心理学は不確定要素の強い分野
心理学というのは、確かに学問の名前としてはっきり認められてはいるのですが、少々微妙な扱いを受けることがあります。
悪くいうと、うさんくさい学問と思われることがあります。
なぜかといいますと、心理学というのはある程度、理系的で実践的な要素、すなわち科学であることを期待されているからです。
科学の定義というのは、再現性があるということです。
少し難しい話になりますが(よくわからなければ飛ばして次の章へ行ってください。あまり重要な話ではありません)
科学というのはこうすれば誰でも必ず同じ結果が出ることを期待されています。
たとえば「この機械はこういうふうに作れば必ず作れる」とか、皆が同じことをすれば同じ結果が出るというようなものです。
これが科学の定義です。
車の作り方は決まっており、設計図の通りに作れば必ず目的の車が出来上がる、と。これが科学です。
ところが心理学というのは、そうではない場合があるのです。
このやり方をすればみんな勉強やる気になる、というような、決まった方法がないのです。
同じことをやったのに、人によって成果の出方が違う・・・
成果の出なかった人は「これは嘘だ!」というかもしれません。でも成果の出た人は「すばらしい!」といいます。
このあたりが、心理学はどうも信用できないみたいだ、という印象をもたれる原因です。
個人でそれぞれ最適な勉強方法がある
あとで説明していきますが、勉強の習慣をつけるためには、誰もが決まった一つの方法をやればいい、というものでは決してありません。
この方法をやれば誰でもできるようになる!
というようなものは存在しないのです。
もし市販の「勉強の習慣が身につく本!こうすればみんな勉強できるようになる!」みたいな内容の本があれば、それは嘘だと思ってください。
心理療法の世界では患者の数だけ治療法があるといわれています。
その人にぴったり合ったやり方があるのです。誰一人、同じやり方で通用するものはありません。
さらにまた、その人にぴったりの治療法は、ただ一つではありません。たくさんあることが多いです。
このような理由のため、心理療法というのは、多くは1対1でなされます。面接みたいなものです。
カウンセラーはその中で、その人に一番合ったやり方を探していくわけです。
学校の授業のように、1対多数で「全員に同じ決まった方法を教え込む」というようなやり方ではうまくいかないのです。
あなたが一番うまくいく勉強法は、ほかの人には使うことができません
また、ほかの人が考え出した勉強法は、あなたが使っても必ずしもうまくいくとは限りません。
それはいくらかうまくいくかもしれないのです。ですが、「ベスト」な方法ではありません。
ある人にとってベストな方法は、あなたにとっては決してベストではありえないのです。
心理学の中の専門分野
これは少し余談ですが、心理学という学問はたくさんに細分化されており、臨床心理学、認知心理学、発達心理学、犯罪心理学、比較行動学などと無数にあります。
精神医学という、医学に近い分野も勉強したりします。
もちろん皆さんはこれらの分野の名前や内容などを覚える必要はありません。
しかしもし私の言っていることの「元」が知りたければ、このあたりを調べれば載っていますよ、ということです。
心理療法自体は臨床心理学をメインとしていますが、大学の臨床心理学科に入ったからといって、ずっと臨床心理学という分野の勉強ばかりするわけではありません。
大学ではいちおう、上にあげた様々な分野の専門分野を勉強します。
正直、あまり関係ない分野もあるのですが、それでもいろいろ知っておいたほうが、ある場合に役に立ったりするものです。
たとえば発達心理学を知っていると、幼児相手のカウンセリング(プレイセラピー)の時に、相手がなぜそのような行動をするのかわかっているため、対応の仕方もわかったりします。
発達心理学を全く知らないと、子供でも大人と同じように考えて行動すると勘違いして、対応を間違えたりするかもしれません。