考えながら練習する

量をこなすだけでは新しい技術は身に付かないので、新しい技術を覚えるためには当然、新しい技術を勉強しなければなりません。
そして勉強したら、現在の自分の描き方の中にどのように取り入れるかを考えましょう。

 

たとえばあなたがもし、いきなり線を描き始める描きかたをしていたとします。
もしここで「体の各部分の長さを覚える」ということを学習したのなら、まず描く前に、覚えた体の長さをどうやって紙に描いていくかを考えます。
今まではただ、頭の中の記憶に頼って体を描いていたのなら、描きだす前に「ここの長さはこれ、割合はこれくらいで……」などと考え、紙面に体の各部のおよその位置の見当をつけてから描き始めましょう。

 

覚えた技術は、現在の自分の描き方に取り入れていきます。

 

 

技術を選択する

ただしこれから述べるすべての技術を、すべて覚えてすべて自分の手順に取り入れなければならない、というわけではありません。
中には難しすぎたり、あまり自分の苦手な分野について長々と書いてあったりすることがあるかもしれません。

 

また今までは効率よくやれていたのに、新しい技術を取り入れたために効率が悪くなった、というような事態も大いに起こります。
そういう場合は、その技術は取り入れなければいいのです。それが必要かどうかを考え、選択して取り入れていきましょう。すべてを覚える必要はありません。

 

たとえばこれから、複雑な数学的遠近法による計算のしかたなどが出てきます。これらは場合によっては、計算にかなり時間がかかることがあります。

 

もしあなたが漫画家で、絵をとても速く描かなければならないとしたらどうでしょうか?
数学的遠近法は、確かに非常に正確に描くことができるのですが、あなたの目的によってはあまり正確さは必要でないかもしれません。
あなたが正確さよりも速度のほうをずっと必要としている場合、難しい計算をしている時間はないはずです。そういう場合は、難しい計算方法を覚えなくてもいいし、使う必要はありません。

 

 

反省する

練習が終わったら、どこがよくてどこが悪いかを考えましょう。

 

どんな技術の習得も、人によって個人差があるものです。人によっては、少し話を聞いて、すぐに完全に身についてしまう技術もあります。
完全に身に付き、それを簡単に使いこなせるようになったなら、その技術はそれ以上勉強する必要はありません。
何度も同じことを繰り返せば、記憶としては強力に身についていきますが、もう十分だと思ったらほかの技術を身につけにいきましょう。ずっと同じことばかりやっているのは時間の無駄です。

 

逆に、自分に必要な技術を覚えたけどなかなか身に付かず、うまく使いこなせなかった技術については、何度も練習しましょう。
練習した後に自分の絵を見て、「ここはまだ身についていないな」と思ったら、次にまたその技術を使い、記憶に定着させるように努力しましょう。

 

自分の絵を見て「ここはちゃんと覚えた技術を使ったのに、なぜかおかしく見える」ということがあるかもしれません。
そのような場合、なぜおかしく見えるのか、ちゃんと考えましょう。その技術の使い方が間違っているのかもしれないし、それとは別の技術がまだ身についていないのが原因かもしれません。

 

 

具体的に問題を提示する

自分に何が足りないのか、何が足りているかをしっかり把握できるようにします。
そしてここが重要なことですが、「足りない技術は何であるか」を明確にしておきます。そしてその技術は、後でしっかり勉強しておきましょう。

 

「自分にはこれが足りない」とわかっていながら、その足りない技術を身につける方法を知っていなければ意味がありません。
たとえば「自分には実物の人間の観察が足りない」と思うのであれば、実物の人間の資料を集めなければなりません。実物の資料が足りないとわかっているのに、相変わらずマンガのキャラクターばかり見ているようでは、上達はしないのです。

 

 

技術上の反省点を提示する

また技術以外の要因を反省の材料にはしないでください。
たとえば「自分には根性が足りない」とか「練習量が足りない」とか、そういう反省は意味がありません。具体的な対策の打ちようがないからです。

 

根性が足りないから、何をすればいいのでしょうか?その問題を直すためにどうすればいいのか、具体的に行動が示されなければ、対策の打ちようがないのです。

 

問題は可能な限り具体的に、技術的な内容として提示します。たとえば「指の関節点についてよく理解していなかった。位置を間違えて理解していた」というふうに。
問題が具体的であれば、すぐに対策が打てます。この問題であれば、指の関節位置を復習すればいいだけです。復習すれば、次は間違えずに描くことができるでしょう。

 

 

正しい練習法で継続反復する

正しい勉強、練習方法がわかったら、何度も練習しましょう。
先ほどから述べているように、記憶は何度も反復することで刷り込まれます。

 

間違った勉強をすると間違ったやり方が記憶されてよくないのですが、正しいやり方ならしっかり記憶すべきで、これが自分のスキルとなります。

 

また単純な暗記のみでなく、手順を含めた制作方法は個人によって異なるので、自分に最も合ったやり方が確立されるまでには時間がかかります。
知識を記憶するとともに、制作方法についても試行錯誤を繰り返し、考えながら勉強を進めてください。