正しい線を追求する

まず正確に線を描く

美術にはさまざまな要素があり、たとえば陰影や色彩などもとても重要な要素ですが、まずはじめに正しい「線」を描くことを目標にしましょう。
「正確に描けているかどうか」を計る最初の指標は線だからです。

 

また通常の絵画の手順からしても、最初に線を描き、次に陰影や色を塗っていきます。どんなに陰影や色塗りがうまかったとしても、最初に描いた線が不正確であれば正確な絵にはなりません。

 

構造の正しさは最初に線に現れます。まずはじめに正しい線を描くことを目標にします。

 

 

線とは何か

ところで「線」とは何でしょうか。美術でいう「輪郭線」のことですが、現実の物体を見てみると「輪郭線」などというものはどこにも見えません。
実は現実世界には、輪郭線というものは存在しません。私達が勝手に認識しているだけです。

 

線とは主に「物体と物体の境目」のことになります。境目以外の場合もありますが、それはひとまず置いておきましょう。
物体の形状の正確さを示す線を描く場合は、物体同士の境目をいかに正確に認識し、記述するかになります。

 

しかしこれは、実は簡単なことではないのです。本当のところ、線を描画する前に「物体の構造や形状」を先に理解する必要があります。構造を理解したうえで、「この形状だと別の物体との境界線はどこかな?」と考えてそこを輪郭線とするわけです。体のどこかに線が引かれているわけではありません。

 

ただし形状というのは、「その角度から見た形状」のことです。たとえば腕をたらして真正面から見た場合と、前に突き出した腕を真正面から見た場合とでは、輪郭線に相当する腕の部分は異なります。

 

画像:腕を横から見た図と正面から見た図
腕を横から見た図と正面から見た図

 

同じ腕を描画したにもかかわらず、皮膚上の輪郭線となる部分はそれぞれまったく違います。
皮膚の上の決まった場所に輪郭線が描かれているわけではなく、輪郭線に相当する部分は、ポーズや視点によって毎回異なるのです。
これが人物画を困難にしている大きな理由の一つです。この問題は、先に線を描くのではなく、先に物体の構造を正確に把握することで解決できます。