健全な人間関係を持っている人は心理的な病気にかからない

健全な人間関係を持っている人は心理的な病気にかからない

心理療法の現場では、相談者が治療者にただしゃべっているだけでも問題が解決されることがあります。
通常、治療者はただ聞いているだけではなく、専門的知識を持って相談者にアドバイスしなければなりません。
しかしアドバイスも不要で、本当にただ聞いているだけで終わってしまう場合があります。

 

それじゃ、聞いているだけなら普通の人でもできるんじゃないの?専門知識いらないんじゃないの?って思われるでしょう。
実はそうなのです。言い方を変えると、普通の人どうしの付き合いでも、ある種の「治療者と相談者」のような関係になっているがよくあります。

 

 

良好な人間関係を持つとストレスは少ない

気兼ねなく何でも話せる友人や家族がいて、普段からそういう付き合いをしている人の多くは、心理的な病気にかかることがありません。
普段から健全な人間関係の中で暮らしているからです。
心理的な病気というのは、不健全な人間関係を長く続けてきた結果に起こるものです。

 

その健全な人間関係というのが、何でも気兼ねなくおしゃべりできるという、心理療法でいう治療者と相談者に近い関係になっています。
そしてこれは昔から指摘されていることですが、このように普段から健全な人間関係を持って生活していることが、どんなに優れた心理療法の治療者にかかるよりも治療効果が高いといいます。

 

たとえばうつ病にかかったとき、優れた心理療法の治療者に相談しに行くよりも、もし可能であれば、自分の周辺の人間関係を良好にしたほうが治療効果が高いということです。
しかしうつ病にかかるということは、周辺の人間関係に何か重大な問題がある場合が多いもので、今から周辺の人間関係を自力でよくしろとアドバイスするのは無理があります。

 

でもこれを読んでいる皆さんは、おそらくうつ病などの精神疾患にはかかっていないでしょうし、その気になれば自力で周囲の人間関係をある程度変えられる力を持っていると思います。

 

つまりあなたが普段から付き合いのある周辺の人たちとの関係を良好にすること、ストレスがなく信頼関係があり、何でも気兼ねなく話せるような友人や家族との関係を維持することで、心理的なストレスを低く保つことができます。
これによって勉強すべき時間に何か別のストレス発散をやって、無駄な時間をつぶしてしまうことも起こらないことが期待できます。

 

ただ勉強机に向かうだけでなく、普段からストレスがかからないように注意することは、結果的に勉強に集中できる環境を作るのだということです。

 

 

「受験戦争」の弊害

今はどうか知りませんが、昔は大学受験が「受験戦争」などと呼ばれ、ただ受験の競争に勝つことだけが学生時代の目的のように言われることがありました。
そこで学生たちは、まず周辺の塾や教師たちによって互いに敵対心や競争心を持つように指導され、ある場合には「親友を作らないこと」などが推奨されるようなことさえありました。

 

有名な進学校だと、同じクラスの同級生で志望校が同じになることがあり、受験の直接的なライバルになることがあります。
受験には入れる枠が決まっており、同じ志望者が一人でも悪い点数を取った方が自分にとっては有利です。こういったライバルは人生の敵であるというわけです。

 

しかし人間というのは、普段から孤立したり敵対心をずっと持ちながら生きていくというのは難しいです。
特にまだ社会人でない10代の学生であれば、複雑な人間関係をうまく処理し、本音と建前を分けて生きていく能力が備わっていません。
あるときには友達、あるときには敵であるという、割り切った人間関係は、会社の中ではよくあることですが、若い人には難しいものです。

 

自分の周辺がみんな敵であるような教室で勉強し続けるのは、孤立心も相まって大変に苦痛なことです。
それよりも、仮に同じ志望校を目指している同級生がいたとしても、「一緒に合格しよう!」という同じ目的を持って励ましあう方が、心理的には負担がかかりません。

 

これは受験に限ったことではなく、「周辺は敵だらけで自分は孤立した状態」というのは、どんな環境でも大変に苦痛なものです。
敵ではなく、同じ目的を持った仲間として付き合った方が、最終的にはいい結果が出るでしょう。