ファランクス(長編)

時間:真昼、晴れ。
場所:ある学校(若狭女子高校の使いまわしでいい)の3階の廊下、3-1の前〜音楽室手前あたり。
瑞穂(みずほ)と由香里(ゆかり)がしゃべりながら音楽室方向へ歩いている。
服装は夏のセーラー服。
由香里のほうが瑞穂より少し前を歩いている。

 

瑞穂「へー、なんていうゲームなの、それ?」
由香里「ファランクスっていってさー」

 

由香里、振り返ながらしゃべる。

 

由香里「すっごい面白いんだよー?」

 

誰もいない。周辺一帯、誰もいない。
しばらくそのまま。

 

由香里「瑞穂?」

 

由香里、辺りを見回す。

 

由香里「瑞穂?どこ行ったの?」

 

由香里のすぐ後ろにもう一人の由香里がいる(ただし姿は黒で塗りつぶし)。ニヤリと笑って由香里に近づき、手を伸ばし、掴みにかかる。

 

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オープニング

 

パソコンのモニタでファランクスの世界が作られる過程。
ファランクスの世界が完成し、中の世界が映る。
ファランクスの世界が壊れていく。
真琴の通学シーン。

 

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7月、午後4時。天候は晴れ。日が斜め。日光の色は黄色。
若狭女子高等学校(学校名は提示しなくていい)、放課後の帰り際。鐘が鳴る。
3階廊下、3-1教室方向から真琴が音楽室方向へ歩いてくる。
生徒の服装は夏のセーラー服。

 

真琴、元気のない表情でテスト用紙を見ている。
真琴「(あと半年で大学受験か……)」
テスト用紙、点数が21点、バツが多い。
ホール前廊下の交差点を通りかかったときに、ホール前にいる新城と一ノ瀬。

 

新城「おい、水野!」
真琴「新城さん?」

 

真琴、気がついてテスト用紙をかばんに隠す。
新城と一ノ瀬が近づいてくる。あくどい表情。

 

一ノ瀬「ちょっと付き合えよ」

 

真琴「今日は早く帰らないと……」
新城「なんだよ、あたしら友達だろ?」

 

真琴、うつむいていやそうな顔。

 

新城「テスト返ってきたんだろ?見せろよ」

 

新城と一ノ瀬、あざけるようにニヤニヤしている。
真琴、怖がってかばんを背に隠す。後ずさる。

 

真琴「ごめんなさい、今日は……」

 

真琴、逃げようとする。
新城、真琴の手を引っ張ってホール前に無理やり連れて行く。
真琴、手を引っ張られて痛そうにする。

 

新城「見せろっていってんだよ」
真琴「い、痛い!」

 

新城と真琴でかばんを取り合う。

 

真琴「んんっ!」

 

新城、一ノ瀬を見て

 

新城「おい、一ノ瀬!」

 

一ノ瀬が真琴を腕ごと強く抱きしめて、真琴はかばんを落とす。

 

真琴「うあっ!」

 

新城、ニヤリと笑い、真琴のかばんを取り上げて、テスト用紙を取り出す。
真琴、一ノ瀬から脱出しようとするが、できない。
新城、テスト用紙を見ながらあざけるように

 

新城「水野、お前ほんっっとうにバカだな」

 

新城、真琴と一ノ瀬にテスト用紙を見せつける。21点の数字がよく見えるように。
一ノ瀬、真琴を見て

 

一ノ瀬「脳ミソ腐ってんじゃねぇか?」

 

一ノ瀬、いかにも馬鹿にしたような口調で

 

一ノ瀬「あーあ、水野真琴は21点かぁ!(わざとらしく大声で)」

 

真琴、不安そうに

 

真琴「やめて!大声でいわないで!」

 

新城、テスト用紙を高く掲げてひらひらさせて

 

新城「水野真琴のテストの点数は21点でしたーーっと!(わざとらしく大声で)」

 

真琴、泣き出す。
新城、一ノ瀬、愉快な気分になって嘲り笑う。
鏡美、教室から音楽室の廊下を歩いていて、真琴たちに気づく。不審な表情で近づく。
鏡美、怒って

 

鏡美「ちょっと!あんたたち何してんのよ!」

 

一ノ瀬、新城、驚いて鏡美のほうへ振り向く、一ノ瀬は真琴を離す。
真琴、一ノ瀬から少し離れて、少しよろめく。弱弱しく

 

真琴「鏡美ちゃん……」
新城「こいつ、川崎鏡美か……」
一ノ瀬「川崎って、学年成績でいつもトップ10番以内に入ってるヤツか?」

 

鏡美、真琴に近づき、二の腕をつかんで心配そうな表情で

 

鏡美「真琴!……泣いてるの?」
真琴「ううん」

 

鏡美、真琴の顔をよく覗き込んで

 

鏡美「泣いてるじゃないの!」

 

鏡美、新城と一ノ瀬をにらみつけて

 

鏡美「あんたたち!」

 

新城、一ノ瀬、気まずい表情。

 

新城「ちっ(舌打ちする)」
一ノ瀬「新城……」

 

新城、後ろを向いて撤退する。一ノ瀬、新城を追う。
新城、少し後退してから顔だけ振り向いて、真琴に向かって。

 

新城「お前みたいなバカが、何でこんな優等生と仲がいいのかわかんねぇな」
一ノ瀬「優等生かよ……ムカつくな」

 

新城と一ノ瀬、背を向けて階段のほうへ歩いていく。

 

鏡美、にらんでいる。真琴、不安そうな顔。
鏡美、真琴のほうを向いて心配そうに

 

鏡美「あの二人にいじめられていたのね?」

 

真琴、無理して笑顔を作って

 

真琴「大丈夫だから」
鏡美「大丈夫じゃないでしょ!」

 

鏡美、スカートのポケットからハンカチを取り出して、真琴の涙を拭いてやる。
鏡美、心配そう。真琴、落ち込んだ表情。

 

鏡美「あんなのにかまってちゃだめよ」
真琴「無理だよ。逃げられないよ……」

 

鏡美、真琴を軽く揺さぶって。

 

鏡美「そんなことないから!がんばって、強くなるのよ!」
真琴「う、うん……」

 

鏡美、手を離して直る。表情が通常に戻る。

 

鏡美「……帰ろっか」

 

真琴、少し元気が戻る。表情が普通に戻る。

 

真琴「うん」

 

玄関。下駄箱前の廊下に夢見が立っている。

 

鏡美「夢見!」

 

夢見が真琴と鏡美に気づいて振り向き、笑顔になって手を振る。
真琴と鏡美が夢見のところへやってくる。
鏡美と夢見は笑顔、真琴は普通の顔。鏡美と夢見はうれしそうに話す。

 

鏡美「待たせた?」
夢見「ううん、帰ろ!」

 

帰り道。4:30ごろでまだ十分明るい。空がやや晴れてきている。
南川沿いの道。真琴、鏡美、夢見の3人が下校中。
鏡美が真ん中、真琴と夢見はそれぞれ右端、左端で並列して歩いている。

 

夢見「テストの点数悪かったなぁ(やれやれ、という表情)」
鏡美「それじゃ、復習しておかないとね(微笑して)」
夢見「えー、勉強やだー(嫌そうに)」
鏡美「もう!(しょうがないなー、という表情)」
夢見「私は鏡美ちゃんみたいに頭よくないし、勉強しても無駄だよー(開き直った表情で)」
鏡美「がんばれば成績上がるよ(やれやれといった表情で)」

 

真琴が元気がない。それに夢見が気づいて心配そうに

 

夢見「真琴ちゃん、どうしたの?何かあったの?」
真琴「え?(はっとして)ううん、なんでもないよ(微笑して)」

 

鏡美、気まずそうな表情。心配そうな顔。

 

夢見「そう?ならいいけど……元気出してね?(心配そうに)」
真琴「うん、ありがとう(うれしい)」

 

夢見、真琴、笑顔になる。
少し間をおいて、夢見、元気そうに二人に向かって話す。鏡美も楽しそう。

 

夢見「ねえねえあのね、ファランクスっていうゲーム、知ってる?」
鏡美「ファランス……ファランクス?」
夢見「うん!パソコンで遊べるオンラインゲームだよ。スマホでもできるよ!」
鏡美「へぇ……おもしろいの?」
夢見「おもしろいよー?そうだ、鏡美ちゃんと真琴ちゃんもいっしょにゲームやろ?」
鏡美「そういうのあんまり興味ないんだけどなぁ……なんで?」
夢見「えへへ……(ちょっと気まずそうに)友達を誘うとポイントがもらえるんだぁ」
鏡美「なぁんだ、そういうことか……(やれやれな表情)」
夢見「だめ?」
鏡美「うーん……それどんなゲームなの?」

 

夢見、スマートフォンをスカートのポケットから取り出し、楽しそうに笑顔で鏡美と真琴に見せる。

 

夢見「これ!」

 

画面いっぱい、スマートフォンの画面。
若狭女子高校の校舎の概観が映し出される。
スマホ画面のまま。

 

夢見「これがゲーム画面だよ」
鏡美「これ、私たちの高校じゃない?」
夢見「そう!現実と同じ世界が舞台なんだよ」

 

真琴、鏡美、夢見のスマホを見ながら驚く。

 

真琴、鏡美「へー!」

 

再びスマホの全画面になる。ヘルプ画面が開いて動画の説明になる。
概念説明図になる。ファランクスの世界では、グループ単位で世界に入り、それぞれのグループは別のグループとは接点がない状態の図が示される。

 

夢見「ファランクスにはね、グループっていう単位で入れるんだよ。たとえば私と真琴ちゃんと鏡美ちゃんで入ると、こんな感じで……」

 

ヘルプの画面、グループに真琴、鏡美、夢見がいる。そして別のグループが2つある。

 

夢見「私たち3人がファランクスの世界に入ると、ファランクスの学校の中には私たち3人だけとしか会わないから安全なんだよ」
鏡美「ふーん。でも3人だけで何するの?ゲーム?」
夢見「ゲームで遊ぶこともできるよ。でもね……」

 

ヘルプの図にコミュニティの概念が加わる。それぞれのグループをコミュニティでつなぐ線が入る。

 

夢見「コミュニティっていうのがあってね、その中ではほかのグループの人たちとお話したりできるんだよ。ほかの人たちと友達になったりして……うーん、部活みたいなものかなぁ?たとえばねぇ……」

 

スマホの画面、愛犬コミュニティの画面に切り替わり、犬の写真が出る。

 

夢見「これ、愛犬コミュニティっていうんだよ。犬が好きな人たちが集まって、写真とか投稿してるんだよ」

 

鏡美、真琴、目を輝かせて。

 

鏡美、真琴「かわいい!」

 

夢見「ね、いいでしょ?やろっ!(満面の笑顔で)」

 

鏡美と真琴。

 

鏡美「うん!(笑顔で)」
真琴「いいよ(笑顔で)」
夢見「ありがと!(笑顔で)あ、それとね……」
鏡美、真琴「?」
夢見「このゲームにのめりこみすぎるとね、ゲームの世界に入れるっていう噂があるんだよ?」
真琴「えー?(苦笑い)」
鏡美「そんなわけないでしょ……(あきれて)」

 

夢見、ゲームの画面を見ながら

 

夢見「ゲームの世界に入れたらいいのになぁ……勉強しなくていいし、テストもないし……みんな仲良しで、いじめとか絶対に起こらないんだよ?」

 

真琴、はっとしたように夢見のほうを見る。
真琴、夢見のスマホを覗き見る。気になる様子で。スマホが拡大。

 

本郷駅を降りた直後の場所。5時半ごろ。まだ明るい。夕焼けがとても明るい。空がオレンジ。
鏡美だけは地下道から帰るので、そこで別れる。鏡美と真琴・夢見は少し距離がある状態。
夢見、鏡美に向かって、少し大きな声でいう。

