SNS以前(1995〜2005年)

作品の発表と交流

1995年にWindows95、1998年にWindows98が世に出て、このころから一般家庭にパソコンというものが普及していきました。
高速ネット回線というのもまだ普及途中で、全体としては回線速度がまだ遅かったのですが、「掲示板」などを通してインターネットで遠くの人と文章で話ができるようになってきました。

 

 

作り手たちがホームページを持っていた時代

このころからネットの作り手たちは自分でホームページを作り、そこに作品を載せるようになっていきます。

 

ホームページを作るといっても、現在のように簡単にホームページを作れるようなツールがあまり普及していなかった時代です。
ホームページ専用作成ソフトも高価であったため、多くの作り手たちはフリーソフトなど使ってホームページを作っていました。
これらソフトは機能自体はあまり優れておらず、作り手たちは自力でHTMLファイルを作成していました(いわゆる「手打ち」といわれる作り方です)
HTMLを作成、編集するのはそこそこ難しいことです。覚えることもあり、「HTML辞典」なんてものを常に手元に置いておく必要があります。
それでも作り手の人たちは勉強熱心な人が多く、多くは独学でHTMLファイルを作っていました。

 

具体的なやり方としては、まず無料のレンタルサーバーを借り、そこに自分で作ったHTMLファイルやイラスト、音楽などのファイルもアップロードし、サイトのページからリンクして見られるようにするという手順です。
HTMLファイルの作成はフリーソフトでできることが多かったので、ホームページの作成は実際は無料で完結していました。

 

今はYOUTUBEや専用SNSなど投稿サイトがありますが、今でも従来のように自分のホームページを作ってそこで作品を載せている人は少なくありません。

 

理由として、投稿サイトは基本、新着順からトップページに載せられていきます。
この仕組みは、新しく作られた作品であれば人の目に留まりやすいのですが、しばらくするとさらに新たに新着作品が出てくるので、そのうちトップページに載らなくなってしまいます。
すると後は作品名や作者名などで検索して見つけるしかないのですが、無名の人たちの、しかもオリジナルの作品は、作品名や作者名で検索されることはありませんので、トップから落ちたらそこで見る人はいなくなってしまいます。

 

投稿サイトは、作品を載せてしばらくの間しか告知の効果がないのです。
そこで自分のすべての作品をいつでも見られるよう、みんな自分のホームページを作り、そこですべての作品を見られるようにしておいたのです。

 

また人によっては様々なジャンルの複合作品を作っていることがあります。
たとえば小説を書いて、その小説のシーンに応じたBGMを作っている人がいました。
このような人の場合、音楽サイトに投稿していたのでは、小説の内容を発表することができません。
音楽サイトというのは基本、音楽ファイルしかアップロードできないので、「この曲はこの小説のこの場面を表しているんですよ!」というような表現ができないのです。

 

ホームページは小説と音楽を組み合わせたり、紙芝居のようなものやゲームを発表したりすることができます。
投稿サイトは単一のジャンルに特化しているため、このような自由な組み合わせの発表ができませんでした。
そのような意味でも、ホームページを作ることの意味が大きかったのです。

 

 

掲示板を使った作り手同士の交流

インターネットで文章を使って交流する手段に、現在ではコメント可能なブログやmixi,twitter、モバイルではLINEのようなツールが用意されています。
しかし当時はそのようなものはありませんでした。ブログは当時もあったのですが、これは管理人の記事に対してコメントするような形のもので、「訪問者がいきなり何かを書き込む(挨拶など)」というようなものには向いていません。

 

それで当時、作り手同士の交流として使われていたのが「掲示板」というものです。
現在でも「2ちゃんねる」のような形で掲示板は使われていますが、作り手同士の交流手段としては今はほとんど使われていません。しかし当時は非常に便利なものでした。

 

掲示板は誰でも書き込むことができます。自分のホームページの中に「掲示板」のページを設け、そこに誰でも書き込むことができます。
訪問者というのはたいてい同じ趣味を持つ人たちで、投稿サイトで知り合ったとか偶然サイトを訪れたとか、そういう人たちがホームページで作品を鑑賞した後に感想などを掲示板で書き込みます。
その書き込みを見た管理者が、訪問者のホームページに行って作品を鑑賞し、そこの掲示板で感想を書き込む…というふうにして交流が始まっていったのです。

 

