個人差・体格差

体格差

まず、体格差でBOXは変わりません。
太っている人(あるいは太って見える人)は、筋肉や脂肪の量が多いだけで、骨自体が横に広いわけではありません。
BOX理論のBOXは骨の位置をあらわしているものです。なので、太っていてもやせていても、BOXは変わりません。

 

ただ、太っていて元々骨も横に広いという人もいます。これは完全に個人差の範囲なので、体格とは切り離して考えましょう。

 

 

個人差

1997年から1998年に取られた「人体寸法データベース」という統計データがあります。
このデータは当時公開されており、エクセルファイルで見ることができました。
そのエクセル用の統計データは、身長や手の長さなどの平均値や中央値、最大から最小値まで載せてありました。

 

内容をもう少し具体的にいうと、頭の奥行き幅、ウエスト、足の幅、腰の幅、床からへそまでの高さ、下腕の長さ、腕の外周、手の幅、手の長さ、床からくるぶしまでの高さ……など、すべてあわせておよそ30項目にわたります。
項目のほとんどは、体のある部分の長さや、周囲の長さでした。「長さ」に関するデータがほとんどなので、美術用に使えると思いました。

 

それで私は、自分の持っているエクセルでファイルを開き、身長や手の長さなどのデータを用いて個人差を求めようとしました。

 

やり方は簡単で、それぞれの長さや周囲などの値を、すべて「最小値÷平均値」「最大値÷平均値」の値を出すというものです。
最小値÷平均値で「最小値は平均値の何パーセントか」を出すことができます。つまりこれが個人差の小さい限界になると考えました。
同様に、最大値÷平均値で「最大値は平均値の何パーセントか」を出すことができます。これが個人差の大きい限界になると考えました。

 

それで値を出したところ、最小の限界はおよそ90%、最大の限界は110%になりました(それはたとえば、20歳女性の平均身長は158センチなのですが、その中で一番背が低かった女性は158×0.9で142センチ、一番背が高かった女性は158×1.1で173センチ、という意味です)

 

つまり身長など、人体の長さに関する個人差は、90〜110%の中におよそ当てはまる、という結論を得ました。

 

今までBOX理論で平均的なデータを取り扱ってきましたが、これを元に個人差を含めたBOXを作ろうと思ったら、BOXの長さに関しては90〜110%の間にとどめておけば、無理のない範囲に収まると考えられます。
これがたとえば、BOXのある辺を元の値(平均値)の20%も変化させてしまうと、人間としておかしな形になってしまうでしょう(漫画的な表現ならそれでもいいかもしれませんが、ここはとりあえずリアルに描画することを目的にしています)

 

ちなみにサンプル数(計測した人間の数)は200人でした。数としては十分だと思います。

 

またすべての項目の個人差が90〜110%だったわけではなく、項目によっては95〜105%程度だったり、85〜115%だったりするところもありました。それでもたいていの項目は90〜110%の中に収まっていました。

 

 

最大と最小はかなり極端な値

最小値が平均の90%、最大値が110%といいましたが、これはサンプル200人のうちの最小と最大です。
200人の中でといえば、かなり外れた値だと思います。たとえば日本人の成人女性の平均身長は158センチ程度ですが、これを110%すると173センチとなり、これは「成人女性を200人適当に取り出すと、その中の最も背の高い女性」となります。これはふつうに見ると「ちょっと背が高いかな?」どころではなく、「すごく背が高い」と感じられるくらいでしょう。

 

90%、110%というのは、かなり並外れた値です。158センチの90%は142センチで、ふつうに考えてもかなり背が低いほうです。
絵を描くときでも、「少し個人差を出したいかな」という程度であれば、いきなり90%や110%の値を使うのではなく、95%〜105%くらいの範囲にとどめたほうが、不自然に見えないと思います。

 

 

身長と顔の大きさについて

身長が高くなると、それに比例して頭も大きくなるのでしょうか。
答えはNoのようです。実際絵に描いてみて、身長と頭の大きさを比例して描くと、なんだかおかしな絵になってしまいました。
しかし頭部の奥行き長さや頭部の横幅の個人差も、およそ90〜110%の間に収まっていました(正確には91〜109%)

 

頭部の大きさも純粋に個人差の範囲に収まる、と考えたほうがよさそうです。
たとえば身長は平均値でも、頭が平均より110%大きい人もいる。
身長が平均値の90%で頭が平均より110%大きい人もいる。
身長が平均の110%で頭が平均より90%の人もいる。

 

というような完全に独立した個人差を考えたほうがよさそうです。
よく日本人でもすごく頭身数の高い、8頭身のモデルなどがいますが、たまたま個人差の範囲で「身長が高くて頭が小さい」という比率になったということでしょう。
逆に身長が低くて頭の大きい人もいます。「身長が高いからそれに比例して頭が大きくなる」という規則があるわけではなく、身長も頭部の大きさも独立した個人差が存在するようです。