 

夢見「帰ったらログインしてね!ばいばーい!」

 

鏡美、夢見、真琴、手を振って別れる。

 

本郷駅からまっすぐ南へ100mくらいのところ、道路と田んぼがあるところ。
二人併進して、夢見はやや道路の真ん中側を歩いている。
夢見と真琴がしゃべりながら歩いている。

 

夢見「真琴ちゃんに合いそうなコミュニティは……なんだろ?」
真琴「どんなコミュニティがあるの?」

 

真琴、夢見のほうを振り向いて突然心配な表情に変わる。
夢見、その場にうずくまっている。両手で互いのもう片方の二の腕をつかんで、苦しそうにしている。息切れしている。

 

真琴「夢見ちゃん!」

 

真琴、夢見に駆け寄り、周囲を確認して抱きかかえる。
夢見をお姫様だっこで移動させ、道端の草むらへ運び、寝かせる。
真琴にとっては重いので、真琴もかなりしんどそうに運ぶ。

 

夢見「はあ、はあ……ごめんね」

 

真琴、右手を夢見のおでこに、左手を自分のおでこに当て、熱を比べる。熱はない。

 

夢見「ありがと。大丈夫だよ、ちょっと疲れただけ(それほど苦しそうではない)」
真琴「ほんとに?」

 

夢見、上体をゆっくり起こす。

 

夢見「もう平気だよ(笑顔で)」
真琴「よかった」
夢見「ごめんね、重かったでしょ?」
真琴「平気だよ。それより……夢見ちゃんのその病気って、いつか治るんだよね?」

 

夢見、顔をそらせて気まずそうな表情。真琴を正面から見ずに

 

夢見「う、うん……治る……よ」

 

真琴、心配そうに夢見を見ている。
夢見、あわてて

 

夢見「ほ、ほんとだって!時間かかるけど、必ず治るって!お医者さんもそういってたし!」
真琴「そうだよね。絶対、治るよね(笑顔)」
夢見「うん!(笑顔)」

 

夢見、立ち上がって、二人で歩き出す。

 

午後7時、真琴の家。真っ暗。
外は真っ暗。真琴の自室。真琴の自室は2階。
真琴の机にはパソコンのほか、学校で使うノートや教科書が開いたままにしてある。
真琴の机のパソコンはついていて、ファランクスのログイン画面になっている。
真琴、夢見に電話をかけて、夢見が電話に出たところ。

 

真琴「あ、夢見ちゃん?今ね、ファランクスの最初の画面なんだけど」
夢見「来てくれたんだね?ありがとう!」
真琴「鏡美ちゃんも来てるの?」
夢見「まだだよ。とりあえず、そのままゲームをスタートして」
真琴「うん」

 

パソコンの画面になる。
実名(姓名それぞれ)と学校名あるいは勤務先を入れる欄がある。「名前と学校名または勤務先を入れてね」と書いてある。

 

真琴「これ、本名をそのまま入れればいいの?」
夢見「うん」

 

「水野」「真琴」「若狭女子高校」と入力し、「次へ」をクリック。
真琴のデフォルメキャラクター(アバター)が生成される。名前はそのままで「真琴」
アバターが右に表示されていて、左には「能力値を入れてください」と書いてある。
能力値には「知力」「身体能力」「魅力」の3項目がある。各項目の満点は10点で、使えるポイントが15点と書いてある。

 

真琴「能力値ってなに?」
夢見「自分のキャラクターの能力だよ。頭のよさとか魅力とか、決められるんだよ。それぞれ10点満点で、最初は15点分を振り分けられるんだよ」
真琴「うーん……どうしたらいいの?」
夢見「適当に入れてもかまわないよ。全部5点でいいんじゃない?」

 

能力値に全部5と入力する。

 

真琴「私、こんなに頭よくないよ。運動もできないし、魅力も……」
夢見「ゲームの中では何でもできるんだよ。そんなに深く考えることじゃないって!」
真琴「そうなんだ」

 

「次へ」をクリックすると、通行証を選ぶ画面になる。

 

真琴「通行証?」
夢見「よくわからないけど、ファランクスで遊ぶには通行証っていうのが必要なんだって。好きなの選んで」
真琴「どれでもいいの?」
夢見「見た目が違うだけで、効果は同じだよ」
真琴「そっか、じゃあ……」

 

花の髪飾りを選ぶ。一度アップして表示され、「これでいいですか?」と表示される。「OK」をクリックすると、アバターに通行証が髪飾りの形で追加される。
画面が若狭女子高校の玄関になる。
画面右側に、上から今日の日付とログイン者名、現在位置、移動先の選択肢が表示されている。
今日の日付は7月3日で、ログイン者名は「水野 真琴」「河南 夢見」と書いてある欄があり、それぞれに「ログイン中」と表示されている。またログイン名の横に「詳細」の欄が用意されている。
現在位置は「玄関」、移動先には、「↓外へ出る」「←美術室前」「→階段を上がる」。ゲームの中の天候は晴れ。

 

夢見「それで最初の設定は終わりだよ」
真琴「これ、いま学校にいるの?私たちの学校の玄関?」
夢見「そうだよ。ゲームを始めたらいつも学校の玄関から始まるよ」
真琴「ふーん、今から何したらいいのかな?」
夢見「何してもいいんだけど……そのへん適当に歩いてみたら?」
真琴「うん、わかった」
夢見「それじゃ切るね。それと、右上の私の名前の詳細ボタンをクリックすると、私がどこにいるかわかるからね」
真琴「ありがとう。じゃあひとまず切るね」

 

真琴、電話を切る。パソコン画面が終わり、真琴が電話を切る場面を表示。
再びパソコンの画面を表示。

 

真琴「えっと……詳細ってこれかな?」

 

カーソルを夢見の名前の「詳細」へ持っていき、クリックすると、夢見の状態が画面に追加画面の形で表示される。
夢見の欄には、「名前 河南夢見」「学校 若狭女子高校」「ログイン状況 ログイン中」「現在位置 体育館」「所属コミュニティ」と表示されている。

 

真琴「所属コミュニティ?」

 

所属コミュニティのところをクリックすると、夢見の所属しているコミュニティが表示される。それらは順番に
「オンラインゲーム全般」「ソーシャルゲーム愛好会」「愛犬コミュニティ」「アニメ・漫画大好き」「パソコンゲーム」
最後に「次のページへ」

 

パソコン画面を抜けて真琴の顔を表示。

 

真琴「夢見ちゃん、いろんなコミュニティに入ってるんだ……あっ!(驚いて)」

 

再びパソコン画面に。「次のページへ」をクリックした直後の画面で、コミュニティ欄に以下のように表示されている。
「現代アニメを語ろう」「家庭用ゲーム」「かわいい猫の画像を集めよう!」「血液の病気のコミュニティ」
マウスカーソルが血液の病気のコミュニティのところに止まっている。
真琴の顔。真琴、不安な表情。手を口に当てて

 

真琴「なんで……血液の病気?これって、まさか……」

 

パソコン画面、血液の病気のコミュニティのところをマウスカーソルがうろうろしている。
真琴の右手を表示。クリックしようかどうか迷っている。
しばらくして真琴の顔を表示。

 

真琴「ううん、大丈夫だよ!夢見ちゃんのお医者さんだって、必ず治るっていってたんだし!(強がって)」

 

パソコン画面、夢見の詳細欄を消し、移動先を選ぶ画面に。移動先は「↓外へ出る」「←美術室前」「→階段を上がる」がある。
少し迷って、移動先の「→階段を上がる」を選択。
画面がフェードして静止画が入れ替わる。アドベンチャーゲームのような仕様になっている。
画面がパソコン教室の前になる。移動先は「↓階段を下りる」「←パソコン教室」「↑図書室前」
真琴の顔を表示。

 

真琴「ほんとに学校そのままなんだ(驚いて)。パソコン教室には何があるんだろ?」

 

パソコン画面を表示。移動先で「パソコン教室」を選択。
画面がパソコン教室に。ここには「ゲームコミュニティ」がある。画面左に「ゲームコミュニティ」と書いてあり、その下にコミュニティの概要と、投稿されたトピックが更新の新しい順に並んでいる。
コミュニティの概要の欄には、「管理人 芽衣」「メンバー数 4人」「公開レベル 全国に公開」
説明欄には「ゲームが好きな人が集まるコミュニティです!若狭女子高校のパソコン教室で活動してます!他校の方大歓迎!!」と書いてある。

 

真琴「これがコミュニティ?」

 

画面がアップで概要→説明欄と移動。
以下、チャットの文章は声ではなく文章として表示。

 

チャット:芽衣「こんばんは、真琴さん」

 

真琴の顔を表示。

 

真琴「わ、人いるんだ(驚く)。え、えっと……」

 

真琴、キーボードを打つ。そんなに早くない。
パソコン画面。最大3行表示できるチャット。

 

チャット:真琴「こんばんは。えっと……芽衣さん」
チャット・芽衣「若狭女子の子だよね?ここはゲームのコミュニティだよ。4人しかいないけどね」
チャット:真琴「いまほかにも誰かいるんですか?」
チャット:芽衣「4人ともいるよ」

 

翔一、優奈、大樹の3人はほぼ同時に文章が出る。

 

チャット:翔一「こんばんわー」
チャット:優奈「ゆうなだよー」
チャット:大樹「よろしく」

 

チャット:真琴「水野真琴です。よろしくお願いします」
チャット:芽衣「いまファランクスのゲームやってるんだけどさ、見てみる?」

 

パソコン画面にゲームの画面が中央あたりに表示される。
ボンバーキングのようなゲーム。ただし登場キャラクターがかわいい動物。
舞台が南極で、主人公がペンギン。十字キーで動き回り、ボタンで氷を投げつけて敵を倒して先へ進む。投げている間は硬直していて動けない。
敵はアザラシ、ペンギン、白熊、シャチ、クジラ、アホウドリなど。
真琴の顔。

 

真琴「あ、このゲーム……やったことある」

 

パソコン画面。しばらくゲームが進んで、敵にやられてしまう。

 

チャット:翔一「あー、ちくしょー、またやられた」
チャット:優奈「ぜんぜんだめじゃん」
チャット:芽衣「誰もクリアできないねぇ……」

 

真琴の顔。キーボードを打つ。
パソコン画面。

 

チャット:真琴「あの、私はできないんですか?ゲーム」
チャット:芽衣「ええっ?できるけど、難しいよこれ?」
チャット:真琴「やったことあるんです、このゲーム」
チャット:翔一「マジで?」
チャット:大樹「おお!」
チャット:芽衣「それは期待できるかも……ちょっと待って」

 

画面に「ゲーム開始」のボタンが追加される。

 

チャット:芽衣「これでやってみて!」

 

真琴の顔。キーボードを打つ。
パソコン画面。ゲームをクリアする。「GAME CLEAR」の表示が出る。
以下の文章はほぼ同時に出る。

 

チャット:大樹「おおー!」
チャット:翔一「マジか!?」
チャット:優奈「やるじゃん!」

 

少し遅れて。

 

チャット:芽衣「すごーい!ありがと!みんなクリアできなくて困ってたんだよ!」
チャット:真琴「たまたまですよ。やったことあったから」
チャット:芽衣「それでもすごいよー!」

 

真琴、照れてる。

 

チャット:優奈「ねえ真琴さん、ここのコミュニティに入ってよ!正式に!」
チャット:大樹「そうですよ。これからも手伝ってください!」

 

真琴、ちょっと戸惑う表情。
突然パソコンから効果音。パソコン画面。右上に「川崎鏡美さんがログインしました」と出る。真琴、少し驚くが、そのままキーボードを打つ。
パソコン画面。

 

チャット:真琴「ちょっと考えさせてください。ファランクスも今日始めたところなんです」
チャット:芽衣「そっかー、いいよ。でもまた来てね!絶対だよ!」
チャット:真琴「はい、それでは失礼します」

