胴体

胸部、腹部、腰部を合わせて胴体と呼ぶことにします。

 

 

骨と関節

胴体の骨を見ていきましょう。

 

画像:胸部、腹部、腰部の骨。
胸部、腹部、腰部の骨。
胸部、腹部、腰部の骨。
胸部、腹部、腰部の骨。
胸部、腹部、腰部の骨。
胸部、腹部、腰部の骨。
胸部、腹部、腰部の骨。
胴体の骨は大きく分けて、背骨、肋骨(胸の骨)、骨盤(腰の骨)に分けられます。
鎖骨や肩甲骨も胴体の一部ですが、これらは胴体を動かしても基本的には動きません。動きに関しては肩の範囲に含めます。

 

胴体でまず重要なのは背骨です。これは蛇腹状(じゃばらじょう)になっており、全体は蛇のように滑らかに曲げられる構造になっています。

 

ただし実際はあまり滑らかには動きません。

 

まず胸部は、肋骨があるためにそれ自体は変形できず、内部ではほとんど曲げられません。胸部の背骨が鞭のようにしなやかに曲がってしまうと、肋骨が折れてしまいます。
なので胸部はそれ自体一つの塊として動きます。実際はわずかにしなやかさが残っていて、胸部内部で少しは曲がったりひねられたりもしますが、今回は無視します。

 

腰部も胸部と同じく、それ自体は大きく変形しません。腰部は主に骨盤という骨でできており、骨盤はそれ自体が一つの大きな骨なので、変形できません。

 

腹部は背骨しか入っておらず、それ以外は肉だけです。ここはある程度それ自体の変形が可能です。が、内臓が入っているので、あまり激しくは曲がりません。

 

こういった事情があるため、およその関節点の位置の定め方として、私は胸部、腹部、腰部と分けて考えています。
そして関節点はこれらの境目とします。これでだいたい正確に描けます。

 

画像:関節点の位置。骨で表示。
関節点の位置。骨で表示。
このように関節点は2つありますが、背骨で一つにつながっているという構造のため、自ら力を入れて回す場合はこの2つは必ず同時に動きます。片方だけ動くことはほとんどありません。
例外として、直立状態で片方の脚に体重をかけたとき、体重をかけたほうの脚の付け根は少し上に上がります。このとき骨盤が少し側屈方向へ曲がった状態になります。この場合は骨盤だけ回っています。

 

これらの骨がどれくらい回るかは、自分の体で試してみるとわかります。個人差はありますが、前屈後屈では90〜180度、側屈では60度程度、ひねりは90度くらいです。

 

画像:胴体をひねったもの。骨で表示。
胴体をひねったもの。骨で表示。
胴体をひねったもの。骨で表示。
胴体をひねったもの。骨で表示。

 

表面に出てくる骨

胴体で表面に形が現れる骨は、まず胸部では肋骨です。
肋骨は下の部分が現れやすく、肋骨の左右の最下部や、中央も形として出て来やすい部分です。

 

画像:肋骨最下部。左右と中央。肉体図。
肋骨最下部。左右と中央。肉体図。
ただし筋肉質な男性など、筋肉が分厚い場合は骨が筋肉に埋もれて見えないこともあります。
この形は特に、胴体を背後へのけぞらせると形として表面に現れやすくなります。胴体を前方へ曲げるとお腹に肉が集まるので、骨は肉に埋もれて形が出てこなくなります。

 

体型にもよりますが、肋骨の上部あたりも体の表面に出て来やすい形です。鎖骨中央のすぐ下あたりは、人によっては肉が薄く、肋骨の形が表面に出てきます。

 

腹部は骨がないので、表面に出てくる骨はありません。

 

腰部では巨大な骨盤があります。まず骨盤上部の左右は、多くの人で骨の形が表面に出てきます。
ちょうどズボンやスカートの最上部のラインです。自分で触ってみると、硬い骨があるのが確認できると思います。この高さの周辺は骨盤の最上部で、形がはっきり出てきます。

 

画像:骨盤上部、左右の骨。肉体図。
骨盤上部、左右の骨。肉体図。
ここも肋骨と同じで、筋肉が厚いと骨が埋もれて見えません。

 

お尻は肉がたくさん集まっているので、骨が表面には出てきません。
ただし肛門のすぐ左右には坐骨という骨があり、これは上から触ってみるとすぐに確認できます。上脚をめいいっぱい前方に上げると、表面にいくらか形が現れてきます。椅子に座っているとき、椅子の面に骨が当たっているのを感じると思いますが、それです。

