「再刷り込み」で過去のトラウマを克服する

「再刷り込み」は心理療法の技術

前のページでは「過去にうまくいった時のことを再現する」「問題行動が起きないときを再現する」というのをやりましたが、これらは心理療法の「タイムライン・セラピー」とか「再刷り込み(再インプリンティング)」という方法の応用です。

 

この再刷り込みという心理療法の技術について説明しておきます。

 

私たちが「これはできる」「できない」という思い込みは、過去にそれが実際にできたりできなかったりした体験のために出来上がった思い込みであることが多いです。
そしてそれは、人生の最初期、つまり幼少の頃になるほど強く影響します。

 

水泳を例に挙げてみましょう。

 

大人になっても誰かに教えられても、どうしても水が怖くて泳げない人がいたとします。
こういう人は、幼少期に水に対する恐怖体験をした場合が多いです。たとえば幼少期に水泳教室に通わされて、そこの先生があまりに厳しく、泳げるどころか水に対する恐怖をより一層強めただけとしましょう。
こういった恐怖感情が幼少期に形成されてしまうと、大人になっても水への恐怖がなかなか取れないことがあります。

 

この恐怖を克服するため、再刷り込みをやってみます。

 

まず水に対する最初の恐怖を植え付けられた時点まで、記憶の中でさかのぼります。
この人の場合、それが4歳のころに通っていた水泳教室での出来事だとしましょう。

 

するとそれ以前のころ、つまり3歳とか2歳のころは、まだ水への恐怖心がなかったことになります。
想像の中で、恐怖がなかったころにまでさかのぼります。水泳教室に通う以前までさかのぼって思い出してみます。
別に正確にそのころを思い出す必要はありません。なんとなく「このころは水への恐怖がなかったな」くらいでいいです。その「恐怖を感じる以前の感じ」が得られればそれでOKです。

 

そしてその時、ふつうに楽しんで泳ぐ練習をしていたらどうなっていたか?と想像します。それはたとえば家族と一緒にプールで遊んでいるような光景だったとします。それを想像します。その楽しい「感じ」を忘れないようにします。

 

そしていよいよ水泳教室が始まったとき、あなたはその恐怖を無事克服できるようなものを持っていると想像し、その経験を終えます。
たとえば同じ水泳教室の別の子供は、難なく水泳をマスターしていたかもしれません。あなたはその子と同じように、難なく水泳をマスターします。そういうふうに想像します。

 

そしてまた5歳くらいで泳ぎの練習をするときに、水泳の体験を無事済ませて克服して・・・というふうに想像していきます。
これを繰り返して、さまざまな恐怖体験を想像の中で克服していくのが、再刷り込みという方法です。

 

簡単にいうと、「恐怖体験の初体験時を思い出し、それを想像の中で乗り越え、克服する。また次の恐怖体験を思い出し、それを乗り越える。そしてまた次の恐怖体験を思い出し・・・」と、これを現在に至るまで繰り返すのです。
すると想像の中で、すべての恐怖体験に打ち勝った自分を想像できます。

 

 

経験は変えることができない

再刷り込みというのはいわば、「もしあのときにうまく対応できていたら・・・」というような想像をめぐらせることで、恐怖体験などを想像で修正していこうという方法です。
この治療法は、医療現場では心的外傷(トラウマ)の治療などに使われます。深刻な例では、戦争が起きている国で、目の前で人がたくさん死んだような場合です。戦地でのトラウマは深刻です。

 

この方法は、一見すると「過去の恐怖経験を想像から消し去ればよい」というふうに見られるかもしれませんが、そうではありません。

 

実際のところ、トラウマ体験というのは、記憶から消し去ることはできません。事実は事実として、人間の脳に記憶されています。体験したことを「なくす」ことはできないのです。

 

しかしこの恐怖体験に対する「反応」は、後からでも変えることができます。
戦争の例を取れば、体験した本人からすれば、目の前にたくさん人が死んで、それに対して「恐ろしくて身動きもとれない。思い返すだけで恐怖で何も考えられなくなる」という反応をするでしょう。
でも私たち日本人は、遠くの国で起きている戦争のことなど、まるで他人事です。こういういい方もなんですが、遠くで知らない人が何人死んでも別にどうということはありません。

 

このトラウマを実体験した人に、たとえば私たちがそう見ているように「他人事のように自分の体験を見直す」ということを覚えさせます。
自分の恐怖体験を想像させ、それを少し遠くから、まるでテレビを通してそれを見ているかのように、体験に対する「反応」を変えていくのです。

 

すべてのトラウマ経験者がこれで治癒するわけではないのですが、人によっては劇的な改善効果が見られます。

 

 

トラウマを乗り越えた人の経験を取り込む

余談ですが、私は実際、4歳のころに水泳教室に通っていて、その教室があまりに厳しすぎて水恐怖症になっていました。上の水泳の例は、実は私の実体験です。
しかし私は小学校に上がると、自然に泳ぎをマスターしてしまい、水への恐怖はなくなってしまいました。
別に幼少期の恐怖体験がすべてトラウマのようになるわけではなく、自然に克服してしまう人もいます。

 

もし幼少期の恐怖体験で水恐怖症がずっと大人になっても取れないような場合、私のように「自然に克服した人」のようになっていると想像し、自分が自然に水への恐怖を克服しているのを想像します。
トラウマを乗り越えた人に「なりきる」ことで、想像の中で恐怖を克服するのです。
あるいは別になりきる対象の人がいなくても、想像の中で「あのときこうすれば克服できたかな」というようなものがあれば、それを取り込んで水恐怖症を想像の中で克服します。

 

この「想像の中で恐怖経験を乗り越える」のが再刷り込みのコツです。
恐怖体験自体を忘れようとするわけではありません。「恐怖に打ち勝つ自分を想像する」のが成功させるコツです。

お知らせ

次回の「関西創作交流会(主に自分の作品を見せながら雑談する会)」は9月9日(土)寝屋川市で行います。参加費無料なのでぜひご参加ください。

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