遠近法の数学的理論

遠近法は「パース」あるいは「パースペクティブ」ともいいます。同じ意味です。

 

使い方だけ覚えればいい

これから遠近法について、数学的に厳密な値を計算していきます。が、必ずしもすべての理屈を理解する必要はありません。
理論自体はかなりややこしいところもありますし、いちいちすべて厳密に計算していると、時間がかかりすぎます。

 

要するに私たちは絵が描ければいいのであって、理屈を理解することが最終目的ではありません。
あまり難しいと感じるようなら、理論の部分は飛ばしてしまい、とりあえずは使い方だけ覚えてしまいましょう。

 

前の三角関数のところでは、絵を描くときにもけっこうややこしい計算をしなければなりませんでした。この遠近法についてもやはり、厳密にやるとかなりややこしい計算があります。
しかしたとえ理解していたとしても、計算間違いの可能性もありますし、計算時間がかかりすぎると効率が悪くなってしまいます。

 

そのために簡易に計算する方法や、いくつか数字を暗記すれば使える、というような方法も考えました。
そしてどの方法を使うかはあなたの目的しだいです。目的によっては、すべて不要かもしれません。使える要素があると思ったら、自分の描き方に取り入れてみてください。

 

 

近似計算について

これから説明する方法は、何とか現実的に使用できる程度のものの中で、もっとも精密に計算できるものです。
実際には計算や描画の速さも非常に重要な要素ですので、これよりもう少し速く計算する方法も加えて紹介するつもりです。

 

しかしこれらはすべて、近似計算です。
「近似」というのは、厳密に完全に計算するとあまりにも計算量が膨大になってしまい、時間がかかりすぎたりいつまでたっても終わらないような計算なので、少し計算精度を低くしつつ、より簡単に計算できるようにしたものです。

 

近似値の例の一つとして、円周率を3.14とか3.1とするものがあります。
もう少し精密にすると3.1415926などとなりますし、完全な値は数字で表せないので、数学の世界ではこの完全な値を「π」としてそのまま文字として計算したりします。

 

これから紹介する方法もすべて近似式なので、完全に正確な値は出せません。遠近による拡大縮小率は、厳密に求めると意外にも膨大な計算量になってしまいます。
しかし人物画や風景画などで、0.01ミリ間違ってもたいしたことはありません。そこまで厳密に計算するより、精度を下げて速く描画することのほうが、多くの場合は大事です。