ユニバース〜私たちの宇宙〜

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タイトル:「ユニバース 第1章 恐竜編」

 

登場人物紹介
トリケラ:トリケラトプス。常識者、いい人。
ティラノ:ティラノサウルス。アホ。
プテラ:占い師にして魔法使い。未来が見える。博士(はかせ)と呼ばれている。

 

 

キーン(隕石が宇宙空間を突っ走っている。隕石に「いんせき」と文字で書いてある)
ゴォォォ…(隕石が地球へ向かっている。地球には「ちきゅう」と文字で書いてある)
(トリケラ、プテラ、ティラノ、空を見上げる)3人「ん?」
ゴオオオ!(隕石が突っ込んでくる。3人それを見ている)
ズガーーーン!!3人「ギャアアアアーーーーーーッッ!」(隕石、地球に激突。)
(布団から起き上がって)トリケラ「はっ……夢か」

 

プテラ「われわれ恐竜が絶滅する夢?」(プテラこちらを振り返る)トリケラ「ああ」
トリケラ「隕石が落ちてその衝撃と熱量で地球が火の海に包まれるのさ」(マグマの津波のシーン、「ドドドド…」)プテラ「ふーむ…」
ティラノ「それただの夢だろ?なに真剣になってんのさ?」トリケラ「いや、あんまりリアルだったもんで」
プテラ「トリケラよ、それは予知夢かもしれんぞ」(プテラ、水晶を取り出す)トリケラ・ティラノ「え?」
トリケラ「予知夢?この夢の内容が近い未来、本当に起こるってことか?」プテラ「実はほかにも隕石落下の夢を見たという者がたくさんおってな、どうやら偶然ではなさそうじゃ」
(水晶を見て)プテラ「ワシの予言では、1年後あたり……」トリケラ「1年後に隕石が降ってきて、俺たちは絶滅するのか?」

 

プテラ「この水晶には未来の出来事が映し出される。今からはるか未来の地上を見てやろう」
水晶に人間たちが映し出されているのを3人で見ている。プテラ「こいつらがわれわれに代わって地球を支配している連中だ」
ティラノ「こんな貧相なサルもどきが我々に代わって地上を支配しておるのか……許せん!」プテラ「甘く見るな。奴らは哺乳類だぞ。しかも高等霊長類だ」
ティラノ「なんだそれ?」プテラ「チンパンジーの10万倍くらい頭がいいってことだ」トリケラ・ティラノ「なにーーーーっ!?」

 

ティラノ「(冷や汗をかいて)10万倍は大げさだろう…」トリケラ「(水晶を見て)いや…ヤツらの周囲にある物体や住居?を見る限り、それは十分ありうる」
トリケラ「チンパンって2桁の掛け算ができるんだぞ?奴らでさえその頭脳が我々の脅威となっているのに…」ティラノ「(頭を抱えて)俺、1桁の足し算できない…」
トリケラ「(いや、もしかするとこの人間って奴ら、2桁の掛け算など幼少時にとっくに全員できるくらいかもしれん。だとすればこいつらの頭脳はわれわれの想像をはるかに超えている。ならばその行き着く未来は…)」プテラ「(トリケラを横眼で見つめて)…」
プテラ「するどいの、トリケラ。おそらくお前の思っている通りじゃ。だがその話は後にしよう。今はこの隕石についてだ」トリケラ・ティラノ「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

トリケラ「そういうわけだ。頼む、ミサイルを作ってくれ」サル「あー……」
サル「おたくら、それがサルにものを頼む態度かぁ?」ティラノ「んだとてめーっ!」
トリケラ「いくらほしいんだ?」サル「わかってんじゃねーか」

 

ティラノ「おいサル、調子こいてんじゃねーぞこら」サル「あ?」
ティラノ「隕石が降ってきたら地球は氷で覆われて、だれも住めなくなる。つまり……」
ティラノ「てめーも死ぬんだよ!」サル「えーーーっ!?」
ティラノ「俺らでさえ全滅なのに、てめーが生き残れるわけねーだろボケ!」サル「……」トリケラ「……」

 

