自分の「当事者意識の程度」を確認する

ビジター・コンプレイナント・カスタマー

自分の習慣を変えるためには自分が行動を起こさなければなりません。他人のせいにしていてはいけません。当事者は自分です。
心理療法の世界では、この「当事者意識の程度」について、いくつかの段階を定義しています。
今回は3つの段階に分けてみます。心理療法のやり方を参考に、ビジター、コンプレイナント、カスタマーと分けてみます。これらの直訳の意味は

 

  • ビジター(visitor)→訪問者、旅行者
  • コンプレイナント(complainant)→文句を言う人、クレーマー
  • カスタマー(customer)→客

 

です。
ビジターはまだ問題を認識していない状態、コンプレイナントは問題を認識してはいるが自分の問題だとは思っていない状態、カスタマーは問題を認識しており、それが自分の問題だと認識している状態です。
なので時間的な段階としては、ビジター→コンプレイナント→カスタマーという順に、心の中では進んでいきます。

 

 

ビジター(訪問者、旅行者)

ビジターとは訪問者、旅行者という意味です。
心理療法の世界では、まだ問題の認識すらしていない状態をビジターと呼びます。ビジターは、何か悪いことが起こっているとはほとんど思っていません。

 

どんな人かというと、たとえば心理療法の現場に、親が問題行動ばかり起こす子供を連れてくることがありますが、その子供のような状態です。
自分では問題を起こしているという認識がなく、何が悪いのかわからない。
しかし親は子供の行動に困っていて、ここへ連れてきた、ということです。

 

このサイトであれば「友達が読めっていうからしかたなく読んでいる」とか「お母さんがこのサイトを読んで勉強できるようになれっていうから」というような人です。

 

ビジターはいわば、ちょっと訪ねてきた、くらいの感じで来ている人です。
自分に何か問題があるとは思っておらず、当然治そうとも考えません。

 

しかし周囲の人が心配していたり迷惑していたりすることがあります。
そのような場合、まず当事者が問題を認識することから始めなければいけません。

 

まずはその問題について詳しく聞き出すこと、そしてその問題に対し、過去にどのような対処をしたのかを説明してもらい、問題として認識してもらうようにするといいでしょう。

 

そして過去に起こった問題への対処法を聴いたとき、本人と周りの人で反応が違うはずです。
本人は「○○だから問題ないでしょう」と思っていても、周りの人は「××だから問題ですよ」という認識の違いがあります。
この2つの認識を比べることが必要です。いわば一つの行動に対し、2通りの解釈、意味、目的があるわけです。
本人には何か自分にとって有用な目的があるわけでやっているわけですが、周囲の人はそれに困っています。
本人のその有用な目的を失わず、周囲の人を困らせないような行動に持っていくことが必要です。
そしてその話し合いが進んでいくと、たとえその場で問題が解決しなくても、本人に当事者意識が芽生えてくるものです。

 

ただしこのサイトは、「勉強」とか「やる気」とかで検索しないとたどりつかないはずなので、これを読んでいるあなた自身がビジターであることはまずありえないでしょう。
もしあなたが受験生のお子さんを抱えている親で、お子さんが勉強しなくて困っているのなら、お子さんはまだ「ビジター」の状態かもしれません。

 

 

コンプレイナント(文句を言う人、クレーマー)

コンプレイナントとは、問題があることを認識しており、しかしその解決は自分の外にあると思っている人のことです。
このタイプの相談者は、治療者にとって難しい相手となることが多いようです。

 

コンプレイナントは自分が変わろうという気がありません。
問題が自分の外、たとえば他人にあると思っており、しかし問題を問題と認識しているため、「他人のせいで心底悩んでいる」ように見えます。

 

これは実際、他人が何か問題を抱えているように見える場合でよく起こります。

 

たとえばアルコール中毒の夫に、お酒やお金を渡し続ける妻です。
妻は夫にアルコール中毒から立ち直ってほしいし、その悩みは真剣なものです。

 

この場合、一見問題は夫にあるように見えるし、夫が何かしないといけないように見えます。
しかしアルコールを与えたり、アルコールを買うことができるようにしているのは妻であり、妻のほうでも何か対策が打てるわけです。

 

こういうことはよく起こります。
自分は問題の解決に何も力になれないと思っていても、よく考えてみると力になれる方法がある、というものです。

 

勉強の場合、たとえば「家族や友達が勉強の邪魔をするのでどうしても勉強がはかどらない」というような問題として認識されます。

 

このままでは何もできません。コンプレイナントのレベルからカスタマーのレベルに引き上げなければなりません。
それにはいくつか方法があります。

 

まずコンプレイナントである原因は、自分の無力や絶望のために他人に責任を押し付けようとしている場合があります。
この場合、まずはその無力感や絶望感を何とかしないと始まらないでしょう。
具体的には、たとえば過去にたくさん勉強したり、いい成績を取ったことがあるとしたら、そのときのやり方をいま再現してみるなどです。

 

たとえば過去に、お母さんが褒めてくれたから一生懸命勉強した子がいたとします。
それならもう一度、同じ状況を再現します。お母さんがその子をほめてやれば、再びやる気が出るかもしれません。
あるいはそこまで同じにしなくても、似たような状況でも効果があります。たとえば勉強をしたら自分で自分に何か「ご褒美」のようなものを与えるとかです。

 

そのほか、目標の設定のしかたも変える必要があります。
問題を解決するための目標は、自分が何かをする内容でないといけません。「他人が○○する」という目標では意味がありません。

 

 

カスタマー(客)

