新・十二支その2

神「干支とは関係ないが、海中生物でもレースをやることにした……」

 

神「この海5000メートルのレースだッ!ルールは陸上の時と同様、いかなる方法を使ってもよしッ!とにかく早い者勝ちだッ!何か質問はあるか?」

 

出場者であるサメ(ホオジロザメ)、クジラ、マグロ、トビウオ、コバンザメの5匹がスタートラインに着いた。

 

サメ「よおクジラ……おめぇの肉ってよォ……う・ま・そ・う・だ・よ・な?」

 

クジラ「……」

 

サメ「なあマグロ、おめぇもそう思うだろ?クジラの肉ってどんな味がすんのかなぁ?きっとうめぇんだろうなぁ?」

 

マグロ「あ、ああ……そうだろうな……(こいつ、いきなりクジラを殺(や)る気だ……)」

 

マグロ「絶対速度ではサメとオレはほぼ互角……ほかのヤツらはオレの相手じゃねぇな……こいつがクジラを食ってる間にオレが猛スタートを切ればオレが優勝間違いなしだぜ!この、食うことしか頭に無いバカ魚が……!」

 

神「準備はいいか?位置について、よーい……」

 

神「ドン!」

 

サメはいきなりマグロに食いついた。

 

マグロ「な……なんだァーーッ!?てめぇッ!クジラを殺るんじゃなかったのかッ!?」

 

サメ「フェイントだッ!気づけボケッ!てめぇさえ始末すればオレの優勝だッ!……それになぁ……てめぇよォ……」

 

サメ「さっきオレのこと、『脳内まで筋肉でできてるアホ』だとか、『食うことしか頭にねぇバカ魚』だとか思いやがっただろォ!?そういうことをいうヤツは絶ェ〜対ィィにィ〜……許さねぇ……ブッ殺してやるぜェ……」

 

マグロ「い、言ってねぇッ!前のほうは言ってねぇぜッ!」

 

サメ「わかっんてんだよ」

 

マグロ「……え?」

 

サメ「オレは後ろのほうを言ったかどうか確認したかっただけだ。このオレが『食うことしか頭にねぇアホ魚』だとォ〜!?」

 

マグロ「いや、アホ魚じゃなくてバカ魚……」

 

サメ「やっぱりてめえはブッ殺すッ!」

 

マグロはサメに食べられた。

 

クジラは順調なスタートを切ったが、コバンザメがクジラの腹にくっついていた。

 

コバンザメ「へへへ……このままてめぇにこびりついて、ゴール直前にてめぇをブチ抜きゃオレの優勝ってわけだ」

 

クジラ「どこにでもいるもんだな……自分は努力せずに、最後のおいしいところだけ取ろうってヤツが……」

 

コバンザメ「そいつは聞き捨てならねぇなァ……いいか?オレのようなちっぽけな魚が、てめぇのようなデカい魚にくっつくのは相当リスクのあることなんだぜ?近づくだけでも食われるかもしれねぇ……」

 

クジラ「なるほど……お前もお前なりに覚悟を決めてかかっているってわけか」

 

コバンザメ「そうだッ!勝負ってのはなァ……『覚悟』を決めたヤツだけが生き残るんだッ!『覚悟』ができてねぇヘッポコ野郎は、この弱肉強食の自然界で生き残ることはできねぇんだぜッ!」

 

クジラ「なるほどな……お前の言うことはもっともだ。じゃあつまりオレは……お前よりも『覚悟ができている』ってとこを見せなきゃ勝てないってことだな?」

 

クジラは突然進行方向を変え、深海へ向かい、真下へ下降しだした。
クジラとコバンザメにかかっている水圧がどんどん上昇していく。

 

コバンザメ「うおおッ!?てめぇッ、何考えてやがる!?」

 

クジラ「こうして水圧の高いところに沈んでいきゃ、そのうち苦しくなってお前がオレから剥がれるんじゃないかって思ったんでな」

 

コバンザメ「なにィィ!?正気か?てめぇも死ぬぞ!」

 