サル「ど、どうすりゃいいんだ……」トリケラ「今から見せる設計図通りに作ってくれればいい」
サル「設計図なんてあんのか!?」プテラ「わしが未来の人類から設計図を透視してみせようぞ」
(設計図が水面に映し出される)
サル「ちょっと待て、なんだこりゃさっぱりわからん」ティラノ「おい」

 

 

隕石の速度:
恐竜A「おい、隕石の落下速度はマッハ50にもなるらしいぞ」恐竜B「ほう!またどえらいスピードだな!」
恐竜A「秒速にして15〜20kmくらいだ」恐竜B「へー」
恐竜A「へーじゃねーよ。あの雲が高さ2kmだとしたら、隕石が雲から出てきてから地上に落ちるまで0.1秒しかないぞ?」恐竜B「え?」
恐竜B「おい!じゃあ、どうやって逃げればいいんだ?」恐竜A「……」

 

空の暗さ:
恐竜A「まあ実際は真下に落ちてくることはまれだろうし、もう少し時間があるだろう」
恐竜A「それに巨大な隕石なら、空が暗くなってわかるはずだ」恐竜B「なるほど!」
恐竜B「んじゃ、空が暗くなったら逃げればいいんだな?」恐竜A「まあ、そうかも」
恐竜B「あ、でも夜に降ってきたらどうすんだよ!」恐竜A「そいつは……どうしようもないな」

 

ヒトへの進化:
後年にヒトへ進化できるのは猿の一種だという話になり、サルがティラノにうらやましがられるが、
ヒトに進化できるのは特殊なサルで、このサルには不可能だということがわかり、ティラノに「アホすぎざまあ」とといわれる。

 

プテラが未来を予測する水晶で現代の人間の生活を見てみると、そこにはネズミやゴキブリがいる。
なぜこいつらは生き延びたのか。恐竜は絶滅したのに、という疑問から、隕石による種の絶滅に対する研究を3匹は始める。
直接の衝撃で死滅したのではなく、太陽光の減少や熱による酸素不足が直接の原因とわかる。つまり窒息。
サルに核爆弾を作らせるよりもそちらのほうが重要だ。
結果、「小型の方が必要な酸素が少ない」ということと、「胎盤がある」ということ(子供をおなかの中で育てることで、死ににくくする。これで種を維持したという説)
まずは酸素が少なくても生きる練習。できるだけ息を吸わずに一日を過ごす。余計なエネルギーを使わないように、ピクリとも動かない。
次に赤ん坊を生き延びさせる方法。地下で卵を産み、ある程度までそこで育てる。地下帝国を設立。
しかし残念なことに、隕石は3匹のいるところぴったりに直撃し、やはり滅んでしまう。

 

人の世界には保険というものがあり、2050年の人類は60〜100歳を快適に過ごすために0〜60歳までを犠牲にする。
トリケラたちは不思議に思う。

 

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現代・アメーバ編

 

アメーバの一日:
アメーバ「んー、今日は気分がいいから生殖するか」
アメーバ「よっ!……んっ……」
アメーバ「ムハァッ!」
アメーバ「よう、相棒!」

 

その2:
アメーバA「お前は俺から生まれたんだ。だから俺のことは兄貴と呼べ」アメーバB「!?」
アメーバB「何いってる。お前が俺から分裂したんだろうが。兄貴は俺だ」
アメーバA「勘違いするな。お前が俺から分裂したんだよ」
アメーバB「いーや、違うね。お前が俺から……」(以下永久に続く)

 

その3:
1日後。(大量のアメーバ)
先ほどのアメーバは、細胞分裂しまくった結果、200匹まで増殖。
総勢200匹のアメーバによる、壮絶な兄弟げんかが始まろうとしていた。
長男は俺だ!(200匹、けんかしている)

 