 

パソコン画面、パソコン教室から移動しようとすると。

 

チャット:翔一「天才の真琴さん、待ってますよ!」

 

真琴、表情が驚きと喜びになる。
パソコン画面。パソコン教室から出て、ログアウトのボタンを押す。
ログアウトのボタンを押すと、「ログアウトしています」という表示がしばらく表示され、突然画面が真っ暗になる。
パソコン画面に「ねえ、こっちの世界に住みたい?」と出る。
真琴、疑問に思う表情。
パソコン画面に「こっちにはあなたをいじめる人はいないよ」と出る。
真琴、驚いて不審に思う表情。
真琴の視点で、画面がゆがみ、周囲全体がゆがんで見える。
真琴、驚いて恐怖する。うつむいて、両手でおでこを押さえる。しばらくして手をどけて顔を上げる。周囲をきょろきょろ見ながら

 

真琴「なに、今の!?」

 

真琴、目をぱちぱちさせて、落ち着いて

 

真琴「……疲れてるのかな」

 

真琴、ベッドの中。眠れずにいる。考えている。
「天才の真琴さん、待ってますよ!」という文字が、真琴の頭の中で繰り返される。
「また来てね!絶対だよ!」の文字が真琴の頭の中で繰り返される。
真琴、寝返りを打って、ぼーっと考えている。

 

朝。晴れ。本郷駅。鏡美と夢見。

 

鏡美「真琴、休みなの?(驚いて)どうしたんだろ……(心配そうに)」
夢見「帰りにお見舞いに行こうよ」

 

学校、朝→昼→夕方に変化(太陽の角度が横→上→横(やや(空が赤い)で示せる)
真琴の部屋。真琴、パソコンでファランクスのゲームをしている。パジャマのまま。キーボード打ってる。
パソコン画面。昨日やったペンギンのゲームをクリアした画面。

 

チャット:翔一「おおー!」
チャット:芽衣「クリアしてくれてありがと!やっぱり真琴ちゃんがいてくれるといいわぁ!」
チャット:真琴「私も皆さんのお役に立ててうれしいです」

 

真琴の顔、照れてる。
パソコン画面。

 

チャット:翔一「ねえねえ、真琴ちゃんってどこに住んでるの?」
チャット:真琴「え?えっと……」

 

真琴、不安な表情。

 

チャット:翔一「若狭女子の子なんでしょ?じゃあ……」
チャット:芽衣「ちょっと、ナンパしてんの?浮気?」
チャット:翔一「ちげーよ!」
チャット:芽衣「うそつけ!」

 

真琴の顔。さらに不安な表情。
家のチャイムが鳴る。真琴、何かと振り向く。

 

鏡美「真琴ー!」
夢見「真琴ちゃーん!上がるよー!」

 

真琴、激しく動揺する。パソコン画面で急いでチャットを打つ。

 

チャット:真琴「ごめんなさい。終わります」

 

鏡美と夢見が階段を上がってくる。
真琴、マウスをカチカチ押すが、画面が消えないので、あわててパソコンの電源ごと切る。
パソコンの画面が消えた直後、鏡美と夢見が真琴の部屋のドアを開ける。
鏡美は普通の表情。夢見は満面の笑顔で

 

夢見「真琴ちゃん、クッキー……あれ?」

 

真琴、パソコンの電源を切った直後、床にちょこんと座っている。びっくりしてドアのほうを向く。

 

鏡美、夢見、驚いた表情。

 

真琴「あ、あの……えっと、これは……(焦った様子で)」
鏡美「真琴……体、大丈夫なの?(心配した様子で)」
真琴「え?ああ、うん。もう平気……(冷や汗)」
鏡美「そうなの?よかった(安心した様子で)」

 

鏡美、夢見、真琴の部屋に入る。3人で床の上に座る。
夢見がクッキーの袋を開封しながら

 

鏡美「おいしいって評判のクッキー買ってきたの」
夢見「これ食べて、早く元気になってね!」

 

真琴、一瞬、罪悪感で申し訳なさそうな表情をするが、直って笑顔になって

 

真琴「ありがとう!とってもうれしいよ!」

 

鏡美、夢見、微笑する。
俯瞰カメラで時間の経過を示す。3人でお茶を飲みながらクッキーを食べている。

 

学校の玄関、3時半くらい。天候は曇りで、かなり暗い。夜の寸前くらいに暗い。
生徒たちが掃除している。
真琴、大きなゴミ箱を抱えて、外から玄関へ入ってくる。この時点ですでに周囲に誰も人がいない。
玄関の廊下の隅にゴミ箱を置く。
真琴、顔を上げる。

 

真琴「……あれ?」

 

以下、ずっと1人称。
真琴、不審に思い、辺りをきょろきょろ見回す。
少し歩きながら、玄関の外、体育館側、美術室側を見る。誰もいない。
真琴、不安な表情。

 

真琴「え?」

 

真琴、あわてて走って美術室前の廊下まで来る。
真琴、すごく不安な表情。

 

真琴「誰かいないの!?」

 

真琴、美術室のドアを開けて入る。少し進んで、美術室に洗面があり、そこに鏡がある。
真琴、鏡を見ると、自分の髪にファランクスの通行証がついているのを見る。

 

真琴「はっ!?」

 

真琴、驚いて鏡を見ながら自分の髪を触り、ファランクスの通行証を触り、取り外そうと試みるが、外れない。髪が引っ張られるだけ。

 

真琴「痛っ!なんで?外れない」

 

真琴、もう一度鏡を見る。

 

真琴「これって……ファランクスの通行証?じゃあここは……ゲームの世界?まさか!?」

 

真琴、取り乱して辺りを見回し、美術室を出る。

 

真琴「誰か!誰かいませんか!助けて!」

 

真琴、走って階段を上る。恐怖で動作が速くなっている。叫ぶように

 

真琴「はあ、はあ……鏡美ちゃん!夢見ちゃん!」

 

真琴、2階の廊下を見回すが、誰もいない。
2階の対角線側の窓を見てみると、理科室と2年9組の教室の中央あたり(2年8組あたりの教室前の廊下)に、人影が見える。が、すぐに梁に隠れてしまう。以降、見えない。
真琴、疑問の表情。
理科室のあたりから足音が聞こえてくる。徐々に足音が大きくなり、近づいてくるのがわかる。
真琴、不安な表情で、少し後ずさりする。
その人物も近づいてくる。柱の影から出た瞬間、光が当たって顔が見える。夢見だとわかる(ただし夢見本人ではなく、ファランクスの世界の夢見のキャラクターである)。夢見、微笑している。
真琴、喜んで夢見に話しかける。早口で、つまりながら

 

真琴「夢見ちゃん!あの、あの……誰もいないの!私、怖くて怖くて……ここ、ファランクスの世界なの?」

 

ファランクスの夢見、少しも表情を変えずに、穏やかな表情で

 

ファランクスの夢見「そうだよ」

 

真琴、夢見の不自然な表情に疑問を思う。「何か変だな」と思う。少し怖い。

 

真琴「ほんとにゲームの世界に入っちゃったの?どうやったら出られるの?」

 

ファランクスの夢見、少しも表情を変えない不自然なくらい一定の穏やかな口調。
真琴は必死な様子。

 

ファランクスの夢見「何も」
真琴「え?」
ファランクスの夢見「何もしなくていいよ。時間がたつと出られるから」
真琴「ほ、ほんと?」
ファランクスの夢見「うん」

 

夢見、穏やかに微笑している。
真琴、夢見は何かおかしいと思う。

 

真琴「夢見ちゃんは……怖くないの?」
ファランクスの夢見「全然、平気だよ」

 

しばらくそのまま。
真琴、動揺している。
真琴、思い切って話す。

 

真琴「あ、あの……」

 

真琴、しゃべろうと思ったがファランクスの夢見がさえぎって質問する。

 

ファランクスの夢見「もう一人、私を見なかった?」

 

真琴、さっぱり意味がわからない顔。

 

真琴「もう一人?どういう意味なの?」
ファランクスの夢見「ゲームを始めたときに自分そっくりのキャラクターを作ったでしょ?このファランクスの世界にはね、そいつがいるの」
真琴「もう一人……夢見ちゃんがいる?」
夢見「うん。真琴ちゃんもね」
真琴「え?」

 

真琴、驚いて固まっている。
ファランクスの夢見、表情は変えない。

 

ファランクスの夢見「そいつはね、私になりすまして現実世界に出ようとしているの。見つけたら注意してね?ひどい目に合わされるかもしれないよ?」
真琴「なんのこと?現実世界に……出る?」
ファランクスの夢見「あのね、もう一人の自分が現実世界に出ちゃったら、自分は戻れなくなるんだよ。だからそいつを現実世界に行かせないようにしないと」
真琴「そんな……」
ファランクスの夢見「だから、もう一人の私を見つけたら教えてね。真琴ちゃんも、もう一人の自分を見つけたら……ね?」
真琴「見つけてどうするの?私はどうしたらいいの?」
ファランクスの夢見「ふふふ……」

 

真琴、不安な表情で、立ったまま呆然としている。
真琴、急に気がついたように、夢見の全身をじろじろ見る。
真琴、夢見の体に通行証らしいものがどこにもないことに気づき、自分の髪の通行証を触って、自分にはあることを確かめる。

 

ファランクスの夢見「じゃあ私は行くね」

 

ファランクスの夢見、茶道室のほうの階段へ行こうとする。

 

真琴「夢見ちゃん、あの……」

 

ファランクスの夢見、顔だけ振り向く。疑問の表情。
真琴、自分の通行証を触って

 

真琴「この通行証、髪から外れないの。夢見ちゃん、どうやって取ったの?」

 

ファランクスの夢見、はっと気づいて、動揺して

 

ファランクスの夢見「そ、そのうち取れるから!それじゃ行くね!」

 

ファランクスの夢見、走って行ってしまう。茶道室前の階段を下りる。足音が徐々に小さくなり、次第に聞こえなくなっていく。
真琴、不安な表情。
真琴、しばらく呆然としていると、ファランクスの夢見の行った方角から足音が聞こえてくる。真琴、それに気づいてそちらを見る。
すぐにこちらへは来ず、うろうろしている足音。
真琴、疑問に思う表情。足音のほうへ向かって

 

真琴「夢見ちゃん?」

 

足音が一瞬止む。

 

真琴「夢見ちゃん?どうしたの?」

 

足音が早足になる。
真琴、怪訝な表情に変わり、

 

真琴「!!……夢見ちゃんじゃない!」

 

足音へ向かって

 

真琴「誰?誰なの?」

 

返答はなく、足音、走って近づいてくる。
真琴、恐怖の表情になり、少し後ずさりしてから理科室のほうへ走り出す。
ずっと走る足音がし続けている。真琴、足音の方向へ向かって叫ぶ。

 

真琴「なんで追いかけてくるの!?」

 

真琴、理科室前の階段を下り、階段の陰に隠れて息を潜める。

 

真琴「はあ、はあ……あれって、まさか……(独り言、警戒してささやくように)」

 

足音が2階の理科室前で一度止まる。1階と2階の階段の中央の壁に、人影が映し出されるのを、真琴は不安そうに見る。人影、きょろきょろしている。
人影が動いて、階段を下ってくるのがわかる。普通に歩いて下ってくる。
人影で1階と2階の中央に来た時点で、真琴、走って中庭入り口のほうへ走り出す。同時に人影と足音も走り出す。
真琴、振り向かずにそのまま叫ぶ。

 

真琴「いや!来ないで!」

 

