意識と無意識
心理学の世界ではよく「意識」「無意識」などという話が出てきます。
これはなんなのでしょうか?
「無意識の力を利用して・・・」などといわれると、何やらオカルトじみた、超常的な感じがするかもしれません。
しかし無意識の力というのは、超能力のことではないので誤解しないようにしてください。
たとえば呼吸することを考えてみてください。
私たちは普段、呼吸する深さや速さをどれくらいにしようとか、考えてはいません。
常にそんなことを1日中考えて続けていたら、勉強も仕事もできなくなってしまいます。
でも私たちはずっと休みなく呼吸し続けています。これが心理学でいう無意識の働きです。
しかし呼吸というのは、自力で調整しようと思ったらできるものです。
しばらく息を止めろといわれたらできるし、深さも速さも調整できます。
これが「意識」です。意識的にコントロールしているので、「意識下にある」などと呼びます。
したがって呼吸というのは「普段は無意識でしているけれども、意識してコントロールすることもできる」となります。
習慣もほとんど無意識の作用である
呼吸というのはこのように、典型的に意識と無意識との区別が分かりやすいものの一つですが、実は私たちの日々の習慣的な行動も、大半は無意識的な行動です。
たとえば歯磨きするときは必ず左奥の歯から磨くとか、お風呂に入るときは必ず右足から入るとか、自室に戻って一息ついたらゲームをしてしまうとか、こういう習慣というのは大半が無意識で行われています。
そこに意識を介入させることで、その行動をコントロールできるようになります。
たとえばお風呂に入るとき、「どちらの足から入ろうかな?」と一瞬考えてみてください。
すると急に、お風呂に足を入れることがいつもと違い、なんだか違和感のあることに思えてきます。
いつもは無意識に右足から入っていた場合でさえ、右足から入ることがなんとなく違和感があるようになり、「おや?いつもこんな感じで入っていたかな?」と思うようになると思います。
もちろん左足から入れば「いつもと違う」と感じるでしょう。
何も考えなければ、いつものように「なんとなく」右足から入るだけです。
しかしそういった「無意識の習慣行動」を変化させるには、その行動を起こす直前に意識を集中させなければなりません。
勉強すべき時間にゲームをしてしまう人なら、ゲームをしようとする直前に意識を集中する必要があります。ゲームを始めてからでは意味がありません。
ゲームする直前に意識を集中させ、「そういえば自分はゲームをせずに勉強すると決めたんだった」と思い出すことが大事です。
そして、前の日にその問題について何が原因だったか、いかに自分がその問題で困っているか、問題を治さなければどうなるか、以前問題を解決したときはこんなふうに解決したなど、昨日考えていたことも同時に思い出す必要があります。
このあたり、問題についての認識をいい加減にやっていると、いつも通り「ゲームやめないとなー」などと思いながらゲームをしてしまいます。
前日に問題について深く掘り下げておき、
なおかつ問題が起こる直前にそれを思い出す
ことで、問題行動をスムーズに治すことが期待されます。
問題の解決を意識する
前の章で、問題を整理したり誰かに話したりするだけで問題が解決されることがあるといいました。
この理由として、問題の解決方法を考えていなかったとか、問題を問題として認識していなくて何もしようとしていなかったとか、そういうのがありました。
これはどういうことかというと、問題がまだ無意識下に眠っている状態だったため、意識的に認識されず、したがって解決方法も考えないわけです。
無意識にある行動や習慣というのは、いわば「なんとなくしている」行動です。
ずっと「なんとなく」している状態では、それについて改めてしっかり考えようとはしません。
先の例だとせいぜい「ゲームやめないとなー」と心の中で思っているくらいで通り過ぎてしまいます。
それだけでは不十分で、具体的に「ゲームはしばらくどこか見えないところにしまう」とか「スマートフォンは勉強が終わるまで触らない」など、事前に決めておく必要があります。
なんとなく治そうと思っているだけでは、そこまで対策が思いつきません。
問題を意識の段階に引っ張り出すことで、具体的な対策を考えられるようになるのです。
そして伝統的な心理療法は、このように「無意識にあるものを意識の段階へ引っ張り出し、悩みを整理する」ことを最も重要視してきました。
それは先のような理由があるからです。
無意識にあるものは意識的にはコントロールできないので、問題を意識へひっぱり出す必要があるのです。
無意識の問題を無意識で解決する
実は無意識の問題を無意識への直接介入で解決する方法もあります。
代表的なのは催眠療法です。
しかし催眠というのは腕のいい催眠療法士にかかる必要がありますし、自分で催眠をかける「自己催眠」というものもありますが、これは特殊な練習が必要で習得が大変ですのでおすすめできません。