知能:
アメーバA「ヒトのヤツら、頭の悪い連中のことを『単細胞』と罵るらしい」アメーバB「それはわれわれ単細胞生物がアホだという意味か?」
アメーバA「アホというだけではない。地上を支配しているのがヤツらなのだから、知能イコール種の強さなのだわれわれは……」アメーバB「アホ!しかも弱い!なんたる屈辱!」
アメーバA「ヒトみたいな知能があれば、われわれも地上の支配者になれるかもしれんというのに……」アメーバB「ヒトどころか、今のわれわれは小魚にも勝てんぞ?何しろ単細胞」
アメーバA「まずは多細胞生物になることだ」アメーバB「うむ!認めたくないが、われわれ単細胞生物はアホすぎる!」
アメーバB「しかしどうすればいいのだ?今から多細胞生物に進化するなど……」アメーバA「要するにたくさんの細胞になればいいんだろ?細胞分裂を繰り返し、われわれ自身の数を増やして合体すれば多細胞になるではないか」アメーバB「なるほど!」
(大量に分裂した後、合体しようとしているが何もならない)アメーバA、B「なぜだ……何も起こらん」

 

アメーバB「おい、多細胞生物ってのは、炭素が多いらしいぞ!」アメーバA「なに!?」
アメーバA「よくわからんが、炭素を体に取り込めば賢くなれるんだな?」アメーバB「その可能性はある」
(AとB、炭の上でじっとしている)アメーバC「おたくら、なにしてんの?」

 

高すぎる目標:
アメーバC「多細胞生物はですね、炭素が複雑に結合しているんです。多いだけじゃだめなんですよ」アメーバA「なんと!」
アメーバB「まあ、いきなりヒトを目指すのは無理があったか」アメーバA「むう……」
(金魚を指差す)アメーバA「最初はあのへんあたりを目指そう」アメーバB「おお、いかにもバカそうだ!あれくらいならわれわれでもなれるかもしれん!」(金魚、ムッとする)
(金魚、アメーバを食べようとする。アメーバ逃げる)アメーバA「待て、話し合おう!侮辱するつもりはなかった!」

 

動物への進化:
金魚「お前らが俺みたいに?バカいうんじゃねーよ。何億年かかると思ってんだ?」アメーバA「お、億?」
アメーバA「……せめて数年以内で何とかならないだろうか」金魚「おいおい、せっかちさんだな」
金魚「あのへんどうだ?プランクトンっていうんだが」アメーバA「ほう……あれくらいなら」
金魚「まあ100万年くらいで見積もってくれ」アメーバA「……」

 

チーム:
(落ち込むアメーバ)金魚「だいたい、なんでお前らそんなに賢くなりたいんだよ」
アメーバA「生態系の最下層として、逃げ回るだけの人生に疲れたのだ」金魚「まあわからんでもない」
金魚「知能はともかく、強くなりたいならチームを組むというのはどうだ?」アメーバA「チームか……」
(アメーバ、200匹のけんかを思い出す)アメーバA「だめかもしれない……」金魚「まあ難しいからな」

 

生殖の美学:
細胞分裂に飽きてきて、おもしろおかしく細胞分裂する方法を考え出す。
ためしにダンスしながらやってみる。Aはズンドコ節を、Bはファイヤーダンスをしながら分裂してみるが、楽しくない。

 

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現代・植物編

 

光合成の開発:
一生働かずに食っていける方法を考え出した。
それは……植物「くわっ!」
光合成。マスター。
植物「ふう、これで一生動かなくても生きていけるぜ……」

 

チーターの苦悩:
(チーターがとぼとぼ歩いてくる)植物「どうしたね?チーターさん」
チーター「狩りに失敗してさ、もう腹へって歩けねぇよ……」植物「あー、大変だねぇ」
チーター「あんたはいいなぁ、狩りなんてしなくてもいいだろ?」植物「まぁね」
植物「何なら教えようか?光合成」チーター「俺には無理だと思うけどなぁ……」

 

植物「まず葉緑体がいるなぁ、あと細胞壁」チーター「どうすりゃいいんだよ……」
植物「まあでも、動けないのもけっこう嫌ですよ?」チーター「どこが?」
植物「例えばあれ」チーター「?」
植物「あそこのキリンが去るまでそばにいてくれませんかね」チーター「逃げられないのか」

 

