10章のまとめ

10章のまとめ

どんなにしっかり問題を認識・整理し、目標を立てても、自分が変わろうとする意志がなければ何も起こりません。

 

「他人に変わってほしい」と思っても無駄です。他人はコントロールできません。自分がコントロールできるのは自分だけです。

 

他人が何か行動を起こすべき問題があったとしても、あなたがどう行動を起こせば問題が解決するかを考えるようにしてください。

 

たとえば「家族がテレビをつけなければ勉強に集中できそう」というとき、目標を「家族を説得してテレビを見なくさせる」にしたのでは、いうことを聞いてくれずに思い通りにいかないかもしれません。
そういうときは「テレビがついていても勉強できるようにする」とか「図書館で勉強し、ノルマが終わるまでは家に帰らない」などの、目標を達成するための別の方法を考えましょう。

 

他人が何か行動を起こさなければ問題が解決しない、というような目標は作らないようにします。

 

私たちは自分に目標を達成できる力がないと思い込んでいると、他人のせいにしがちです。
たとえば自分の意志が弱くてついテレビを見てしまうという場合に、「お母さんがテレビを見ているからつい自分も一緒に見てしまう。お母さんが悪い」というふうにです。
他人に問題がある場合でも、よく考えてみると自分が行動すれば解決できる場合はよくあります。

 

しかし本当に自分は勉強しようとしているのに、悪意を持って勉強を邪魔する人がいるなら、その人とは縁を切ることも考えたほうがいいでしょう。

 

心理療法の世界では、この「問題の認識の程度」について、いくつかの段階を定義しています。
問題の解決は通常、ビジター→コンプレイナント→カスタマーの順で進んでいきます。
自分がビジターならコンプレイナントへ、コンプレイナントならカスタマーの段階へ進ませることが、まずは必要になります。

 

 

ビジター(訪問者)
問題を問題と認識しておらず、問題を解決しようともしていない状態。

 

この段階にいる人は、まずは問題を認識することが必要です。サイトを見ているあなた自身がビジターである可能性はまずありませんが、たとえば受験生のお子さんを抱えていらっしゃる親御さんであれば、あなたのお子さんがビジターの段階である可能性もあります。

 

まずは問題について(勉強しないことについて)よく整理しましょう。
そしてその問題について、過去にどのような対処をしたか、二人で話し合ってください。
その対処についての見解で「ずれ」があるはずです。お子さんはおそらく、何か目的があって(ストレス解消とか)問題行動を起こしている(勉強しない)のです。
その目的を失わないまま(ストレス解消しつつ)、目的の行動(勉強をする)ができるような案を出していきましょう。
話し合いが進んでいくと、たとえその場で問題が解決しなくても、本人に当事者意識が芽生えてくるものです。

 

 

コンプレイナント(文句を言う人)
問題があって真剣に悩んではいるが、その解決が自分自身にあるとは思っていない人。他人が変わらないと問題が解決しないと思っている。

 

この段階にいる人は、自分は問題の解決には力になれないという無力感や絶望感を持っている場合があります。
まずはこの無力感をなんとかしましょう。たとえば過去にたくさん勉強したり、いい成績を取った時の状況を再現する方法があります。
たとえば「いい成績を取ったらご褒美をあげる」といわれて一生懸命勉強したのなら、それを同じ状況を再現することで勉強のやる気が出るかもしれません。

 

またコンプレイナントの状態にある人は、目標の設定が他人に頼ったものになりがちです。
目標はできるだけ自分が行動し、自分でコントロールできる範囲のものにしてください。
他人を説得して何かをさせるとかは、効果が薄いです。他人は変わらなくても、自分が何か行動すれば勉強ができるように目標を設定します。

 

またできれば、周囲の人たちが協力する態度を見せてあげてください。
周囲のサポートで立ち直れる可能性が出てくる段階です。

 

 

カスタマー(客)
これは心理療法の客という意味です。つまり自分が変わるための心の準備がすでにできている人です。
問題を認識し、解決しなければならないと思っており、それに対して自分が何をすればいいかを考えている人です。

 

この段階にある人は、問題を認識・整理し、目標を設定、行動を計画し、地道にこなしていくことでたいていの問題は解決していきます。
あるいは放置しても勝手に解決方法を見つけて実行できることもよくあります。