真琴、技術室から中庭への入り口へ走り、入り口の扉をあけ、一度振り向いてまだ足音がするのを確認してから、走って中庭を抜ける。中庭は花畑。
そのまま玄関へ走りこみ、一番端のロッカーの陰に身を隠す。真琴、怖くてうつむいて震えている。
しばらくして足音が迫ってくるのを聞いて、真琴、はっと気がつく。
足音がどんどん近づき、ロッカー前の廊下で止まる。しばらくして、真琴のほうへ向かってくる。真琴、歯を食いしばって目をつむる。
足音が真琴のところにまで到達する。すると女生徒A(端役)がそのまま通り過ぎて、外へ出る。
真琴、拍子抜けする。同時に瑞穂と由香里の話し声がする。2人は廊下を、美術室側からロッカーへ向かっている。

 

瑞穂「由香里は1年の子にサーブ教えてやって」
由香里「えー?あたしがやるの?」
瑞穂「由香里はサーブ上手いじゃん」
由香里「めんどくさいなぁ……」
瑞穂「キャプテンの命令です!」
由香里「こんなときだけキャプテンの顔するんだから!」

 

瑞穂と由香里、しゃべりながら廊下を通り過ぎていく。
真琴、ロッカーの影から顔だけ出して、二人が通り過ぎていくのを確認する。
ここで完全1人称終わり。
真琴、ロッカーの陰から出てきて、廊下に出る。体育館のほうを見ると、瑞穂と由香里が歩いており、美術室側を見ると女生徒B、続いてC、Dが階段を下りてくる。
真琴、中庭を見る。中庭は花畑ではなく、雑草が生えている。
真琴、不審な顔でややうつむいて自分の右手をおでこに当てる。そのまま顔を上げる。
真琴、はっと気がついて自分の髪を触る。通行証がないかまさぐるが、何もない。
真琴、美術室へ走って入り、通行証がないのを鏡で確認する。美術室には誰もいない。

 

真琴「さっきの……なんだったんだろう?私、病気なのかな?」

 

鐘が鳴る。真琴、美術室の時計を見る。時計は4時。雨が降っている。
真琴、美術室を出て、階段を上がる。とぼとぼ歩く。元気がない。
真琴、階段を上がって3階に来る。階段を上がった直後、夢見に出会う。
真琴、恐怖と不安の顔で驚く。夢見、それには気がつかず、喜んで笑顔で

 

夢見「あ、真琴ちゃん!今日は校門のところで待ってるね!」
真琴「あ、うん(平常な表情に戻って)」

 

真琴、夢見の顔をじーっと見る。

 

夢見、疑問に思って

 

夢見「どうしたの?」
真琴「う、ううん、なんでもないよ(ごまかし笑い)」
夢見「そう?じゃあ行くね」

 

夢見、走って階段を下りていく。
真琴、安心して息をつく。

 

真琴「いつもの夢見ちゃんだ」

 

真琴、下校時、1階の階段を下りた直後。

 

新城「水野!」

 

真琴、新城のほうを振り向く。1階の指導室前の女子トイレから新城がやってくる。
真琴、一瞬逃げようとする。
新城、人のよさそうな困った顔で

 

新城「水野、助けてくれ!本気で困ってんだ。お前にしか頼めないんだよ!」

 

真琴、驚く。新城、手を合わせて

 

新城「なあ頼むよ。な!」

 

真琴、新城と女子トイレへ向かう。
トイレの中で、一ノ瀬がトイレの掃除用具を窓から急いで外へ捨てて、窓を閉める。直後に新城と真琴が入ってくる。
トイレの構造は、奥のほうから和式、洋式、用具入れ。
新城、まだ善人のような顔で

 

新城「先生にトイレ掃除しろっていわれてさ、でも掃除用具がどこにもないんだよ」
真琴「え?掃除用具ならここに……」

 

真琴、掃除用具のドアを開けて中を見てみるが、何もない。
新城と一ノ瀬、あくどい顔でニヤニヤしながら後ろから真琴に近づく。

 

新城「ほらな?でも掃除しないと怒られるんだよ」
一ノ瀬「だからお前にも手伝ってほしいんだよ!」

 

真琴が振り返ろうとした瞬間、一ノ瀬が真琴を突き飛ばす。
真琴、床に倒れる。

 

真琴「ああっ!」
新城「お前が掃除用具の代わりになってくれよ」

 

校門。雨が降っている。空が暗い。
鏡美と夢見が真琴を待っている。2人とも傘をさしている。普通の表情。少しして、夢見、申し訳なさそうに

 

夢見「ごめん、私やることがあるから先に帰るよ」
鏡美「え?やることって?(不思議に思って)」

 

夢見、気まずそうに

 

夢見「え、えっと……」
鏡美「あ、ごめん!いいよ、また明日ね(笑顔で)」
夢見「うん、ごめんね」

 

夢見、帰路方向に走っていく。鏡美、寂しそうに見送る。
夢見、角を曲がって鏡美から見えなくなったところで、一度後ろを振り返ってから、スカートからスマホを取り出していじり始める。
スマホの画面はファランクスの画面。夢見の困った顔。

 

夢見「ポイントが足りないよ。早く集めないと……」

 

トイレの場面に戻る。

 

真琴「やめて!やめてぇっ!」

 

和式のトイレで、一ノ瀬が右手で真琴の髪を、左手で真琴の左腕をつかんでねじりあげ、動けなくし、ひざまずかせている。
新城が真琴の手を無理やりつかんで、真琴の手でトイレの汚物をこすってきれいにしている。
トイレはかなり汚れているが、徐々にきれいになっていく。
真琴、嫌がって脱出しようと試みる。一ノ瀬が髪を引っ張り、腕をよりきつく締め上げる。

 

一ノ瀬「この!」
真琴「うっ!(痛そうに)」

 

真琴、目をつむって歯を食いしばって耐えている。

 

新城「くっそー、藤原のヤツ、ムカつくな……タバコ吸ったくらいでトイレ掃除とかよ」

 

新城、手を止める。排水溝を拡大。

 

新城「水野、この奥のほう、お前一人で洗えよ」
水野「そ、そんな……」
新城「あたしの手が汚れちまうだろ!ほら早く!」

 

新城、真琴の手を、便器の排水溝でない下の表面に向かって踏みつけ、そのまま無理やり排水溝へ滑らせる。

 

真琴「いた……痛い!」

 

一ノ瀬、右手で真琴の頭を押す。真琴、嫌がる。
真琴、おずおずと排水溝へ手を伸ばし、排水溝を手で洗う。
真琴、目をそらすが、一ノ瀬が髪をつかんで無理やり直視させる。

 

一ノ瀬「それにしてもくっせーなぁ!水野、お前よくこんなことやれるよな。ははっ」
真琴「うっ……ううっ」

 

真琴、顔が涙でぐしゃぐしゃになっている。

 

新城「おいおい、せっかくきれいな顔が涙でぐしゃぐしゃじゃねーか。だったら、きれいにしないとな」

 

一ノ瀬、真琴を洋式便器のほうへ連れて行き、真琴の髪をつかんだまま便器の水溜りに真琴の顔を突っ込ませる。

 

真琴「うぶっ!」

 

真琴、抵抗して出ようとするが、新城も一緒に押さえつけて出られないようにする。
しばらくそのままして、顔を上げさせる。真琴、ぐったりして床にひざまづいている。髪が濡れている。

 

真琴「げほっ!げほっ!」
新城「これできれいになったな」

 

新城と一ノ瀬、トイレを出る。
真琴、その場に座り込んで、うつむいてうつろな目で呆然としている。表情がなく、しばらくピクリとも動かない。

 

校門、4時半ごろ。
鏡美が校門の校舎側手前で真琴を待っている。ほかには誰もいない。雨が降っていて空が暗く、鏡美と真琴は傘をさしている。
真琴が深刻な表情で、歩いてやってくる。うつむいて落ち込んだ表情。髪が濡れている。
鏡美、真琴に気づく。鏡美、真琴に駆け寄る。鏡美、心配そうに

 

鏡美「遅いから心配したよ?夢見は用事があるから先に帰るって……」

 

真琴、一瞬鏡美の顔を見るが、不安な表情になってうつむく。
鏡美、真琴の髪が濡れていることと、真琴の表情が暗いことに気づく。
鏡美、不審な表情になる。心配そうに、真剣な表情で

 

鏡美「どうしたの?何かあったの?」
真琴「何も……ないよ(無理に我慢して)」

 

鏡美、はっと気づいて

 

鏡美「またあの2人にいじめられていたのね!?」

 

真琴、耐えるような表情で、何も答えない。

 

鏡美「あいつら……!あんなのに付き合っちゃだめよ!」

 

真琴、弱弱しく

 

真琴「無理だよ……ずっとこのままだよ。もう私……死んでしまいたい」

 

鏡美、傘を落とし、真琴の両肩に自分の両腕を乗せて、強い調子で

 

鏡美「そんなこといっちゃだめ!気をしっかり持って!強くなるのよ!」

 

真琴、体を硬直させて、耐えて涙を出す。こらえながら鏡美の両腕を優しくつかむ。真琴の傘が落ちる。

 

真琴「私の気持ちは、鏡美ちゃんにはわからないもの……」

 

真琴、非常に激しい調子で

 

真琴「変われない人だっているんだよ!」

 

鏡美、戸惑う、悪いことをした、という表情で困惑する。真琴から手を離す。
真琴、我慢できなくなり、取り乱して激しく泣き出す。

 

鏡美「あ、あの……」

 

真琴、泣きながら走っていく。

 

鏡美「待って、真琴!」

 

真琴の自室、夜7時。真っ暗。雨は止んでいる。
真琴、帰った直後で、ドアを開けて部屋に入る。うつむいて暗い表情。
ベッドの前で膝をつき、荷物を投げ出し、ベッドに顔をうずめて静かに泣き出す。

 

真琴「鏡美ちゃんが一番私のこと心配してくれてたのに……」
真琴「鏡美ちゃんに嫌われて、もう友達でいられなくなったらどうしよう」

 

真琴、目をつむって

 

真琴「どうしてこんなことになったんだろ……もう私、消えてしまいたい」
真琴「鏡美ちゃん、ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

真琴、そのまま眠ってしまう。

 

真夜中の学校、3年1組の教室、満月で月明かりで少し光がある。時計が1時を指している。屋外は電灯などは一切ついていない。
真琴、自分の席の椅子で座ったまま寝ており、目が覚める。月明かりが顔を照らしている。真琴の席は一番窓側の前から2番目。
ここから完全一人称。
驚いてばっと起き上がり、あたりを見回す。

 

真琴「……え?学校?なんで?私……」

 

真琴、立ち上がってゆっくりあたりを見回す。

 

真琴「私、自分の部屋で……それから……はっ!」

 

真琴、自分の髪をまさぐり、通行証があることを確認する。

 

真琴「やっぱりここ……ファランクスの世界なんだ」

 

真琴、自分の手をまじまじと見る。

 

真琴「夢じゃない」

 

真琴、教室の廊下側のドアのほうへ歩き出す。教室の電灯をつけようと試みるが、つかない。
真琴、表情でがっかりする。

 

真琴「どうしよう……この前みたいに、時間が経つと出られるのかな?」

 

真琴、おずおずとドアを開けて廊下に出る。廊下は非常に暗い。
廊下の窓から校舎の内側を見ると、パソコン教室に明かりがついている。ほかは真っ暗。
よく見ると、教室の中の1台のパソコンの画面がついている。
真琴、疑問に思う表情。
突然、3-8あたり(向かって左側校舎)から教室のドアを閉める大きな音が聞こえる。
真琴、反射的に振り向いてびくっと震えて

 

真琴「ひっ!?」

 

真琴、梁の陰に隠れ、不安の表情で、梁の陰から音のした方向を見ている。
しばらく沈黙。何も聞こえない。
再び3-7あたりからドアを閉める音が聞こえる。真琴、びっくりする。
3-6あたりから歩く足音が聞こえる。徐々に足音が大きく聞こえてくる。
真琴、恐怖の表情。音楽室前の階段を走って2階に下りる。
足音は上の階からしている。

 