植物「シマウマの群れが来たときはホラーですよ」
植物「仲間が順に食われていく」仲間「ギャー!」シマウマ「むしゃむしゃ」
植物「次は俺かーーー!」
シマウマ「満腹だからもういいや(行ってしまう)」植物「ブクブク(恐怖で泡を吹いている)」

 

チーター「まあ、天敵が来ても逃げられないってのは恐ろしいな」植物「全くです」
チーター「しかしまあ、なんで動かない生き方を選んだんだい?ある意味修羅の道じゃないか」
植物「確かに動けないというのは、リスクのある状態ではありますが……」
植物「そのリスクを犯してでも働きたくないというか」チーター「その考え方はどうかと思うぞ」

 

チーター「肉食動物も楽じゃないぜ」
チーター「この筋力が衰えたら餓死するしかない」
植物「自分でいうのもなんですが、草を食べればいいのでは?」チーター「それができたら苦労しねぇよ」
チーター「実は運動嫌いなんだよねー」植物「……」

 

チーター「ウチは母親が厳しくてさ……」
回想、チーター母「今日も100キロ越えられなかったじゃないの!」チーター「ごめんなさい……」
チーター「毎日毎日走らされる日々……」植物「お母さんも速かったんだ?」
チーター「俺を生む前は140キロ出せたらしいぜ?」植物「なんと!」

 

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氷河期編

 

あらすじ:
今から12000年前、寒すぎて困っているモグラは、「預言書」の中に出てくる「地球温暖化」の書を読む。
二酸化炭素を大量に排出すれば、地球はあったかくなるということを知り、さっそくそれをやろうとするが……
大量に呼吸をすればいいと思ったが、微々たるもの。
どうやら12000年後の人間たちは、化石燃料を燃やしすぎたのが原因らしい。
モグラは化石燃料を探し出し、燃やして暖を取ろうとする。

 

モグラ「寒い寒い寒い……」
ペンギン「大変そうだね」
モグラ「そのペンギンスーツ、あったかそうだね」
ペンギン「おい、これはやれないからな」

 

 

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宇宙の星々編

 

あらすじ:
1億年が1年に感じられる、地球。今年で46億歳。
ある日、地球は自分に住んでいる人間たちを話をしているとき、宇宙も星もいずれ死ぬのだという話(ビッグ・チル)を聞き、愕然とする。

 

 

月ができたわけ:
(月が飛んでくる)キーン!
(ガッ!)地球に当たる。「あだーーーーっ!」地球、痛そう。
ヒュン!(月、旋回してもう一度地球に当たる)
地球「どわっ!?」
(月。そのまま地球の周りを回り続ける)

 

地球「てめー何すんだ痛ぇだろこのボケ!」
月「すいません、すいません!わざとじゃないんです!」
月「あたしたちは重いから、重力で引き合っちゃうんですよ!」
地球「うそつけ!火星も木星もぶつかってこねーぞ!」
月「たまたまあたしの軌道上に兄さんがいたんですよ!」
地球「俺が悪いってのかてめー!」
月「すいませんそういう意味じゃないんですよー!」

 

月、地球の周りをまわっている。
月「ねえお兄ちゃん」地球「なんで?(太字)」
月「こうしてずっと一緒にいられるなんて、素敵ね。あたしたち運命の糸で結ばれてると思わない?」地球「重力でやむをえず引き合っている感じだな」
月「運命のパートナー、っていうか、お、お嫁……(照れながら)」地球「お前のおかげで俺の中の生命体が98%絶滅したんだが?」
月「そんな冷たくしないでよぉ……(月、地球へ接近する)」地球「あー寄るな寄るな、引力増えるだろ、津波が起こる」

 

