「線」「面」「色」「陰影」の統一性

統一性の問題

線の統一性とは何でしょうか。

 

たとえばあるキャラクターが走る動きがあるとし、そのために10枚の絵が使われているとします(およそ8分の1秒ごとに絵を10枚交換していく)
この10枚の絵で、輪郭線の太さがそれぞれバラバラだったらどうなるでしょうか。
わずか1秒少しの間に、輪郭線の太さがすばやく何度も変わってしまうと、動きとしては不自然に見えてしまいます。

 

なのでアニメの絵の輪郭線については、線の太さがすべて同じでなければなりません。
これら10枚の絵には、「常に同じ太さで線が描けるペン」を使います。
鉛筆では「濃さ」が一定しませんし、漫画用のペンでは「太さ」が一定しません。

 

 

「線」と「面」

3DCGというのは先述のとおり「彫刻して人形を作ってそれを動かす」という感覚に近いです。
最初に立体を作るので、できあがる画像は「面」に強いのですが、「線」にはあまり強くありません。

 

3DCGは、人形をカメラで写す感じなので、「どの面に光が当たり、こういう形状だからこのように影や色が付いて……」というようなことは非常に得意です。

 

しかし現実世界には「輪郭線」というものは存在しません。
われわれは「面の端」や「急に角度の変わる部分」「折り目」などを勝手に輪郭線として認識し、それをペンで描いているだけです。

 

その「線の認識」というのをコンピューターにやらせるのは、けっこう大変なのです。
「面の端」とはどこのことなのか(カメラから見て面と空間の接点で、面の角度がカメラから見て……」というふうに、具体的な定義を教えてやらないと機械は輪郭線を認識できません(それでも最近の3DCGソフトはかなり人間に近く線を認識していますが)

 

なので「どの部分が線なのか」という認識については、コンピューターよりも人間のほうが正確に認識できます。
この点で3DCGは、線については手書きよりも精度が劣ります。

 

 

「色」の統一性

線と同様の理由で、動きのための絵の色については、まったく同じ色である必要があります。
たとえば先ほどの例だと、10枚のキャラクターの服の色はすべて同じにしないといけません。
もし書き手のカンが悪く、10枚の絵でほんの少しずつ色が変わっていたとしたら、わずかな時間の間に服の色がすばやく変わってしまい、おかしな絵に見えてしまいます。

 

このため、手書きアニメの色については、作画する人はすべて、決まった規格の色を使わなければなりません。

 

 

「陰影」の統一性

これはしっかり作業者が連携すればいいのですが、陰影についてはどうでしょうか?
陰影というのは多くの場合、ぼかされて少しずつ変化していくものです。突然暗くなったりはしません。いわゆる「グラデーション」であり、明るいところから少しずつ暗くなっていきます。

 

この「どれくらいの割合で暗くなっていくか」という加減具合ですが、アニメのような動きを伴う場合、この加減具合が動きをあらわしている前後の絵でまったく同じでなければなりません。
陰影のある部分で、ある絵では急速に暗くなっていくのに、別の絵では急速でない、というような場合、これらの絵をすばやく交換するとやはり不自然な動きに見えます。

 

この問題を解決するため、アニメの世界では「セルシェーディング(トゥーンレンダリング)」という陰影の方法が使われます。
これは何かというと、陰影の「ぼかし」要素を排除し、代わりに陰影の境目を線のようにくっきりさせる方法です。

 

このやり方なら「ぼかし」がないため、比較的陰影の度合いが統一され、すばやく交換してもあまり不自然には見えません。
こういった手書きアニメの工夫というのは、「いくつかの手で書いた絵をすばやく交換することで動いているように見せる」という事情から生まれた方法です。