真琴「どこか、隠れるところ!」

 

真琴、茶道室の木製のドアを開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。力づくでこじ開けようとするが、開かない。
足音は階段を下り始めている。
真琴、階段のほうを一度振り向いて、理科室→図書館と振り向き、図書館の方角へ走る。
真琴、図書館のドアを開けようとするが、鍵がかかっていて開かない。さっきよりも力みすぎで、力づくで開けようとするが、開かない。
真琴、左を見て、パソコン教室のドアが開いているのに気づく(茶道室側のドアは開いているが、もう一つのドアは閉まっている)。一度階段のほうを振り返ると、足音が近づいており、階段のあたりから人影が見えており、誰かが下りてきているのが見える。
真琴、走ってパソコン教室に入り、ドアを閉めずに、急いで教室の一番奥の机の影に隠れる。
足音が近づいてくる。真琴、座って恐怖でがたがた震えている。呼吸が速い。
パソコン教室の前で足音が止まる。何者かが教室に入ってくるのが、その影でわかる。真琴、恐怖で冷や汗が出て、目をつむって歯を食いしばる。
影が動き、教室の電灯のスイッチのあるところへ動き、その者(ファランクスの真琴)が電灯をつけて教室が明るくなる。真琴、驚いて目を開ける。

 

ファランクスの真琴「そこにいるのはわかってるのよ。出てきなさい」

 

真琴、びくっとなり、恐る恐る立ち上がって顔を出す。
ファランクスの真琴は、普通の表情だが、気が強そう。真琴、ファランクスの真琴を見て非常に驚く。
ここで完全一人称終わり。

 

真琴「あなたは……私?え?」
ファランクスの真琴「なに驚いてるの?あなたが私を作ったんでしょう?」
真琴「あ……」

 

ファランクスの真琴、優しい表情になり

 

ファランクスの真琴「私はね、あなたのその通行証を受け取りに来たの」
真琴「通行証?」

 

通行証を拡大。

 

ファランクスの真琴「あなたがファランクスの人間になるために必要なの」

 

真琴、理解できない表情。

 

ファランクスの真琴「ここに来るのはみんな、現実世界で生きるのが嫌になった人たちなの。あなたもそうでしょう?だから、私があなたの世界に住み、あなたが私の世界に住むのよ」
真琴「そんなこと……(困った顔)」
ファランクスの真琴「ファランクスの世界にはいじめっ子はいないわ」

 

真琴、驚いて

 

真琴「なんでそのことを……」
ファランクスの真琴「私はあなたのコピーなんだから、あなたのことはなんでも知ってるわ」

 

真琴、知られたくない秘密を知られていたことを知り、目をそらす。

 

ファランクスの真琴「ファランクスの人たちはみんな優しい人たちで、絶対に争いごとなんか起こさないわ」
真琴「そんなこと、突然いわれても……(困った顔で)」
ファランクスの真琴「死にたいくらいつらいんでしょう?死んじゃうくらいならこっちに来たほうがいいと思うけど?」

 

真琴、うつむいて考えている。

 

ファランクスの真琴「その通行証を渡してちょうだい。そうすればあなたがファランクスの人間になれるから」
真琴「通行証……あっ!」

 

真琴、ファランクスの夢見が通行証をつけていなかったことを思い出す。
ファランクスの真琴の全身を見ると、どこにも通行証らしきものがない。

 

真琴「あれ、夢見ちゃんじゃなかったんだ……(小声で)」
ファランクスの真琴「なに?」

 

真琴、顔を上げて

 

真琴「あ、でも、あなたも私たちの世界でいじめられて、つらいことになるんじゃ……」

 

ファランクスの真琴、自信ありげに胸を張って

 

ファランクスの真琴「私がいじめられると思う?」

 

真琴、劣等感を感じて落ち込む。

 

ファランクスの真琴「ねえ、いい話でしょ?」

 

ファランクスの真琴、目を右に向け、口を尖らせて「考えているような」表情で

 

ファランクスの真琴「うーん、だったらためしに少しの間だけこっちで生活してみる?」
真琴「え?試しにって、そんなことできるの?(驚いて)」
ファランクスの真琴「数時間だけね。大丈夫、すぐ戻ってこられるから」

 

ファランクスの真琴、画面のついているパソコンのところへ歩いていく。

 

ファランクスの真琴「ここはまだファランクスの世界ではないのよ。ファランクスの現実世界の境界のようなところなの。本当のファランクスにはたくさんの人がいて、みんないい人で……」

 

ファランクスの真琴、パソコンのマウスを握る。

 

ファランクスの真琴「安心して。きっと気に入るわ」

 

ファランクスの真琴、マウスをクリックする。すると真琴の周辺が切り替わり、瞬間的にファランクスの学校のパソコン教室に変化する。
昼休み、晴れ。パソコン教室。
真琴、教室から廊下の窓を見ると、女生徒C,Dが歩いていくのが見える。
真琴、時計を見る。時計は午後1時15分。
真琴、周囲をきょろきょろしながら、パソコン教室を出る。
真琴、茶道室前の階段を上った直後、新城に遭遇する(新城はホール側から出てくる、新城は現実世界と外見はまったく同じ)
真琴、新城を見て、不安な表情になり、怖がって立ち止まる。
新城、不思議に思う表情になり、次に心配してそうな表情になり、

 

新城「どうしたの水野さん?体の調子でも悪いの?」

 

真琴、非常に驚いて

 

真琴「え?ううん、なんともないよ」
新城「そうなの?ならいいけど」

 

新城、そのまま行こうとする。

 

真琴「あ、あの!」

 

新城、疑問の表情で、顔だけ振り向く。

 

真琴「一ノ瀬さんとはいっしょじゃないんですか?」
新城「一ノ瀬さん?誰?(不思議に思って)」
真琴「え?えっと、一ノ瀬杏奈さん」

 

新城、わからないといった表情で、少し考えて

 

新城「ごめん、誰のことかわかんないよ」

 

真琴、理解できない表情。

 

新城「どうしたの?(微笑して)」
真琴「う、ううん、なんでもない」

 

新城、そのまま行ってしまう。
真琴、疑問と不安の表情。

 

放課後、晴れ、明るい。午後4時、玄関のロッカー前の廊下。
真琴、美術室前の階段を下りて、ロッカーへ向かう。ロッカー前の廊下で鏡美と夢見が待っている。
真琴、鏡美と夢見のところへ、うれしそうに走ってくる。

 

鏡美「あ、水野さん(いつもよりも穏やかな調子で)」

 

以降、鏡美も夢見も、現実世界よりもしゃべり方が穏やかで上品。
真琴、不安になって立ち止まる。

 

帰り道。4:30ごろ。十分明るい。晴れた空。
南川沿いの道。真琴、鏡美、夢見の3人が下校中。
鏡美が真ん中、真琴と夢見はそれぞれ右端、左端で並列して歩いている。
真琴、浮かない表情。

 

夢見「テスト難しかったね。どうだった?」
鏡美「私はばっちりでしたよ」
夢見「よかったね。水野さんは?」

 

真琴、はっとして

 

真琴「えっと、まあまあ、かな」
夢見「そっかー。私も」

 

本郷駅、5時半くらい、夕方で夕焼けしている。真琴と夢見、鏡美と別れる。

 

夢見「じゃあね」
鏡美「また明日」

 

夢見の家の前

 

夢見「じゃあね、水野さん」
真琴「う、うん。河南……さん」
夢見「うん、さようなら」

 

夢見、歩いていく。
真琴、下を向いて、複雑な気持ちで考え込む。
突然周囲が変化し、瞬間的にファランクスの夜のパソコン教室になる。
真琴、驚いて周囲を見回す。先ほどと同じで、ファランクスの真琴がパソコンの前にいる。
ファランクスの真琴、自信ありげに

 

ファランクスの真琴「素敵な世界でしょ?」

 

真琴、少し考えて

 

真琴「一ノ瀬さんがいなかったみたいなの。なんで?」
ファランクスの真琴「ああ、あの子は素行不良だったから処刑されたわ」

 

真琴、青ざめて

 

真琴「処刑?なに……それ?」
ファランクスの真琴「ファランクスはね、悪人を許さない理想の世界なの。あの子はファランクスでも素行不良が直らなかったから、処刑されたのよ。だから新城さんと一ノ瀬さんは、出会ってもいないわ」

 

真琴、恐怖で後ずさりする。

 

真琴「そんな……そこまでしなくても……」
ファランクスの真琴「なにいってるの?あなたはあの子のせいで自殺したいくらい思いつめてたんでしょ?」
真琴「そうだけど……でも……」

 

真琴、うつむいてしばらく考えている。
真琴、ゆっくりと顔を上げて

 

真琴「私、ファランクスの人間にはなれない。元の世界に帰りたい」

 

ファランクスの真琴、驚きすぎて固まる。

 

ファランクスの真琴「え?」

 

ファランクスの真琴、突然気がついたように

 

ファランクスの真琴「ああ、大丈夫よ。あなたはいい子だから処刑されたりはしないわ。安心して」
真琴「そうじゃないの」

 

ファランクスの真琴、わざとらしく優しく

 

ファランクスの真琴「いじめっ子もいないのよ?何が不満なの?」
真琴「あっちの世界には、鏡美ちゃんも夢見ちゃんもいないもの」
ファランクスの真琴「そんなはずはないわ。あの二人はちゃんと……」
真琴「あれは私の知ってる鏡美ちゃんでも夢見ちゃんでもないよ!(必死で訴えるような調子で)」

 

ファランクスの真琴、驚いた表情で、しばらく硬直する。

 

真琴「こっちの世界は嫌、戻りたい」

 

ファランクスの真琴、一瞬、胸を押さえて少しよろめく。苦悶の表情になり、顔がうつむく。
真琴、疑問に思う。
ファランクスの真琴、顔を上げる。無理に笑顔を作っている表情。無理して優しい口調で

 

ファランクスの真琴「ねえ、何が不満なの?元の世界に戻ったら、またいじめられるわ?今度はもっとひどい目に合わされるかもしれないのに、いいの?」

 

真琴、黙っている。
ファランクスの真琴、怒った表情で真琴に詰め寄ってくる。
真琴、それを見て恐怖し、後ずさる。
ファランクスの真琴、口調やトーンも怒りを含んだものになり、

 

ファランクスの真琴「戻りたいって私の聞き間違いよね」

 

真琴、目をつむって首を横に振る。振った後に目を開ける。
ファランクスの真琴、さらに怒りの表情になり、真琴に近づく。

 

真琴、目をつむって叫ぶ。

 

真琴「来ないで!」
ファランクスの真琴「うっ!」

 

ファランクスの真琴、胸を押さえ、膝をついて苦しむ。

 

真琴、怪訝な表情。
ファランクスの真琴、立ち上がって、再び真琴に近づいてくる。

 

真琴、再び叫ぶ。

 

真琴「来ないで!」

 

ファランクスの真琴、ニヤリと笑い、

 

ファランクスの真琴「なに?大声を出せばひるむと思ったの?」

 

真琴、不安な表情で後ずさる。ファランクスの真琴が近づいてくる。
真琴、壁に追い詰められる。ファランクスの真琴、真琴の鎖骨あたりを右手で押し付けて、真琴を壁に押し付ける。

 

ファランクスの真琴「友達と別れるのが嫌なのね?でもね、あんた本当にあの二人に友達だと思われてるの?」
真琴「え?(不安に)」
ファランクスの真琴「鏡美ちゃんだっけ?あの子、あんたを助けようとしていじめに巻き込まれそうにならなかった?鏡美ちゃんにとって、本当はあんた迷惑な存在なんじゃないの?」
真琴「そんなことは……」
ファランクスの真琴「今日だってあんた、学校の帰りにあの子にひどいこといったわよね?」

 

真琴の顔が急に青ざめ、自信がなくなり力が抜ける。
ファランクスの真琴、ニヤリと笑う。喜ぶ。

 