地球「ちょっと人間たちに聞いてみるか。おい、どうなんだ?頭脳だけは達者な人間どもよ」
天文学者「あんた、ものの尋ねかたってのを知らないのかい?」
地球「ああ?つべこべいってんじゃねーぞこら?俺がちょっとへそに力いれりゃ、てめーの住んでるすぐ近くの山を噴火させることもできるんだぞ?」
天文学者「すいませんそれは勘弁してください」
地球「わかりゃいいんだよ。で、だ」
地球「俺らは不老不死だよな?永久のこのままなんだよな?」
天文学者「そんなことないですよ?」
地球「……え?」
天文学者「われわれの研究では、宇宙のすべての星星はいずれ消滅し、宇宙は絶対零度になり、それが永久に続きます」
地球「な、なにーーーーっ!」
地球「てめー!俺をだまそうったってそうはいかねーぞ!ちょっとへそに力いれりゃ……」
天文学者「うそじゃないですよ!本当なんですよ!脅しじゃないですって!」
地球「なにーっ!?」
天文学者「まあまあ、ずっと後の話じゃないですか」
地球「俺らにとってはすぐ明日のことなんだよ!おめーらの1億年は、俺らにとって1年ぐらいに感じるんだぞ!」

 

天文学者を脅すとき:
地球「今からこいつと激しくハグしてやってもいいんだぞ?」
月「お、お兄ちゃんにそんな激しく抱きしめられたら……あたし恥ずかしくて壊れちゃうよぉ!」
地球「ま、文字通り木っ端微塵だろうがな」
月「やん!お兄ちゃんのバカ!変態!どエッチ!」
地球「そのときの衝撃のエネルギーは、マグニチュード20くらい、核爆弾1000兆発分くらいかな」
月「お兄ちゃん、そんなにあたしのこと……その……あ、愛してくれてるんだね?」
地球「ちなみに俺らは星だから、性別とかはないんだがな」

 

地球「自転止めたろか?」

 

 

エンディング:
太陽の膨張で人類は滅び、太陽の超新星爆発で月は吹き飛んだが、地球はまだ生き残っていた。

 

地球「誰もいなくなっちまったな……それに……寒くなってきた」
地球「いざ独りになっちまうと、さびしいもんだな」
地球「ビッグ・チル……か。そろそろくるか?」
ブラックホール「失礼いたします」
地球「うおっ!て、てめー!ついにきやがったな!」
ブラックホール「ああ、ご心配なさらず。あなた、体はなくなっても意識はなくなりはしませんので」
地球「うわーっ!」

 

地球、ブラックホールに吸い込まれる。
ブラックホールの中で、地球とブラックホールの意識がある。

 

地球「ありゃ?意識があるぞ」
ブラックホール「私の中に取り込まれても、意識はあるままですよ」
地球「なんだ、そうなのか。人間のように、自我がなくなったりしないんだな」
地球「……ってことはなんだ?今まで吸い込んだやつらの意識もこの中にあるのか?」
ブラックホール「ええ」

 

ざわざわ……今まで飲み込まれた星たちのおしゃべりが聞こえる。

 

地球「えらい騒がしいな。あんた、何個の星を飲み込んだんだ?」
ブラックホール「んー、ざっと1000兆個くらいですかね」
地球「おい!ここには1000兆もの意識があるってのか?どうりで騒がしいわけだ!」
ブラックホール「まあいつも全部聞こえてるわけじゃありませんからね。基本、ほとんどの方は寝てますよ」
地球「それにしても、ブラックホールっていうから、どんな凶暴なやつかと思ってたが、案外社交的なんだな」
ブラックホール「恐れ入ります。何しろ大人数まとめる役割なので、コミュニケーション力は必須でして。クレームも多くて大変です」
地球「そんなもんか」

 

時間がたつ:
地球「なんか眠くなってきたな……ちょっと寝てもいいか?」
ブラックホール「どうぞどうぞ」
地球「まさか、起きたら死んでたなんてことはないよな?」
ブラックホール「大丈夫ですよ。ご安心を」

 

地球、しばらく寝る。
目が覚める。

 

地球「ふあー、よく寝たな」
ブラックホール「おはようございます。よくお休みでしたね」
地球「ああ……って、あれ?お前……ブラックホールじゃなくなってる?俺も?なんだこりゃ」
ブラックホール「ブラックホールが蒸発したんですよ。まあ、消滅したわけです。だからこうやって、宇宙空間にわれわれの意識だけが残っている状態です」
地球「おいおい、体がなくなっちまってるぞ」
ブラックホール「でも便利ですよ。意識だけですが、自由に移動できますから」
地球「お、ほんとだ。動けるぞ」
ブラックホール「どんな速さでも移動できますよ。旅行にでも行きますか?」
地球「お、いいなそれ。じゃあいくか!」

