三角関数の値

さて実際に三角関数を使うときは、実際の辺の長さにsinやcosを掛け算することになります。
そのためにはもちろん、回転する角度に応じた三角関数の値を覚えておかなければなりません。

 

90度あるいは180度以上回転させる必要はない
BOXを回転させるとき、90度以上回転させる必要はありません。
たとえば120度回転させたければまず90度回転させた状態を基準にして計算を始めればいいからです。仮に頭部BOXを左へ奥行き120度回転させるのであれば、まず左に90度回した状態を基準にします。つまり真横の顔のBOXから、さらに30度回転させればいいわけです。

 

180度以上回転させるときも同様で、たとえば240度回転させようと思ったら、逆方向から120度回転させたのと同じです。
なのでこの場合、逆方向にまず90度回転させ、さらに30度開店させればいいことになります。

 

このようにして、90度以上回転させる必要はなく、したがって三角関数の値も90度まで覚えれば十分ということになります。

 

 

覚えるべき値

では三角関数の値は、0から90度までの値を、1度おきにすべて覚えなければならないのでしょうか?
さすがにそこまで暗記するのは大変で、無理そうな気がします。たぶんですが、そこまでやる必要もありません。

 

考えてみてほしいのですが、体のどの部分かを回転させようとするとき「ここは左に23度回転させる」とか「ここは右に12度、上に67度回す」などと考えるでしょうか?

 

そんな中途半端な値はまず使わないと思います。設計ではなく通常の美術の範囲なので、そこまで精密さは必要ありません。
顔や体を回転させるのに、だいたいはキリのいい数字を使って考えると思います。
たとえば「ここは右に30度回転させて、上には45度回す」というふうに。

 

なので、およそキリのいい数字だけ、等間隔で覚えておけば十分でしょう。

 

30度おきでは少々物足りない気がします。これでは30度と60度しか回転できません。
かといって10度おきに回すとややこしそうです。これだと10,20,30,40,50,60,70,80度おきということになりますが、ちょっと多すぎる気がします。覚えるのも大変です。

 

そこで角度的にキリのいい、15度おきで覚えることを私は推奨します。
覚えるべき値は15,30,45,60,75です。見た目的にも、これだけ覚えておけばどんなポーズでも対応できそうです。

 

もちろんこれは私が推奨しているだけであって、もっと細かく区切ってもかまいません。自分が必要だと思うくらいに区切りをつけましょう。

 

 

 

15度おきの値

15度おきのcosの値を並べてみましょう。実は三角関数の値そのものは、ほとんどはキリのいい数字になってくれません。円周率のように小数点以下ずっと永久に続くややこしい値になってしまいます。

 

Windowsパソコンなら電卓の機能で関数電卓に変換して計算できます。値を出してみると、

 

cos15度=0.9659……
cos30度=0.8660……
cos45度=0.7071……
cos60度=0.5
cos75度=0.2588……

 

こんな値を暗記するのは面倒なので、もっとキリのいい数字にして覚えてしまいましょう。
0.01くらいの誤差は画像としてはほとんど無視できるくらいの数字です。なので私はこのように覚えており、かつこれらの値を計算するときに使っています。

 

cos15度=0.95
cos30度=0.85
cos45度=0.7
cos60度=0.5
cos75度=0.25

 

15度は95%、30度は85%、45度は70%、60度は50%(半分)、75度は25%(4分の1)

 

95→85→70→半分→4分の1

 

こうすると覚えやすくはないでしょうか。

 

ちなみに0度回すことはないので、0は覚える必要はありません。
また90度回すなら真横から見た図を使えばいいので、これも覚える必要はありません。

 

 

sinやtanは覚える必要はない

sinは覚える必要はありません。前に説明したとおり、計算上はすべてcosだけでもできるからです。
しかし感覚的にsinを使いたくなることもあるかもしれません。でもsinとcosの関係は

 

cosθ=sin(90-θ)

 

であり、逆も成り立ちます。

 

sinθ=cos(90-θ)

 

つまり先ほどと順番が逆になるだけです。

 

sin15度=0.25
sin30度=0.5
sin45度=0.7
sin60度=0.85
sin75度=0.95

 

なので覚える数字はcosだけでいいのです。
覚えられないと思ったら、どこかにメモしておいて、使うときになったらそれを見ながら計算してもいいのです。

 

またBOX回転で辺の長さを求めるときは、sinとcosだけ計算に使うので、tanを使うことはありません。

 

しかし実は、これも後で詳しく説明しますが、遠近法の消失点を求めるときにtanの値を使用します。
といってもこちらはtanθ/tan15度というような、別の基準角度(15度)で割り算した値を使用するので、tanそのままの値を覚えても実践で使えず意味がありません。なので今はtanは無視することにしましょう。

 

ちなみに「tanθ=sinθ/cosθ」という関係が成り立つので、電卓があればcos値からtanを求めることもできますが、15度おきに暗記してしまったほうが面倒がなくていいと思います。

 

 

数学を知らなくても描ける

このように数式など出してしまうと、非常にややこしく煩雑な手続きをしているように見えます。
「とにかく数字や数式など使いたくない」という方は、とりあえずは「線を15度回すと0.95倍になる」「線を30度回すと0.85倍になる」……というふうに覚えてしまいましょう。

 

もう一度いうと、線を何度回すと何倍になるかの倍率は

 

15度=0.95
30度=0.85
45度=0.7
60度=0.5
75度=0.25

 

です。画像でみると

 

画像:線を奥行きへ何度回すと何倍になる、の説明図。
線を奥行きへ何度回すと何倍になる、の説明図。
こんな感じです。数学的な理屈を理解していなくても、回す角度と倍率だけ覚えておけば大丈夫です。

 

しかし一つ注意したいこととして、どこの線をどの角度に回すか、ということです。
特に求めたい線の長さが、元は奥行き幅の場合は、掛け算をしても求める場気場所を取り違える可能性があります。

 

画像:奥行き幅を30度回して倍率をかけると違うところの値が求まってしまう説明図。
奥行き幅を30度回して倍率をかけると違うところの値が求まってしまう説明図。
このように、本来求めるべき線ではないところの値を求めてしまい、それを取り違えて使ってしまう可能性もあります。

 

数式やその理屈は理解しなくてもかまいません。数字は覚えなくてもよく、どこかにメモしておいて使うときに引き出せばいいのです。

 

ただ「線を30度回転させると0.85倍になる」というようなことを理解していても「0.85倍したところの長さがどこなのか」を空間的にしっかり把握できないといけません。

 

空間感覚は、絵描きにとっては避けて通れない必須のスキルです。ここだけは手を抜かずにしっかりやってください。