ファランクスの真琴「あの子はいい子だから、しかたなくあんたに付き合ってくれるけどね……本当は嫌われてるのよ、あんたは」

 

真琴、何も言い返せずにうつむく。

 

ファランクスの真琴「あんたみたいなみじめな子は死んだほうがいいわ。あんたは友達を作るべきじゃないのよ」

 

真琴、うつむいて目を開けたまま涙を流す。

 

真琴「うっ……ひくっ、ううっ!」

 

ファランクスの真琴、さっきよりも少し優しい調子で

 

ファランクスの真琴「ファランクスの世界に来れば楽になるわ。そんな苦しいことはもう忘れなさい」

 

ファランクスの真琴、真琴の髪から通行証を取り上げようとする。
突然パソコン教室のドアが勢いよく開き、何者かが突っ込んできてファランクスの真琴が突き飛ばされる。真琴、正座崩しで座り込んで、驚いて硬直する。
ファランクスの真琴、しばらく痛がった後、振り向く。鏡美がモップを両手で持って、刀を構えるようにして、真琴とファランクスの真琴の間に立ちはだかっている。鏡美はファランクスの真琴のほうを向いている。鏡美、非常に怒った表情。
鏡美は通行証をつけている。
真琴、呆然として硬直したまま。

 

ファランクスの真琴「川崎……鏡美?」

 

ファランクスの真琴、立ち上がって

 

ファランクスの真琴「突き飛ばすなんてひどいわ」

 

ファランクスの真琴、無理に笑顔を作って、鏡美に近づこうとする。
鏡美、モップを頭上に振りかざして

 

鏡美「近づいたらぶっ飛ばすよ!」

 

ファランクスの真琴、足を止めて、なだめるように

 

ファランクスの真琴「勘違いしないでよ?私はこの子をいじめてるんじゃないの。この子のことを心配してやってるのよ?」

 

鏡美、そのまま。

 

ファランクスの真琴「だからね、仲良くしましょ、鏡美ちゃん?」

 

ファランクスの真琴、鏡美に近づこうとする。
鏡美、怒ったまま激しい調子で

 

鏡美「下の名前で呼ばないで!馴れ馴れしいわ!」

 

ファランクスの真琴、怒りが表情に出る。しかしすぐに冷静になり、鏡美に近づかずに、横歩きで教室のドアへ向かいながら、

 

ファランクスの真琴「その子はね、どうせ現実世界では生きていけないのよ」

 

ファランクスの真琴、真琴のほうを向いて

 

ファランクスの真琴「代わってほしかったらいつでもいってね」

 

ファランクスの真琴、教室から出て行く。
鏡美、モップを下ろして、投げ出し、真琴に駆け寄る。真琴は座っているので、鏡美は膝立ちで座る。

 

鏡美「真琴!」
真琴「鏡美ちゃん、どうして?」
鏡美「よくわからないけど、気がついたら学校にいて、自分そっくりの子に追いかけられて……とにかく真琴が無事でよかった。怪我とかしてない?」
真琴「私は……平気だよ……」

 

真琴、気まずそうに鏡美から目をそらす。
鏡美、怪訝な表情で

 

鏡美「あいつに何かいわれたの?」

 

真琴、うつむいたまま取り乱して泣き出す。

 

真琴「鏡美ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい!」
鏡美「な、なんで謝るの?(驚いて)」
真琴「学校の帰り、ひどいこといって……」

 

鏡美、優しく

 

鏡美「もう気にしてないから」
真琴「鏡美ちゃんと友達でいられなくなるかと思って……」
鏡美「そんなわけないでしょ(優しく)……私のほうこそ、真琴がどんなに苦しんでるかわかってやれなくて……ごめん」
真琴「鏡美ちゃんは悪くないよ!悪いのは私だから(やや大きな声で)」

 

鏡美、真剣な表情で

 

鏡美「私は真琴が一番の友達だと思ってるよ」

 

鏡美、自分のスカートのポケットからハンカチを取り出して、真琴の涙を拭いてやる。
真琴と鏡美、崩した正座座りで教室後ろのロッカーに並んでもたれかかって座っている。
真琴、腕の中に顎をうずめて

 

真琴「私、鏡美ちゃんの邪魔になっているかもしれないって思って……」
鏡美「逆だよ、真琴がいてくれないと私、寂しくて……真琴がそんなに悩んでいたなんて知らなかったよ」

 

鏡美、ひざ立ちで真琴に向き直って

 

鏡美「いじめっ子には2人で立ち向かおう!」
真琴「鏡美ちゃんまでいじめられたら嫌だよ」
鏡美「それは私も同じだから。ね、いっしょにがんばろう?」

 

真琴、鏡美から顔をそらして、不安な表情で

 

真琴「うん……」

 

鏡美、真琴の表情を見てやや不安な表情になる。
鏡美、気を取り直して、立ち上がって

 

鏡美「ここから出よう!これ見て、このあたりの地図だよ、きっと」

 

鏡美と真琴、つけてあるパソコンの前に立つ。
パソコンの画面。ファランクスのパソコン画面。パソコン画面はいつもの画面とは異なり、マスター用の画面。
マスター画面にはファランクスの地図が映し出されている。地図のほかには、真琴、鏡美、夢見のログイン状況とその詳細(どこにいるかがわかる)、ボイスチャットとその履歴の欄がある。
ログイン状況では、真琴、鏡美、夢見の3人ともログインしている、と表示されている。
鏡美、マウスを握って動かす。
パソコン画面。学校周辺の地図が表示される。南川公園の展望台のところに「EXIT」という文字がある。文字にカーソルを合わせると「ファランクスの世界から出る」と出る。
鏡美、真琴の顔を見て

 

鏡美「南川公園の展望台!きっとここから出られるんだよ、行こう!」

 

真琴、鏡美の顔を見てうなずく。鏡美、行こうとするが、真琴はパソコン画面を見たまま。真琴、突然気づいたようにパソコンの画面を指差して

 

真琴「あ!ねえ、これ」

 

鏡美振り返ってパソコン画面を見る。パソコン画面。夢見の「ログイン状況」のところ、「ログインしている」になっている。

 

真琴「夢見ちゃんもログインしているってことは……」

 

カーソルを真琴の欄の上に合わせると「パソコン教室」と表示される。鏡美の欄の上にあわせると、同様に「パソコン教室」と出る。
次にカーソルを夢見の「ログイン状況」にカーソルを載せると、「3年1組教室」と表示される。
真琴と鏡美の顔。

 

真琴「夢見ちゃん、もしかして今、3年1組の教室にいるんじゃない?」
鏡美「だったら南川公園に行く前に夢見を助けに行かないと!」
真琴「うん!」

 

鏡美の顔。

 

鏡美「夢見もこの世界にいるもう一人の自分に追いかけられてるかもしれないし、早くしないと……ねえ真琴?」

 

鏡美、真琴のほうを振り向く。
真琴の顔、不審に思う表情。

 

真琴「これ、なんだろ?」

 

パソコン画面、「ボイスチャットの履歴」という欄があり、履歴一覧の参加者に「真琴と夢見」というのがある。そこに「三角が右向きの印(音楽を再生するときのマーク)」があり、それを拡大。カーソルでそれをクリックすると、過去のファランクスの真琴と夢見のボイスチャットが再生される。

 

ファランクスの真琴「河南夢見から通行証を取り上げなさい。そうすればあなたが河南夢見に代わって現実世界に出られるようになるから」

 

それを聞いて、鏡美が怪訝な表情で振り向き、パソコン画面を覗き込む。パソコン画面。

 

ファランクスの夢見「うん、わかった。どうしたらいい?」
ファランクスの真琴「河南夢見になりすまして、現実世界の水野真琴や川崎鏡美に近づいて、河南夢見がどこにいるか聞き出すのよ」
ファランクスの夢見「うん」
ファランクスの真琴「あなたも水野真琴を見つけたら私に教えて。いい?ここはゲームの世界なの。いつかなくなるわ。私たちが生き延びるためには、現実世界に出るしかないの。でも現実世界には私たちのコピーがいるから、彼女たちをなんとかして現実世界から消さないと。そのためには……」
ファランクスの夢見「通行証を取り上げてしまえばいいんだね?そうすればあの子達をファランクスの世界に閉じ込めることができる?」
ファランクスの真琴「そうよ。ただし死なせてはだめ。私たちは彼女たちのコピーなんだから、彼女たちが死んだら私たちも消えてしまうから」
ファランクスの夢見「わかった。気をつける」
ファランクスの真琴「それにまあ、いざとなったら……ふふふ、ギリギリ生きてる状態でもいいのよ。この世界に閉じ込めさえすれば」

 

真琴と鏡美の顔。

 

真琴「だから現実世界に出たがってたんだ……」
鏡美「行こう!」

 

真琴と鏡美、互いを見てうなずく。そして走って教室を出ようとする。すると、一瞬教室が激しく揺れる。

 

真琴「うあっ!」
鏡美「なに!?」

 

真琴と鏡美、立っていられなくなり、その場に座り込む。
ファランクスの真琴の声がする。放送スピーカーから声が出ている。スピーカーを拡大。

 

ファランクスの真琴「逃がしはしないわ!」

 

真琴と鏡美、スピーカーのほうを見る。

 

ファランクスの真琴「ファランクスのシステムを操作して、この世界が壊れるようにしたわ」
鏡美「壊れるって、どういうこと!?」
ファランクスの真琴「物理的にこの世界を壊してしまえば、出口もふさがって出られなくなるからね。もってあと1時間くらいかしら?」
真琴「1時間……」

 

真琴、時計を見る。時計は4時15分。

 

ファランクスの真琴「地震で死にたくなかったら、通行証を渡しなさい。さっきもいったけど、ここはファランクスと現実世界の境界のようなところなの。通行証を渡せば、安全なファランクスの世界に正式に招待してあげるわ」
鏡美「誰があんたなんかに!」
ファランクスの真琴「あっそ。じゃあがれきの中に埋もれてなさい!」

 

激しい地震が起きる。教室全体が激しく揺れ、真琴、しりもちをつく。鏡美はひざ立ち。教室の机と椅子が10個程度まとまって真琴のところへ滑って向かってくる。机の上にはパソコンが乗っている。
鏡美、はっと気がついて、真琴へ飛び寄る。

 

鏡美「真琴、危ない!」

 

鏡美、真琴に抱きつきながら机と椅子の群から避けさせる。机と椅子の群が滑って、教室後ろの壁へ突っ込んでいく。
鏡美と真琴、そのまま滑って教室の壁に突っ込む。鏡美、真琴が激突するのを守るため、自分を盾にして、背中から後頭部あたりを壁に打ち付ける。その衝撃で、真琴も鏡美も気絶してしまう。
教室の掲示板などは外れて落下し、梁にひびが入ったり30度くらい折れたりする。床が割れ、ところどころ穴が開く。窓ガラスがほとんど割れ、天井の電灯も落下して割れる。天井にもひびが入ったり割れたりしている。
しばらくして、地震が治まっている。教室が大きく崩れている。
真琴、目を覚ます。鏡美が自分をかばうように、抱き合う形で倒れており、頭から少し出血している。
真琴、鏡美の肩をゆすって

 

真琴「鏡美ちゃん!鏡美ちゃん!」

 

鏡美、反応しない。真琴、すごく心配な表情。泣きそう。
真琴、周囲をきょろきょろ見る。真琴、時計を見る。時計を見ると、4時25分になっている。
真琴、真剣な表情になり、

 

真琴「早く脱出しないと!」

 