 

長い間二人で歩き回る。

 

地球「寒くなってきたな。それにもう最近、星もブラックホールもまったく見ねえ。なんもないな」
ブラックホール「そろそろ、ですかね」
地球「ビッグ・チル、か?」
ブラックホール「はい。この宇宙からすべての物質がなくなり、宇宙空間は絶対零度になり、それが永遠に続く。残っているのは、かつての星星の意識だけ」
地球「ようやく終わりか……長かったな」
ブラックホール「現在、宇宙の平均気温はマイナス273.13度。あと0.02度です」
地球「そうか……それにしても、静かだな」
ブラックホール「ええ、まあ星の意識はたくさんありますがね。おしゃべりでもしにいきますか?」
地球「いや、いい。ただ……」
ブラックホール「?」
地球「俺にはな、生き別れの妹がいるんだ。そいつ、俺より体が小さくてさ、近くの恒星が爆発したときに吹き飛んじまった。でも星ってのは、粉々になっても意識はどこかに残ってるんだよな」
ブラックホール「そうですよ。この広大な宇宙のどこかに、ですが」
地球「俺、旅に出るわ。そいつを探しに、さ。ほかにやりたいこともないし」
ブラックホール「妹さんを探しに、ですか。いいですね、その旅、私もご一緒してよろしいですか?」
地球「いいけど、なんで?」
ブラックホール「ここに一人でいても暇なもので」

地球「そっか。道連れがいるのもいいもんだな」
ブラックホール「ええ」
地球「よし、行くか!」

 

宇宙が誕生する前、この世界は多数の「膜」のようなもので構成されており、そのカーテンのような膜が互いに接触したとき、「ビッグ・バン」のような現象が起こり、宇宙が始まるという説がある。
われわれの宇宙は永遠に凍り付いてしまったが、今こうしている間にも、「別の宇宙」ができあがっているかもしれないのだ。

 

カーテンが接触し、ビッグバンが起こる。

 

終わり:

 

 

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現代・ミツバチ編

 

大企業の営業職の社員の一人であるミツバチは、奴隷のような毎日の生活に疲れていた。
ミツバチの世界には「独立」という言葉が存在しなかったが、あるときふと立ち寄ったネコマンマのネコ主人を見て、女王蜂から独立することを考えるようになる。
通常、ミツバチの世界では、会社を辞めると死刑になる。しかし蜂の巣を抜け出し、独立することを決意。
競争が激しく、なかなかうまくいかない。しまいに元の女王蜂につかまってしまい、処刑されそうになるが、会社にいたときの営業成績が非常によかったのに免じ、流刑にされる。
名もない島に流されたが、そこではミツバチが不足しており、花たちが困っていた。そこで蜜を運送する運送業を始める。
やがてその島では唯一の蜜運送業として独立し、創業者の記念式典が開かれるまでになった。

 

 

屋台の店、ネコの主人「へいらっしゃい!ネコまんまはいかが?」
ミツバチ「ハチミツはないんですか?」ネコ「それは置いてないなぁ」
ネコ「うまいぜ?ネコまんま」ミツバチ「じゃあそれをもらおうかな」
ミツバチ「!!う、うまい」ネコ「だろう?」

 

雨の日、ネコ「毎日来てくれてうれしいねぇ、ほらよ(ねこまんまを渡す)」
ミツバチ「いいなああんたは、自由で」「ネコ「どうしたね?」

 

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アイデア

 

「光」と「時間」が主人公となり、相対性理論を繰り広げる。

 

 