クジラ「さあ、我慢くらべといこうぜ……オレとお前、どっちが先にくたばるか……片方は無事ゴールへ、もう片方は深海魚のエサになるってわけだ」

 

コバンザメ「こいつ……キレてんのかァ?だがオレもコバンザメとしての意地がある!てめぇがくたばるまで張り付いてやるぜ!」

 

そのころ、一人独走していたトビウオと、それを追いかけるサメが首位争いをしていた。

 

サメ「マグロのヤツはオレが始末してやったし、クジラとコバンザメはどっか行っちまったし、あとはてめぇを始末すりゃオレの優勝が確定するってわけだ!このピョンピョン海面を飛び跳ねるだけの能無しがァ!」

 

トビウオ「能無し……だと?……お前がオレのことをどう思おうが勝手だが、俺たちのこの飛び跳ねる能力ってのは、無意味に備わっているわけじゃない。この厳しい自然界で生き残るために必要だったから身についた能力なんだ」

 

サメ「人間に遊泳ショーでも見せるためにかァ?そうやって人間に媚びることがてめぇらの生き残る戦術ってわけか!?情けねェなァ!」

 

トビウオ「言ってもわかんねぇようだから今から見せてやるよ。もう準備はできてるんだ」

 

サメ「見せるだと?いいや無理だねッ!なぜなら、今からお前はオレに食われるからだッ!オレの腹の中で遊泳ショーでもやってろォ!」

 

トビウオ「ここがどこだかわからないのか?オレを追うのに夢中になってて気づかなかったのか?ここがオレたちトビウオのテリトリーだってことを」

 

サメ「な、なんだ?急に流れが速くなって……ま、まさかここは……」

 

渦潮地帯!

 

トビウオ「オレたちは海面上を飛び跳ね続けることによって、こんなところでも水流の影響を最小限に抑えることができるんだ。だがお前はどうかな?その巨体を水流に逆らえさせるには相当なパワーが必要だ。オレのまねをして海面上を飛び跳ねようとしても、お前の体はそういう風にできていない。すぐにくたばるぜ?」

 

サメ「うおおッ?す、吸い込まれる!バカなッ!お、オレが負けるだとッ!オレは海の王者だぞ!このオレがこんなちっぽけなカスにィ!」

 

トビウオ「ちっこいからって、なめんなよ」

 

サメ「お……うごォォォーーーーーーッッ!!」

 

サメは渦に飲み込まれ、深海へ沈んでいった。
いっぽう、クジラとコバンザメはすでに海のかなり深い地点にまで到達していた。

 

コバンザメ「う……ご……あボッ!」

 

コバンザメは気を失い、クジラから剥がれ落ち、深海の底へ沈んでいった。

 

クジラ「やっと剥がれたか……だが……ちと深いところまで来すぎたようだ……体が持ちあがらねぇ……」

 

クジラは上昇しようとするが、体が重くて持ち上がらない。

 

クジラ「だめだ……意識が……遠くなっていく……コバンザメ……想像以上に粘るヤツだった……」

 

クジラの周りを、得体の知れない不気味な魚が大量に泳いでいる。
大量の魚たちの中で、ある群れは下降していき、またある群れは上昇していった。

 

クジラ「なんだ……?あそこの魚の群れはやたら速い速度で上昇しているぞ?なんだかわからねぇが……あそこに行きゃ上昇できる……かも……」

 

クジラはその上昇している魚の群れのいる地点へなんとか泳いでいった。

 

クジラ「!……そうか。わかったぜ、ここは暖流と寒流の境目……緩衝地帯なんだ。海中で対流が起こって暖かい水流が上昇しているんだ」

 

クジラの体はその流れに沿って上昇していく。

 

クジラ「……助かった……のか?」

 

神「勝負あったな!1位はトビウオ、2位はクジラ……以上ッ!」

お知らせ

次回の「関西創作交流会(主に自分の作品を見せながら雑談する会)」は9月9日(土)寝屋川市で行います。参加費無料なのでぜひご参加ください。

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