作品が載せてあり、それにすぐさま感想を書き込むことができる、しかもお互いそれをし合うことができる、という仕組みがそろっていたため、「ホームページ+掲示板」というのは作り手同士をつなぐための非常に有効な手段でした。

 

そして多くの作り手たちは、今のようにいくつかのSNSに入り浸っているということはなく、たいていは毎日自分のホームページと掲示板のチェックをしていたので、掲示板の感想への対応も早く、すぐに仲良くなれたのです。

 

現在では作り手たちもホームページから離れ、twitterのような「ちゃんと作品を載せられない場所」で交流することが多くなったため、「作品を鑑賞、すぐさまコメント、すぐさまリプライ」という流れができにくくなっており、作り手同士の交流密度が減ってきています。
twitterでもイラストなど載せることはできますが、ホームページのようにすべての作品を整理して載せることはできません。しかもタイムラインではすぐに落ちてしまいます。
twitterからホームページに誘導したりすると、その誘導に乗る人があまりいないので効率がよくありません。

 

ちなみに掲示板の設置は、今これをやると悪質スパム業者や悪質出会い系業者に荒らされることが多いので、あまりやらない方がいいでしょう。掲示板に書き込むという文化もなくなりつつあり、反応があまりありません。

 

この時期、アマチュアの作り手が自分の作品に対し、もっとも効果的に反応が得られた時代でした。作り手同士の交流も充実していました。

 

 

「オフ会」の概念の違い

実はこのころからも「オフ会」という概念がありました。
この時代のオフ会というのは、「ネットだけで交流があった人たちが集まってリアルで話をする」ことでした。

 

現在では全く知らない人たちを集めて飲み会などすることもオフ会と呼んでいるようですが、当時は「すでに知り合っていた人たちが集まる」ところが少し意味が違っていました。

 

 

作品のダウンロードに気を使う時代

このころはまだ高速インターネット回線がなかったため、一つの作品をダウンロードするのに時間がかかることがよくありました。
文章ならすぐですが、巨大なイメージファイルや、特に音声などの音楽ファイルはダウンロードに時間がかかります。

 

交流の多くが同じ趣味を持つ人たちであったけれども、そのあたりの気遣いも必要です。
ダウンロードに時間がかからないよう、無駄にファイル容量を増やさないような技術もあり、作り手たちはそういった勉強にも時間を割いていました。

 

基本的に、回線速度の遅い人でもできるだけ快適に自分の作品を楽しんでもらえるよう、工夫していました。

 

 

ダウンロード販売の概念ができつつある

このころから少しずつですが「ダウンロード販売」という概念ができつつありました。
作品をネット上で公開し、ネット上で販売、決済を済ませるという、今では当たり前のことですが、当時は敷居の高いものでした。

 

多くの作り手たちは作品をネット上で公開していましたが、ネット上で販売するということはあまり考えてはいませんでした。
なので多くの作り手は、たとえば音楽を同人即売会で売る場合はCDにして、小説を書くなら冊子にして、というふうに、リアルの物販として販売していました。

 

 

制作とスキル

このころはまだデジタル作品の創作は敷居の高いものでした。
デジタルで作れる人は作れるのですが、ソフトウェアの価格が高価なものが多かったのです。

 

たとえばイラストではまだフォトショップが主流で、10万近くしました。作曲ソフトも高品質のものをそろえるとやはり合計で10万以上していました。3DCGソフトだと100万以上したりするものもありました。
ゲームエンジンにしても、まだ敷居が高く、覚えることがたくさんありました。勉強熱心な人だけがゲームを作ることができました。

 

ソフトウェアが高価だったため、一度購入するとみんな大事にして使い続けていました。
このためWindowsのバージョンが上がったとき、古いソフトウェアがそのまま問題なく動作するかどうかが重要なポイントでした。
昔のソフトウェアが動作しないので、パソコン買い替えの時は必死で古いWindowsを探して購入するような人もいました。

 

制作スキルについても、ウェブサイトの情報はいまいち頼りにならないところがありました。
というのは、このころからウェブサイト構築によるビジネスモデルが立ち上げられつつあり、いわゆるスパムサイト(内容のないページを大量に作って検索順位を上げているサイト)が乱立し、検索エンジンというのがあまり役に立たなかったのです。

 

重要なスキルを身に着けるには、やはり専門書に頼るか、口コミでいい技術指南サイトを紹介してもらったりしていました。

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