 

腰部の前のほうでは、恥骨という骨が表面に現れてきます。

 

画像:恥骨付近、肉体図。
恥骨付近、肉体図。
最後に背骨です。これは普通に背を伸ばしているとほとんど表面には出てきませんが、体を前に曲げると形が表面に出てきます。
逆に後ろへのけぞると形が隠れてしまいます。自分の体で試してみてください。

 

画像:背骨。肉体図。
背骨。肉体図。

 

筋肉

胴体の筋肉を見ていきます。まず正面側はこのようになっています。

 

画像:胴体の筋肉、正面。
胴体の筋肉、正面。
正面の筋肉は大きく分けて2つあります。

 

胸を覆っているのが大胸筋で、お腹にある腹直筋が重要です。名前は覚えてなくてもかまいません。
この2つの筋肉ははっきりとふくらみが確認されます。胸の筋肉は、成人女性では乳房のせいであまり目立ちませんが、ちゃんとあります。わきの下あたりから乳房の下方へ向かって筋肉の端が確認できます。

 

お腹の筋肉も、やはり一般的な女性だとあまり目立ちませんが、わずかながら凹凸はあります。ゼロではないのでそれも書き込んだほうがいでしょう。

 

この2つの筋肉は、特に男性で鍛えている人の場合はかなり膨らんでいており、お腹のほうは上下でいくつかに割れていることもあります。

 

次に側面を見てみます。

 

画像:胴体の筋肉、側面。
胴体の筋肉、側面。
側面の筋肉は大きく分けて3つあります。

 

わきの下あたりにいくつか筋肉が集まった部分があります。そしてへそあたりの高さにまた膨らんだ筋肉があります。

 

わきのすぐ下の筋肉はたくさん集まっているのですが、ここまで割れているのは男性でもまれです。これらを一つの緩やかな塊とみなして描いてもいいでしょう。女性ではほとんど確認できません。

 

へその高さにある筋肉は、やはり男性では少しふくらみが確認でき、女性ではほとんど確認できません。
男性の場合は緩やかなふくらみとして描画するといいでしょう。

 

側面にある2つの筋肉は、女性ではほとんど確認できないくらいのふくらみなので、通常はないものとして扱ってもいいでしょう。
成人男性だといくらかふくらみがある場合があるので、ここに筋肉があるということは覚えておいたほうがいいと思います。

 

そして広背筋という筋肉が、三頭筋という上腕裏の筋肉から、つながって背中へ続きます。
この三頭筋と広背筋という2つの筋肉は、つながって一つとみなしてもいいでしょう。

 

 

最後に背面です。

 

画像:胴体の筋肉、背面。
胴体の筋肉、背面。
背中の筋肉はも大きく分けて2つあります。

 

背中の上のほうに、アルファベットのYの形をした筋肉があります。これもやはり女性ではほとんどわかりませんが、男性だと割と確認できます。Yの字に膨らんでいる、と覚えておけばいいでしょう。

 

そして背中の中心中央辺りからお尻の上あたりまで、背骨に沿うように左右対称で2つの筋肉があります。上のほうのY字の筋肉とつながっているように見えますが、実際は別物です。お尻の上まで伸びています。
これもやはり女性ではほとんど確認できませんが、男性では割とふくらみがあります。

 

さらに肩甲骨のふくらみ頂点付近に筋肉があります。細かいですが、これもやはり男性だと確認できる場合がありますが、ここは肩甲骨のほうが目立つことが多く、かなり鍛えている男性でないとあまり目立たないので、面倒なら覚えてなくてもいいでしょう。

 

また左右に後背筋という広い筋肉がありますが、あまり膨らんではいないので、実際はこの辺は肋骨と同じ形になっています。

 

最後にお尻ですが、これは乳房のような脂肪の塊ではなく、筋肉です。ただし筋肉だけではなく、脂肪も含まれています。
女性よりも男性のほうが筋肉が強力なので、お尻全体の凹凸は男性のほうがはっきりしており、デコボコしています。
女性のお尻のほうが滑らかで起伏が少なく、下へ垂れています。男性のほうが下へ垂れていません。

 

画像:尻の筋肉
尻の筋肉

 

実際の形状

胴体の実際の形状についてみていきます。

 

