無価値への対処:価値観は根深い問題

価値観と能力・思い込み・行動

心理学の世界で価値観というのは、能力や思い込み、さらには行動まで影響すると考えられています。

 

たとえば「勉強するとあとでいいことがある」という価値観を持っていると、そういう人は一生懸命勉強する傾向があるため(行動する)、学力という「能力」が上がります。

 

またそれによって学力が上がるため、「私は勉強ができない」というような思い込みもあまり発生しません。

 

しかし「勉強しても意味がない」と思っている人はどうでしょうか?
そういう人は勉強しなくなり(行動しない)、勉強しないことで学力も身につかず(能力)、能力がないために次第に「自分は勉強ができない」という「思い込み」ができあがります。

 

問題なのは、このような「勉強しない」価値観が形成されてしまっていると、急に行動だけ、つまりいきなり勉強しようとしても、なかなかできません。
価値観が「勉強しない」方向に向いているため、自分はどうせ成績が上がらないという思い込みがあったりすると、勉強するという行動が非常に起こしづらいのです。
実際テストなどをして成績が悪い(能力が低い)と、ますますやる気が出なくなります。

 

やみくもに勉強しようとする前に、なぜ勉強が必要なのかを知る必要があります。

 

 

実体験と情報

人によっては今までの人生の蓄積により、価値観が「勉強しない」方向に大きく向いていることがあります。

 

たとえば人によっては、「勉強しないこと」を価値として見出す人もいます。
それはたとえば、勉強することに「ひ弱」「根暗」のようなネガティブなイメージを持っていたりする場合です。

 

しかしこういった価値観を持っていると、人生の後々で自分を不利にします。

 

また家庭環境によっては、常にストレスにさらされるような状況もあります。
たとえば日常的に親が子供を虐待しているような環境では、子供は安心して勉強に集中することができません。

 

子供にとって「安心できる家庭」というのは非常に重要で、精神的な発達に重大な影響を及ぼすことが、昔から指摘されています。

 

 

異なる価値観へ接触するための実体験

学力だけでなく、人の価値観全体を形成するものの大きな要因の一つに、家庭環境があります。

 

実際のところ心理療法の世界では、病的な心理的問題の多くは家庭環境に問題を見出すことができます。
それほどまでに家庭環境の影響は強いものです。

 

しかし子供は生まれる家を選ぶことはできませんので、残念ながら劣悪な家庭環境に生まれる子供も多くいます。
劣悪という言い方はよくないのですが、要するにそのままでは社会に適応しづらい価値観が形成されている場合などです。

 

統計的にも、社会にうまく適応できない親の子供は、やはり同じく社会に適応しづらい傾向があるということです。
こういった傾向がある以上、可能な限りその環境に抵抗するようにしなければ、社会でうまく生きていくことができません。

 

そのためには、特にその子供たちの親とは別の価値観を持つ大人たちに接触する必要があるといわれ、そのような試みも行われています。

 

たとえばアルバイトやボランティアなどをして、いろいろな価値観を持つ大人たちと接触すること。
あるいはホームステイのようなものを実施し、別の家庭の中でしばらく子供を生活させてみるなどの試みがあります。

 

頭の中で得る情報でも人の価値観はある程度変わりますが、やはり実体験による価値観への影響は絶大です。

 

これは少し遠回りなことなのですが、高校生でもアルバイトなどしてみて、社会の仕組みを知っておくと、勉強の必要性を学べるかもしれません。
ただアルバイトですと単なる小遣い稼ぎになってしまうこともあり、通常の就職に比べると学べることは多くありません。
またアルバイトに時間を使いすぎると、受験勉強がおろそかになってしまうかもしれませんので、無理にする必要はないでしょう。

 

私は高校生の頃、自分の将来を具体的にイメージしづらく、勉強がどう役に立つかわからないためにやる気が出ず、困っていました。
ひどく行き詰った感じで、狭い世界で生きている感じがしていました。
このような調子でずっと勉強のやる気が出ないというのはよくないので、短期でアルバイトでもして社会の仕組みを少しでも知ったほうがよかったかもしれません。
ただ私の高校はアルバイト禁止だったので、やろうとしてもできなかったのですが。

 

アルバイトやボランティア、地域活動などで、いろいろな大人や価値観に接触する機会を作ることはできます。
しかしこれらは時間をある程度消費します。時間にかなり余裕のあるうちにはやってみてもいいかもしれません。

 

 

労働と勉強

実社会で労働するのと受験勉強するのとでは、やっていることが多いに違います。
アルバイトやボランティアをしていると、人によってはつらい受験勉強から一時的に逃げているように感じられるかもしれません。
これらは社会の仕組みを知るのが最大の目的なのであって、単なる休憩になっては意味がありません。

 

受験勉強というのは少々特殊な試練ではあります。
実社会の労働とはかけ離れているように見えるかもしれませんが、これはこれで非常に重要なのです。今は。

 

この特殊な競争に勝つためには、実社会に出て労働しても有利になるわけではありません。
先回りして社会のことを知っても学力は上がりません。
アルバイトやボランティアも、それ自体が成績を上げるわけではありませんので、そこは注意してください。
別にこのようなことをしなくても勉強に集中できるなら、やらないほうがいいです。勉強に集中しましょう。