架空のストーリーを利用する

ストーリーと心理療法

あなたは漫画やアニメはお好きでしょうか?あるいは映画や小説でもいいです。人間だれでも、架空のストーリーに感動したり夢中になったりしたことがあるでしょう。

 

心理療法ではよく、こういった架空のストーリーを取り上げて研究することがあります。
特に自分自身が大人だと、幼児期の心理状態を理解するというのは難しいものです。そこで少しでも幼児の心境を理解しようと、幼児向けの童話を取り上げ、発達心理学と照らし合わせたりして研究することがよくあります。

 

童話の物語を作ったのは大人なのですが、昔から親しまれているような有名な童話というのは、やはりそれなりに幼児の心をつかんでいるものです。

 

面接型の心理療法の要領で幼児に直接質問しても、まともな答えが返ってくることはあまりありません。
幼児と向き合うときは、あらかじめ先に幼児の心理状態というのを予習しておく必要があります。そのために役立ちます。

 

 

長年浸り続けたストーリーは価値観に影響する

ここでは改めて何かストーリーを取り上げて研究する、というようなことはしませんが、架空のストーリーでもある程度は自身の「気分」に影響することは知っておいて損はないでしょう。
ただの作り話だと馬鹿にしてはいけません。作り話でもそれがしばしば人の心を感動させたり、考えさせられるようなことがあります。
こういったものが心理的に全く影響がないとは言い切れません。

 

私は以前の章で「一瞬の感動は無意味。それはすぐに忘れてしまうし、行動につながらない」といいました。
確かに感動した時の「感情」というのは、すぐに忘れ去られてしまいます。感動したことは覚えているのですが、その時の感情そのものはなかなか思い出せないのです。

 

しかしこういったものでも、長年そういったものに浸り続けていると、価値観の奥底にしみ込んできます。
それはいくらか本人の「人格」に至るまで影響することも珍しくありません。

 

 

ストーリーのテーマが価値観に影響する

子供のころにお母さんに童話を読んでもらったことはないでしょうか?
名作と呼ばれる童話の中には、実は「テーマ」というものが明確に設定されています。

 

たとえば「おむすびころりん」のお話には、正直で勤勉に生きていれば、そのうち報われて幸せになれるという意味が含まれています。同様のテーマは、西洋では「シンデレラ」のようなお話にも見られます。
このあたりはまだとても単純で分かりやすいのですが、小学校くらいになると戦争や災害を扱ったストーリーも出てきて、ストーリーやテーマも少々複雑になってきます。
高校あたりになると本格的な文学小説を取り上げて感想文を書かせたりするので、さらにより複雑になってきます。

 

ストーリーは教科書や文学小説だけではありません。むしろこれらよりも、商業的、大衆向けの映画や漫画、ゲームなどの方が心の中に入りやすいため、影響は強いものと考えられます。

 

これらがもし、あくどいテーマのストーリーばかりだったらどうでしょうか?
現実の社会では、少々悪いことをした方が幸せになることもよくあります。悪徳を推奨するようなストーリーばかり幼児期から聞かせ続けていると、そういった価値観がある程度は本人の中にしみ込んできます。
しかし幼児はあまり複雑にものを考えることができません。もし「悪いことをしたほうが幸せになれる」というお話を聞かせ続ければ、実際に悪いことばかりする大人になるかもしれません。

 

 

勉強の合間にストーリーを読む

さて、ここまでストーリーが心に及ぼす影響について長く説明してきましたが、これらをそのまま勉強の習慣に応用するとなると、限られたことしかできません。
ストーリーが自身の価値観、つまり「思い込み」に影響するため、ある種の「できないという思い込み」に対して効果がある場合があります。

 

漫画などでは、主人公が苦労して何とか目的を達成するようなストーリーがたくさんあります。
こういった漫画を読んでいるだけでも、主人公に思い入れたりするとなんとなく「自分も頑張ればできる」と思えたりします。
実際できるかどうかはともかく、そういう気分になれるだけでも、勉強できないと思い込んでいる人の場合は、気分を高めて勉強しやすくなる「自信」をつけられる可能性はあります。

 

ただしもちろん、漫画に夢中になって勉強しないようでは意味がありません。休憩時間に少し読む程度なら、気晴らしにもなるので後の集中力も高まることが期待できます。