正面

まず正面から見ていきます。
胸には大きな筋肉(大胸筋)があります。これは女性では、乳房があることもあってほとんど確認できません。なので「男性にだけついている筋肉」とみなしてもいいでしょう。
この筋肉は男性の場合には描いて、女性の場合にはこれがなく、代わりに乳房があって、乳房の上端がわきの下につながっている、と考えていいと思います。
筋肉なので、鍛え上げた肉体ではかなり大きく膨らみます。
またこの筋肉の端は脇の下へ入っていきますが、これは少し上の三角筋(肩の筋肉)とくっついていて、実質一つとみなしてもいいでしょう。

 

画像:胸部正面
胸部正面
女性のみについている乳房の形状ですが、まずこれは筋肉ではないので、女性自身で自分の力で動かすことはできません。
動かせず、脂肪の塊のようなものなので、鍛えるということもできません。それ自体に重さがあるので、乳房は下に垂れて、重力で肉が下部に集まっています。
しかし形状はかなり個人差があり、共通する特徴というのはあまりありません。曲率や乳首の向きもいくらか個人差があります。
とりあえずは、重力で下に垂れ、下部に肉が集まるということは覚えておきましょう。重力を無視して完全にきれいな球の形にしてしまうと、不自然になってしまいます。
また重力にしたがって垂れているので、逆立ちしたりすると逆方向に垂れます。このあたりは脂肪の特徴と同じです。

 

大胸筋あるいは乳房のすぐ下では肋骨の下部があるので、その形が表面に出てきます。
肋骨下部は中央から左右にかけて形が現れますが、男性であまり筋肉質だったり、太っていたりすると、骨の形が肉で埋もれて形が確認できないこともあります。

 

画像:肋骨下部、正面。
肋骨下部、正面。
へその上下には腹の筋肉があります。女性でもわずかに膨らんで確認できます。男性の場合はもっと膨らんでおり、さらに筋肉質だと上下にも割れてきます。

 

腹の筋肉の下、股間の付近では、恥骨によるふくらみがあります。このあたりは男女であまり差がありません。

 

画像:腹部から腰部の正面。
腹部から腰部の正面。

 

側面

側面では、まず乳首のすぐ下あたりでは、男性の場合は筋肉があります。

 

画像:側面筋肉、胸部。男女それぞれ。
側面筋肉、胸部。男女それぞれ。
側面筋肉、胸部。男女それぞれ。
わきのすぐ下に筋肉が集まっており、前と後ろで二つのふくらみがあります。前方は大胸筋の端で、後方は腕の三頭筋から続いた広背筋です。これらは縦長に存在します。

 

また側面のへその高さで筋肉があります。これは女性ではほとんど確認できません。男性ではここが膨らんでいます。

 

このすぐ下に骨盤の端があります。このあたりは女性でははっきり骨の形が確認できます。男性でも確認できますが、筋肉質な人では筋肉に埋もれて骨の形が出てこないことがあります。

 

 

背面

背面の筋肉ですが、女性ではほとんど筋肉は確認できず、ほぼ滑らかな形をしています。
女性で目立つのは肩甲骨のふくらみです。そして背骨のところ、つまり背中の中心はへこんでいます。

 

男性の場合はかなり筋肉があり、まず背中の上部のY字の筋肉があります。
その下に背骨に沿って左右対称に2つの筋肉があります。これはお尻の上辺りまで伸びています。

 

肩甲骨の部分は骨自体で膨らんでいますが、この骨の周辺には筋肉があるので、筋肉のふくらみとみなしてもかまいません(ただし肩甲骨なので、腕を上げるとこれも上に上がります)

 

背中で見える骨はこれくらいで、お尻は筋肉と脂肪のみです。

 

画像:背面。男女それぞれ。
背面。男女それぞれ。
背面。男女それぞれ。

 

関節回転による筋肉と骨

胴体の関節を回した場合の骨や筋肉の見え方ですが、関節を曲げた内側、つまり肉が集まっている部分は肉が集まって骨が見えなくなり、外側の肉の伸びている部分は肉が薄くなって骨の形が露呈しやすくなります。

 

特に骨の形が露呈しやすいのは、肋骨下部、背骨と肩甲骨です。骨盤の左右の上端も体をひねることで形が出やすくなります。

 

 

体型の差

世の中には太っている人や痩せている人がいますが、胴体はその差が比較的現れやすい部分です。
骨にはほとんど個人差はありませんが、脂肪や筋肉は個人差が現れやすく、それにしたがって表面に見える骨の形も変わってくることがあります。

 

先に述べた「表面に現れる骨」についても、脂肪や筋肉の多い人だと骨が見えなくなることがあります。
体型による個人差を描きたい場合、骨の見え方にも注意してください。太っていたり筋肉質だと、骨は肉に埋もれて見えないことがよくあります。