真琴、鏡美を背負って歩き出す。教室を出る。3-1の教室へ向かう。
パソコン教室を出た直後、廊下もあちこち崩れている。窓ガラスが割れて落ちている。ドアも廊下へ倒れている。月明かりで何とか見えるが、暗くて先が見えにくい。あちこち割れたり落ちたりしている。
図書室の前では天井で横になっている梁が崩れて斜めになっている。斜めになっている隙間があり、真琴、鏡美を背負いながら、四つんばいになってくぐりぬける。
階段では手すりが折れて階段に倒れている。階段が折れて進めない箇所がある。
真琴、3-1の教室のドアの前に来る。ドアが倒れている。ドアをくぐると、教室は机と椅子が後方も一箇所に集まって、瓦礫の山のようになっている。電灯が割れ、いくつかは落ちている。掲示板が落ちている。窓は割れ、枠ごと落ちている。床や天井、梁まで割れたりひびが入っている。
教室のやや後ろあたり、窓際の床に、夢見が仰向けで倒れている。意識がない。
真琴、夢見に気づいて叫ぶ。

 

真琴「夢見ちゃん!」

 

夢見、反応がない。

 

真琴「夢見ちゃん!夢見ちゃん!」

 

真琴、鏡美を教室ドアのすぐ横の壁に下ろし、壁にもたれさせる。
夢見、腕や脚に擦り傷がある。顔にもあざや汚れがある。
真琴、走って夢見に近づき、夢見を抱きかかえようとするが、体が透けて触れない。
真琴、何事かと驚く。夢見の体が少し光っている。真琴、不安な表情になる。
真琴は膝立ち。

 

真琴「なんで?これって、まさか……夢見ちゃん!起きて、夢見ちゃん!」

 

夢見、少しずつ目を覚ます。

 

夢見「真琴……ちゃん?」

 

夢見、ゆっくり起き上がる。

 

夢見「あれ?さっき教室にいたら突然地震が起こって……」

 

真琴、少し安心する表情。真琴、夢見に手を伸ばし、夢見の手に触れようとするが、透けて触れない。

 

真琴「なんで?」

 

夢見、真琴から顔を背け、気まずそうな表情。

 

真琴「夢見ちゃん?」
夢見「私、ファランクスの人間になるために、この世界にいるもう一人の自分に……通行証、渡したの。もうすぐ正式にファランクスの人間になるから、真琴ちゃんに触れないんだと思う」

 

真琴、ショックを受けて、激しく動揺する。
夢見の体、少しずつ透明になってきている。

 

真琴「夢見ちゃんと二度と会えなくなるのは嫌だよ!」

 

夢見、力なく微笑して

 

夢見「大丈夫だよ。現実世界に私の代わりの子がいるから。悲しまないで」
真琴「あんなの夢見ちゃんじゃない!なんで、こんなこと……」

 

真琴、両手で顔を覆って泣き出す。
夢見、うつむいて元気のない表情。

 

夢見「あのね、私の病気、治るっていったけど、嘘なの。お医者さんは、20歳まで生きていられるかどうかわからないって……」
真琴「!!」

 

真琴、顔を上げてはっと気がついたような表情。
夢見、立ち上がって、教室を走り回り、最後にジャンプする。夢見、うれしそうに

 

夢見「ほら、こんなに走ってもちっとも息切れしないんだよ!こっちの世界では病気、治ってるんだよ」

 

真琴、驚く。少しして暗い表情になり、少しうつむいてしばらくそのまましてから

 

真琴「ファランクスの世界は、いつかなくなるって……」

 

夢見、座って

 

夢見「うん、知ってる……でもきっと、現実世界にいてもあまり変わらないよ」

 

2人とも気まずい表情で、少しうつむき、目を合わせない。

 

真琴「夢見ちゃんと会えなくなるのはつらいけど、そのほうがいいんだよね、きっと」

 

夢見、申し訳なさそうな表情で、少ししてから

 

夢見「私、真琴ちゃんと鏡美ちゃんと一緒にいるときが一番楽しいな……」

 

真琴、寂しそうに顔を上げて夢見を見る。何かいおうとするが、言えずに言葉を飲み込む。
夢見、少しうつむいたまま、しばらくして、急に顔を上げて必死な様子で

 

夢見「真琴ちゃん!私やっぱり元の世界に……!」

 

夢見、真琴に抱きつこうとする。
真琴、はっと顔を上げて、夢見を抱きしめようとするが、夢見は光の粒のようになって消えてしまう。
真琴、悔しい表情で、何もない空間を抱きしめる(互いの二の腕を手でつかむようなポーズ。少し前かがみで。少し涙が出る)

 

真琴「くっ……!」

 

しばらくそのまま。
教室が少し崩れる。真琴、はっとしてそれを見て、立ち上がって、教室を出る。まだ涙が出ていて、耐えるような表情。

 

真琴、鏡美を見る。鏡美はまだ気絶したまま。
真琴、鏡美を急いで背負って、歩き出す。
真琴、音楽室前の階段を半階下りたところで、階段の窓が枠ごと落ちていて、それにつまづいて転ぶ。暗くてほとんど前が見えない。
転ぶとき、鏡美が後頭部を床に激しく打ちそうになるので、真琴は鏡美をかばうように転ぶ。鏡美は頭を打たずにすんだが、真琴は右肩を激しく床に打ち付ける。
同時に真琴、ガラスで頬と膝を切り、出血する。

 

真琴「うああっ!」

 

真琴、ひどい痛みで右肩を左手で押さえ、少しの間うずくまる。押さえながら立ち上がり、鏡美を背負いなおす。背負ったときに痛みで声が出る。少しふらつく。歯を食いしばって、苦しそうな表情。

 

真琴「うっ……うっ!」

 

真琴、歩き出す。
真琴、玄関を出て、周囲を確認する。外もあちこち崩れている。日の出が近くなっており、校内よりもほんの少し明るいため、道が確認できる。
真琴、歩き出す。校門を出る。さっきよりも明るくなる。ただし電灯など、人工光はいっさいない。人気がない。
真琴、川沿いを歩く。日の出が迫っており、東の空は朝焼けで明るくなっている。真琴、疲労してかなりしんどそうに歩く、表情もつらそう。
あちこちで、空間にひびが入っていたり(中身は真っ黒)、地割れがあったり、不明な黒い塊があったりする。時間が経つほど増えている。

 

真琴、南川公園に到着する。駐車場を渡った先に展望台がある。
展望台でない奥のほうは行き止まりになっており、壁になっている。壁に背景の画像が貼り付けてあり、それっぽく見せており、実はここが狭い空間だとわかる。
真琴、それを見て悔しそうな表情をする。少しして真琴、気がついたように展望台のほうを見て、疑問の表情をする。展望台に3メートルくらいの楕円形の裂けた空間があり、裂け目の中がうっすら光っていて、少しまぶしい。
真琴、真剣な表情に戻り、展望台に向かう。

 

真琴、展望台に到着し、裂け目の中を見ると、何もない空間が広がっていて、20メートルくらい向こうに同じような出口が見える。出口は結構大きい。
ただし裂け目の中は、変なカオスな模様のうねうねしたもので満たされていて、それが見えるのだが、向こうの空間も半分透けて見える。つまり、空間の中に向こうの世界の夜景が見える。空間に入ると、入り口側は電灯のない夜景が、出口側は電灯の明るい夜景が見える。
真琴、出口の向こうを目で確認すると、こちらの展望台と同じ場所であるとわかり、町の夜景が見える(コンビナートの明かりが見える)

 

鏡美がゆっくり目を覚ます。まだ苦しそうな表情。

 

鏡美「ん……」

 

真琴、鏡美のほうを振り向き、

 

真琴「鏡美ちゃん?」
鏡美「真琴……ここは?南川公園?(周囲を見て)」

 

真琴、鏡美を下ろす。鏡美、その場に立つ。真琴、鏡美を下ろすとき、右肩を痛そうに押さえる。それを鏡美が見る。

 

真琴「うっ!」
鏡美「真琴、怪我してるの?」
真琴「平気。それより……」

 

真琴、出口を見る。まだ右肩を押さえてる。

 

真琴「それ、出口だよ!向こうに町の明かりが見えたから。鏡美ちゃん、入って!」
鏡美「これが……あ!夢見は?」

 

真琴、悲しい顔になる。まだ右肩を押さえてるので、痛そうでもある。

 

真琴「夢見ちゃんは通行証を渡しちゃったから、向こうの世界に……」

 

鏡美、青ざめる。真琴も心苦しい。まだ痛がっている。

 

鏡美「そんな……夢見を探さないと!」
真琴「夢見ちゃんはもういないの。目の前で消えてしまって……それに、探してる時間もないよ」

 

周辺の物体が、ゆがんだり揺れたり、消滅したりしている。
鏡美、首を横に振って

 

鏡美「だめ、そんなこと……」

 

真琴、必死な表情で叫ぶ。

 

真琴「お願い早く行って!鏡美ちゃんまでいなくなるの、嫌だよ!」

 

鏡美、苦しい表情で、出口の中に少し入る。中を手で探ると、水の中にいるような感じだが、息はできる。
鏡美、真琴に手を差し伸べて

 

鏡美「真琴!」

 

真琴、鏡美と片手だけ手をつないで(真琴は左手、鏡美は右手)、中に入る。そのまま泳ぐようにして出口へ向かう。
鏡美と真琴、出口に到着する。鏡美、出口の枠に左手と左足をかけ、顔だけ外に出す。現実世界の南川公園と、夜景が見える。
鏡美、うれしい表情。
鏡美、出口から出る。そのまま両手で真琴の左手を引いて、真琴も出そうとする。

 

鏡美「真琴、肩、大丈夫?」
真琴「平気……はっ!」

 

真琴、ぞっとする。
真琴、自分の下半身を見る。ファランクスの真琴が真琴の腰にしがみついている。
ファランクスの真琴、顔色が悪く、やつれている。しかし目を見開いている。

 

ファランクスの真琴「やっと見つけたわ」

 

鏡美、それに気づき、焦った調子で

 

鏡美「真琴!そいつ振り払って!蹴飛ばすのよ!」
ファランクスの真琴、疲れて青ざめた様子で、しゃべり方にもあまり元気がない。

 

ファランクスの真琴「置いていくなんてひどいじゃない」

 

真琴、ファランクスの真琴の顔を見て、疑問に思っていたことが確信に変わる表情。

 

鏡美「真琴!……え!?」

 

真琴、鏡美を手で制止する。真琴、微笑して鏡美のほうを振り向く(苦しそうな表情ではなく、本当にいつもの笑顔で)

 

真琴「鏡美ちゃん、先に行って。私、必ず戻るから」

 

鏡美、怪訝な表情で

 

鏡美「なに……いってるの?」

 

真琴、ファランクスの真琴へ向き直り、真剣な表情になり、

 

真琴「決着を、つけましょう」

 

ファランクスの真琴、ニヤリと笑う。
真琴、ファランクスの真琴を抱きかかえ、出口の枠を蹴って空間の下へ落ちる。

 

鏡美「真琴!真琴ーっ!」

 

真琴とファランクスの真琴、空間の中を落ちているが、落下に空気抵抗のようなものがあり、少しずつ落下速度が落ちる。
真琴とファランクスの真琴、互いに両肩をつかんで向き合った状態。
ファランクスの真琴、ニヤリとした表情で、

 

ファランクスの真琴「帰ろうとしてたみたいだけど、考え直したほうがいいわ。ファランクスに戻るには今しかないの」
真琴「ファランクスに行ったほうがいい人もいるかもしれないけど……私は行かない(少し元気なく)」
ファランクスの真琴「またいじめられるわよ」

 

真琴、動揺する。ファランクスの真琴、さらにニヤリと喜んで

 

ファランクスの真琴「無理やりトイレ掃除させられたこと、覚えてるわよね?今度はもっとひどいことさせられるわ。耐えられないでしょ?」

 

真琴、苦い表情。少しうつむいて歯を食いしばる。

 

ファランクスの真琴「いっておくけど、転校しても卒業しても変わらないからね?あんたみたいなのは……」

 

