

 

これで眉毛が描けたので、眉毛の中心→眉毛→耳の付け根→後頭部へのラインが描けるようになります。

 

画像:眉毛の中心→耳の付け根→後頭部に行くライン
眉毛の中心→耳の付け根→後頭部に行くライン

 

目の位置は画風によって異なるのですが、とりあえずは私のいつものやり方を紹介します。
高さや数字の割合は異なっても、定規を使った描きかたの手順は同じです。

 

まず下の画像、鼻の最上部である点Aから鼻の最下部点Bを三分割します。この間に目が入ります。

 

画像:点Aと点B、三分割の点
点Aと点B、三分割の点
上の分割点を点Cとし、さらに耳の付け根の同じ高さから正面に向かって出した線を、前から5分の3の位置を点Dとし、点Cと点Dを結びます。

 

画像:点C点Dを結ぶ
点C点Dを結ぶ
線CDを1:1:2に分割し、鼻側の分割点を点E、外側の点をFとすると、Eが目の中央側の端になります。

 

画像:点E,F
点E,F
さらに点Fから、耳付け根から正面に出した線の7分の3の点を点Gとし、FGへ線を引きます。その線FGを半分に分割します。その点をHとします。

 

画像:線FGと点H
線FGと点H
目の上の輪郭を、点EFHを通るように描きます。

 

画像:目の上の輪郭を描いたもの
目の上の輪郭を描いたもの
点EFHから真下に線を引きましょう。上下三分割の下の分割点へ引きます。目の下の輪郭は、こうなります。

 

画像:目の下の輪郭を描いたもの
目の下の輪郭を描いたもの
目の位置は少しややこしく感じるでしょう。
眼球は球の形をしていることもあり、目の中央はやや前で突き出ていて、端は奥へ引っ込んでいます。
また外側の目の端は、中央の端よりもより奥へ引っ込んでいます。これは顔面そのものが端へ行くにつれてかなり奥へ引っ込んでいくからです。

 

顔面は中央が最も前に突き出ており、端へいくにしたがって少しずつ奥へ引っ込んでいきます。
顔面全体が一枚の板のようにならないように注意しましょう。

 

参考のため、目の上部の中央→目の上の輪郭→耳の付け根のラインを描いておきます。

 

画像:目の上部の中央→目の上の輪郭→耳の付け根のライン
目の上部の中央→目の上の輪郭→耳の付け根のライン

 

アニメやマンガの絵で、特に美少女キャラクターは口が小さくかかれる傾向にありますが、手を抜くとあごがやたら前に出たりしておかしな絵になってしまうので注意しましょう。
念のため、今までと同じ方法で計算して描きます。

 

まず鼻の最下部を点Aとし、そこからあごの中心へ向かって線を引きます。
あごの中心は、頭部BOX前面の中央最下部(点B)から、そこから首の中心へ引いた線の3分の1の点です。このあごの中心を点Cとしましょう。
点Aと点Cを結び、それを3分の1し、さらに4分の1もします。そのちょうど中央の点が口の中心です。ここを点Dとします(3分の1は0.33で4分の1は0.25なので、その中間は0.29=0.3と覚えてもいいでしょう。しかし定規を使わないとしたら、3分の1と4分の1の真ん中が覚えやすいです)

 

画像:3分の1と4分の1の中心点D
3分の1と4分の1の中心点D
ここからやはり耳の付け根の同じ高さから正面に引いた線の10分の7の点を点Eとし、線DEを引きます。

 

画像:線DE
線DE
これを6分の1した場所が、「口をめいいっぱい開いた端の点」です。反対側も同じように処理します。
ただしこの位置は「美少女キャラクターがめいいっぱい口を開いたときの点」なので、口を閉じるとこれの半分くらいの横長になります。

 

また男性キャラやいかついキャラクターなら、もっと口を大きく描きたいかもしれません。その場合は6分の1ではなく、もっと長くします。

 

 

ところで眉毛、目、口においては、顔面の横の中心点から、「耳の付け根から正面に引いた線のある点」へ向かって線を引きましたね?

 

この場合「耳の付け根から正面に引いた線」を10分の7していますが、この数字は「顔面の外側へ行くにつれて斜めになっていく角度」を示しています。
これが小さすぎると顔面は板のように平面に近い面になり、大きすぎると奥へ入りすぎた感じの絵になってしまいます。

 

なので、この「耳の付け根から正面に引いた線」を分割したときの割合は重要な数字になります。
この数字を間違うとおかしな絵になるので注意しましょう。
ほかの数字は自分の画風に合わせて変更しても平気です。

 

画像:口から顔の外側へのライン。
口から顔の外側へのライン。

 

関節点

頭部の関節点は

 

画像:頭部の関節点
頭部の関節点
あごと同じ高さで、横から見た場合は首の中央です。

 

首の上部がこの関節点なのですが、首の下にまた関節点が一つあります。
「首を曲げる」ときには、首の上部と首の下部を、二つの関節点があることを覚えておきましょう。

 

この頭部の関節点は、実は前方向(ピッチ)にはほとんど曲がらず、後ろにはよく曲がります。
また横方向(ヘディング)に曲がるときは、首の上下の2点とも同時に曲がります。
ひねり方向に関しては、首全体がひねられます。

 

これら首の運動に関しては、首の関節点の項で詳細に説明します。