冥王代の鉄と炭素が主人公。重爆撃を受ける最中。鉄は物質のまま、爆撃のなすがままにされていたが、炭素はなぜかそのころ、ほかの物質と結合することに夢中になっており、時々面白いもの(有機化合物、生命の原型)を作り出していた。そのときなぜか「壊されたくない」と感じていた。やがてそれは生物の「死にたくない」という欲求につながっていく。
生命が始めて「種の保存」の本能を得た瞬間の話。無機物とは違う、険しい道を選ぶようになる。無機物は死の恐怖もないが、面白く生きる方法も持たない。鉄は「死の恐怖にさいなまれながら生きていくのは苦しそうだ」と避難するが、有機物の炭素は、それでもより複雑な生を楽しんでみたいと思う。

 

生命を生むには、コピーすればヒトでさえ15年あれば可能だが、無から生命を作り出すには数億年かかる。

 

 

(地球で重爆撃が起こっている。炭素原子と鉄原子(両方一粒)、吹っ飛ばされている。鉄は眠そうな顔。炭素は必死で叫んでいる)炭素「ぎゃー!」
(ドコーン)炭素「うぎゃー」
鉄「いちいち叫ぶなよ。痛くもかゆくもねぇだろ?俺たち無機物なんだぞ?」炭素「わかってるけどさぁ……」
炭素「こう、なんとなく体がむずむずするんだよな」鉄「むずむずってどこよ?お前一粒の原子だろ?」

 

鉄「お前神経質なんだよ。もっと鈍感なほうが世渡りしやすいぞ?」

 

 

(人間たちが葬式をしている)鉄「あれは何してるんだい?」炭素「葬式だよ。大切な家族が亡くなったんだ」
炭素「キミにはあの人たちの悲しみがわからないのかい?」鉄「わかんないよ。俺無機物だよ?」

 

(過労で自殺した人の検証現場)鉄「あれはなんだい?」炭素「人が自殺したんだね。過労で人生に疲れた、とのことだ」
炭素「キミにはあの人の苦しみがわからないのかい?」鉄「わかるわけないでしょ。俺鉄だよ?」

 

鉄「過労って、何したんだい?」炭素「仕事しすぎたんだよ」
鉄「仕事ってなんだい?」炭素「死なないために働くことさ。お金を稼ぐためにやるんだ」
鉄「……お金ってなんだい?」炭素「もう説明するの面倒になってきたよ……」
(硬貨が落ちている)炭素「ああ、これがお金だよ」鉄「なんだ、俺たちの仲間じゃねぇか。人間は俺たちがほしいのかい?」
炭素「いやこういう形でないとだめなんだ。ただの鉄がほしいわけじゃないんだ」鉄「なんで?」
炭素「なんでって……ああもう、説明するの難しいよ、なんで無機物なのにそんなに好奇心あるんだい?どうでもいいだろ?」鉄「いやなんとなく」

 

 

炭素「キミはお気楽でいいね。痛みも悲しみも感じないし、死の恐怖もない」鉄「それが普通だっつーの。あいつらが例外なんだよ」
鉄「まあその分、楽しいこともあるんでしょ?あいつら」炭素「まあいろいろあるよ」
炭素「美味いもん食ったり、生殖したり、鼻クソほじったり、ボンバーマンやったり……」鉄「ふーん」

 

炭素「いわば人間たちはね、キミみたいに何も感じなくなって、何もわからなくなることを、死ぬ、と呼んでいるんだ。それが嫌で、無価値となるんだ」
(鉄、怒る。炭素、逃げる)鉄「それは俺ら無機物がアホだということなのか?てめー!ちょっとプライドが傷ついたぜ!」炭素「無機物にプライドなんてあるのかい!」

 

炭素「そんなに好奇心とかプライドとかあるんなら、キミはもしかして有機物になれる才能があるのかもしれない」鉄「なんと!俺が生物になれると?」
炭素「ためしに人間の体内に入れたら、いろんな化学変化が起きて生物の一部になれるかも」鉄「よし、それならあいつの中に入り込んでやるか」
炭素「ああちょっとまって。口から入ったら消化されて、うんこの一部になってケツから出てくるだけだよ」鉄「……それが何か?」
炭素「臭いよ!汚いよ!」鉄「臭いとかわかんねーよ。別に平気だよ。俺無機物だし」