真琴、真剣な表情で顔を上げる。ファランクスの真琴の言葉をさえぎるように

 

真琴「どこへ行っても同じ。この先ずっと馬鹿にされ、いじめられ続けるわ」

 

ファランクスの真琴、一瞬驚いて、しかしニヤリと笑って

 

ファランクスの真琴「わかってるんじゃないの。だったら……」
真琴「でも一つだけいい方法があるわ」
ファランクスの真琴「いい方法?なに?誰かに助けてもらう?それともファランクスのような世界がほかにどこかにあるの?」
真琴「あなたは機械だから、きっとこんなこといってもわからないだろうけど……!」
ファランクスの真琴「(怒って)なによ!私はすべての能力があんたより上なのよ?あんたにできて私にできないことなんて……」

 

真琴、ファランクスの真琴の両肩を強くつかんで、少ししてから強い調子で

 

真琴「私が変わればいいのよ」

 

ファランクスの真琴、驚いて、馬鹿にした様子で、必死な様子で、早口で

 

ファランクスの真琴「変わる?今まで何度そうしようとした?何度も何度も失敗しては挑戦し、結局すべて失敗したじゃないの!今度急に成功するとでも思ってんの?現実は甘くないの!できるわけないでしょ!」

 

ファランクスの真琴、真琴に顔を近づけ、見せ付けるように、ゆっくりと、ささやくように

 

ファランクスの真琴「心の底では、私に代わってほしいって思ってるんでしょ?」

 

真琴も負けじとファランクスの真琴をにらみつけて

 

真琴「そう思ってないっていう証拠、見せてあげる」

 

ファランクスの真琴、目を見開き、ハイテンションで両手を一度上げ(真琴の両手を振り払い)、真琴の両肩に叩きつけながら

 

ファランクスの真琴「証拠?そんなもんがあるなら、見せてみなさいよ!(よ!で両肩に叩きつける)」

 

ファランクスの真琴の左手が、一瞬光の粒に変化し、粒子が散る。左手は半透明になっている。
ファランクスの真琴、驚いて叫ぶ。

 

ファランクスの真琴「う……うわああっ!」

 

ファランクスの真琴、半透明になった左腕を右手で押さえて、痛そうな表情。右目をつむって、歯を食いしばっている。
真琴、冷静な表情。

 

真琴「あのとき……」

 

回想シーン、パソコン教室で真琴が「来ないで!」と叫んだときにファランクスの真琴がひるんだときのシーン。
真琴が「来ないで!」と叫ぶとファランクスの真琴がひるむ場合と、ひるまない場合があった。そのシーンの回想。

 

真琴「あなたは大声に弱いんだと思ったの。でも違う。声とか音とか、そんなのじゃなかったの。私が心の底から現実世界に戻りたいって思ったときに、あなたは苦しんでたわ。あなたが今ひどくやつれているのは、私が迷ってないから」

 

ファランクスの真琴、はっとして呆然と真琴を見上げる。

 

真琴「私の……誰かに代わってほしいっていう気持ちが、あなたを生み出したのよ。でも今はそう思ってない。だからあなたは、もうすぐ消えてなくなる」

 

ファランクスの真琴、真琴の両肩をつかんで、焦って早口で、必死な様子で

 

ファランクスの真琴「待って!冷静になりなさいよ!現実は甘くないのよ?必ず失敗するわ!考え直しなさいよ!」

 

真琴、自分の両手をファランクスの真琴の両手に優しく乗せて

 

真琴「失敗してもいいの。それでも……私は、戻る」

 

ファランクスの真琴、全身が光の粒になって消えていく。
ファランクスの真琴、無気力な表情になり、呆然としながら

 

ファランクスの真琴「なんでよ……ファランクスは、あなたの求めていた世界じゃなかったの?」

 

ファランクスの真琴、真琴の両肩から手をはずして、光の粒になって消える。
真琴、ファランクスの真琴の手を、消えるまでずっと握っている。
真琴、元気のない、複雑な表情。悲しい表情で、空間の中を上っていく(泳いではいないが、浮力で浮かぶような感じで上っていく)

 

学校、朝8時ごろ。晴れ。音楽室前。音楽室から3-2へ向かっている。
鏡美、うつむいていて、元気がない。ゆっくり歩いている。
ホール前の廊下で、3-4側から新城と一ノ瀬がやってくるが、鏡美はうつむいていたので気づかない。

 

一ノ瀬「おい」

 

鏡美、はっと気づいて顔を上げる。見ると、新城と一ノ瀬が、凶悪な表情でにらんでいる。
新城は腕を組んでいる。

 

一ノ瀬「ちょっと付き合えよ」

 

鏡美、怪訝な表情で

 

鏡美「あなたたちは……」

 

一ノ瀬、鏡美の腕を引っ張って、ホール前の廊下に連れ込む。鏡美、痛がる。
鏡美、怒って

 

鏡美「なにすんのよ!」

 

一ノ瀬、新城、不機嫌な表情で鏡美をにらみつけて

 

一ノ瀬「ムカつくんだよ、お前!」
鏡美「突然なんなの?」

 

一ノ瀬、右手で鏡美の右肩を押さえつけ、壁に押し付ける。鏡美、痛がって

 

鏡美「うっ!」

 

鏡美、恐怖する。2人から顔を背ける。新城、鏡美をにらみつけながら迫ってくる。

 

新城「ちょっと頭がいいからって、いい気になるんじゃねぇぞ」
鏡美「いい気になってなんか……」

 

一ノ瀬、さらに不機嫌になって

 

一ノ瀬「そういうすましたところがムカつくんだよ!」

 

一ノ瀬、右の手のひらで鏡美をなぐろうとする。
鏡美、怖くて目をつむる。
誰かが一ノ瀬の右手をつかんで、止める。
鏡美、新城、一ノ瀬、一ノ瀬の手をつかんだ者の方を見ると、真琴がいる。
真琴、怒っているが冷静な表情。
一ノ瀬、驚いている。

 

一ノ瀬「なにしてんだ?」

 

真琴、一ノ瀬を無視して鏡美の手を引いて、

 

真琴「行こう、鏡美ちゃん」
鏡美「え?」

 

真琴に手を引かれて鏡美、ついていく。
一ノ瀬、怒って真琴と鏡美の前に走って回りこむ。

 

一ノ瀬「どこ行くんだよ」

 

真琴、表情を変えずに、

 

真琴「何か用なの?」
一ノ瀬「なにかっこつけてんだ?」
真琴「じゃまなの」
一ノ瀬「お前!」

 

一ノ瀬、激怒して真琴の頬を平手で殴る。殴られたところが赤くなる。
鏡美、驚いて、弱気に

 

鏡美「真琴!」

 

真琴、殴られた瞬間に一瞬ひるむが、すぐにもとの冷静な表情に戻る。

 

真琴「聞こえないの?じゃまだっていってるの」

 

一ノ瀬、左手で真琴の胸ぐらをつかんで、大声で

 

一ノ瀬「殺すぞこらぁ!」

 

真琴、あきれた表情で

 

真琴「ふーん、殺せば?」
一ノ瀬「ああ!?」
真琴「殺せばいいっていってるの」
一ノ瀬「本当に殺すぞ!こらぁ!」
真琴「だから殺せっていってるでしょ?でもその後どうなるかわかってるの?」
一ノ瀬「あ?」

 

周囲が騒がしい。一ノ瀬、それに気づいて周囲を振り返ると、周りに生徒たち(瑞穂、由香里、女生徒A,B,C,D)が集まっていて、不審な目で見ている。
新城、まずいといった表情で、周囲を見てあせる。組んでいた腕をほどく。
一ノ瀬、まずいといった表情で、真琴から手を離す。
真琴、大声で、少しゆっくりと

 

真琴「どうしたの?私を殺すんじゃなかったの?」

 

一ノ瀬、新城、さらにあせってびびる。
瑞穂と由香里、一ノ瀬と新城を見ながら、互いに顔を合わせて

 

瑞穂「殺すって?」
由香里「あれ、いじめじゃないの?」

 

真琴、すごく困った表情で、瑞穂と由香里に小走りで近づき、

 

真琴「私、ずっと前からあの二人にいじめられてたんです。どうしたらいいのかわからなくて……」

 

瑞穂と由香里、困った表情で顔を見合わせ、瑞穂が真琴のほうを振り向いて、心配した様子で、

 

瑞穂「先生呼んでこようか?」

 

それを聞いて新城、驚いて非常にあせり、一ノ瀬の腕をつかんで引っ張り

 

新城「一ノ瀬!」

 

一ノ瀬、驚く。新城と一ノ瀬、階段の方向へ走って逃げ出す。
真琴、それを見て走って追いかけ、後ろから二人の肩をつかんで止める。
新城と一ノ瀬、驚いて振り向く。

 

真琴「今度私たちに近づいたら、大声で助けを呼ぶからね」
新城「わかったから向こうへ行けよ!」

 

新城と一ノ瀬、そのまま走って階段を下りていく。
真琴、鏡美のところへ行き、笑顔で

 

真琴「もう大丈夫だよ」

 

鏡美、呆然としている。

 

真琴「鏡美ちゃんのいったとおり、強くなれたよ」

 

鏡美、はっとする。

 

真琴「もう一人でも大丈夫だから」

 

鏡美、やわらかく微笑して

 

鏡美「うん」

 

チャイムが鳴る。

 

鏡美「行こっか」
真琴「うん」

 

真琴と鏡美、教室へ行く。鏡美は3-2へ向かう、真琴は3-1で止まる。
しばらくして、真琴、赤くなった自分の頬を抑えて、少し憂鬱な表情で

 

真琴「こんな簡単なことだったのに、どうして今までできなかったんだろう……」

 

夕方、南川公園の展望台。午後5時半ごろ。晴れ。夕焼けしている。街は明かりがついている。
真琴と鏡美、学校の帰り。

 

真琴、ファランクスの出口があったところを見ながら

 

真琴「夢見ちゃん、元気にしてるよね?(少し心配な様子で)」
鏡美「うん(少し微笑して)」
真琴「私はファランクスには行かなかったけど……」

 

真琴、町の夜景のほうへ振り向いて

 

真琴「もしファランクスが、閉じ込められたりしなくて、本当に安全なところなら……ああいう世界を必要としている人たちも、いるんじゃないかな」
鏡美「うん……(複雑な表情)」
真琴「そういう人たちのために、何かしてあげたいな。いつかそんな世界ができたら、私……」

 

///////////
エンディング

 

パソコンの画面。
ファランクスの画面から、クロスフェードで「スターライト」という名前のオンラインゲームになる。
カメラが画面の中へ入り、以下はファランクスの画面と同じ。システム画面(通行証を選択する画面)、学校の玄関、カウンセリングルームと移動。ゲームの中では午後8時ごろで、夜。
大人になった真琴と学校の女子生徒が座って話をしている。真琴は白衣を着ている。白衣の下にはネクタイ含むスーツを着ている。下はタイトスカート。
女生徒、悲しい表情で泣きながら何かを話している。
真琴、女生徒の両手を、自分の両手の上に、自分の両手を乗せて、優しく何かしゃべる。
女生徒、何度もうなずいて、安心した表情になる。涙も止まる。
女生徒、お礼をしてカウンセリングルームから出る。
真琴、女生徒を見送る。真琴の机を見ると、真琴、鏡美、夢見の3人が写っている写真が写真立てに立ててある。真琴、少し物悲しそうに、しばらく写真を眺めている。
その後、部屋にあるパソコンを見ると、地図が出て、3-1の教室にチェックが入っている。真琴、不思議に思って画面を見て、部屋を出て、3-1の教室へ行く。
教室の真ん中あたりで、光の粒が集まっている。真琴、不思議に思ってみていると、それが夢見に変わる。
夢見、呆然として、真琴のほうを見る。
真琴、夢見に駆け寄って、抱きしめる。

 

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終わり


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