カスタマーとは「お客さま」の意味です。これは心理療法でいうお客、相談者として適切な状態にある、という意味です。

 

カスタマーは問題を抱えて悩んでおり、それが自分の問題として認識している人のことです。
そして自分が行動しなければならないということを自覚しています。

 

カスタマーはすでに自分が変わるための準備ができている状態なので、後は問題を認識・整理し、目標を設定、行動を計画し、地道にこなしていくことでたいていの問題は解決していきます。
あるいは放置しても勝手に解決方法を見つけて実行できることもよくあります。

 

カスタマーは自分の習慣を変えるための最適な状態であり、ビジターやコンプレイナントはこの状態を目指すべきです。

 

 

例:家族や友人が勉強の邪魔をする場合

「家族や友達が勉強の邪魔をするのでどうしても勉強がはかどらない」という問題がある場合、家族や友人の介入があっても自分で勉強しようと思えばできるのだと思うこと、それに向けて行動するという決意がまず必要です。
「自分は行動しない、他人がしなければならない」のではなく「自分が行動して他人の介入があっても勉強できるようになる」というふうに考え方を変える必要があります。

 

目標もそれに応じて変化させます。
家族や友人が邪魔なら、「家族や友人を黙らせる」「説得して勉強の邪魔をしないようにする」という目標を立てているかもしれません。

 

そうではなく、「自分が行動すれば確実に達成可能な内容」にします。たとえば図書館に行って勉強する、などです。

 

コンプレイナントは問題を抱えており、本当に困っている人です。
後は自分が行動するだけなので、その壁さえ越えられれば行動を起こせるようになります。

 

この段階にある人は、自分に自信がなくて行動を起こせなくなっている場合がよくあります。
もう少しで行動できそうな場合、周囲の人たちが協力する姿勢を見せることで、最後の一押しができることがあります。
後の章でも述べますが、本人の周囲の人間関係を積極的に変えていくと行動を起こせるようになることが多いです。

 

 

中毒治療の段階との比較

アルコールがやめられないなどの中毒(専門用語で「嗜癖(しへき)」といわれます)の治療ではいくつかの心的な段階があります。

 

  • 熟考前:まだそれが問題だと考えていない。自分が変わるつもりもない。ビジターに相当。
  • 熟考:問題について真剣に考えているが、それを実行するかどうか頭の中で考えている状態。コンプレイナントに相当。
  • 準備:問題に対して本当に行動を起こそうという意志があるが、自信がまだ持てないなどの理由で行動を起こしていない。これ以下はカスタマーに相当する。
  • 行為:具体的に行動を起こしている状態。
  • 維持:行動を起こして問題が解決し、その状態を維持しようとしている状態。

 

内面的にいえば、まだ悩んでいない状態がビジター、真剣に悩んでいるが行動を起こすところまで来ていないのがコンプレイナント、十分悩んで今すぐにでも行動を起こそうとしているのがカスタマーです。

 

この内面的な変化が起こるまでには少し時間がかかるかもしれません。
人間、何か問題があると、しばらく放置して重大な結果が出るまでなかなか行動を起こせないことが多いです。

 

単に成績が悪くて受験まで時間があるなら、まあいいか、で終わるかもしれません。
しかし受験日が近づいたり、友人らが真剣に受験のことを話したりしだすと、いよいよ成績について真剣に考えなければならず、何か行動を起こさないとまずいと考えるようになります。

 

こういった心的な問題解決への進み具合は個人差がありますが、もちろんできるだけ早く行動を起こしたほうがいいです。
重大な病気と同じで、手遅れになってからでは助かりません。

 

 

他人の行動パターンを変える

これは受験勉強や資格の勉強では必要ない能力と思われますが、社会人が仕事をするときには「他人に働きかけて他人の行動パターンを変える」というような能力が要求される場合があります。

 

それはたとえば、会社の上司や経営者に求められる能力です。
自分の部下に、どうやったらやる気を出させるか、仕事をさせるかという、いわば「やる気を出させる人」にならなければ、仕事でいい成績を残すことができません。

 

ただこれはかなり難しい能力です。会社の上司や社長でさえ、社員にやる気をうまく引き出させる人というのはなかなかいないものです。
実際のところ、仕事をしない部下がいたら、怒鳴りつけたり脅したりして仕事をさせることがほとんどです。
それでも仕事をしなければ、なんだかんだで左遷させられたり、理由をつけて退職させられたりします。

 

受験や資格試験ではこのようなことを考える必要はあまりないと思いますが、あからさまに勉強の邪魔をするような人がいたら、強制力を使っていうことを聞かせる必要がある場合もあるでしょう。

 

お知らせ

次回の「関西創作交流会(主に自分の作品を見せながら雑談する会)」は9月9日(土)寝屋川市で行います。参加費無料なのでぜひご参加ください。

関連ページ

10章のまとめ
習慣を変えるためには自分自身が行動を起こす必要があります。他人に何かしてほしいと願ってもたいていかないません。自分に何ができるかをまず考えましょう。
自分がコントロールできる範囲を知る
自分の習慣を変えるためにはいろいろなことをコントロールする必要がありますが、他人は基本的にコントロール不可能です。他人に何かを願ってもかなわないことがほとんどです。
自分が当事者であるという認識があること
自分の習慣を変えるためには自分が行動しなければなりません。他人が何とかしてくれたら、と思っていても何も変わりません。
無力感や絶望感が残っている場合他人のせいにしがちである
他人のせいにしてはいけないといっても、本当に他人が悪すぎて自分が行動できないこともあります。その場合その人との関係を見直すべきです。

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