絶望・無力への対処:本当にできないのかできないと思い込んでいるのか

高すぎる目標は無意味

絶望と無力が頭脳的なパフォーマンスを低下させることについて述べましたが、できないという思い込みが常に悪いというわけではありません。
客観的に見て明らかに不可能である場合は、単なる適切な判断、というにすぎません。
たとえば100メートルを5秒で走れるようになるとか、普通に考えてまずありえないようなことを願うのは、時間の無駄といえるでしょう。

 

現実的に到底できそうにもないことを望むと、目標も同じく到底達成不可能なものになってしまい、やってみてうまくいきません。
やってみてうまくいかないと、次は以前よりももっと強い絶望感、無力感がやってきます。
そして計画に失敗し続けると、慢性的に絶望感、無力感が蓄積し、まったくやる気が出てこなくなってしまいます。

 

全く非現実的な目標を立てるわけにはいきません。

 

 

できるのにできないと思い込む場合

それでも私たちはよく、本当はできるのにできないと思い込む、ということをします。
成績などもその一種で、自分はどんなに頑張ってもこの点数はとれないとか、進学はできないとか、そういう思い込みです。

 

その加減は判断が難しいところです。
全国の模擬試験で偏差値30程度の高校生でも、これからとてつもなく努力したら東大や京大に行けるかもしれません。

 

 

小さな目標を立てて確実に達成する

思い込みというのは、私たちが今までの人生で積み重ねてきた判断にもとづいて作られます。
いい成績が取れないという思い込みは、今までずっといい成績を取ったことがないのが原因である場合が多いです。
あるいは周囲から「お前は頭の悪い子だ」といわれ続けていると、成績が結構いいのに「自分は頭が悪いから」と思い込んだりするものです。

 

こういった「できない」経験をずっと積み重ねていると、なかなか「これからはできる!」ということが信じにくくなります。
できないという思い込みをなくすための一番いい方法は、今からいい結果を出し続けることです。

 

今日すぐ、明日にでも「今までできていなかったけど、○時間勉強をした」という結果をしっかり出しましょう。
過去に悪い経験を積み重ねていても、今それができたなら、それによって自分の過去の思い込みは上書きされていきます。

 

そして良好な結果を出すためには、あまり無茶な計画や目標を立ててはいけません。
少しずつできるようになっていけばいいので、まずは今すぐ簡単に達成できそうな目標を立てて、それを確実にこなしましょう。

 

たとえハイテンションな気分になって、何でもできそうだと思っても、目標や計画は冷静に立てなければなりません。
今まで少しも勉強する習慣がなかった人なら、まずは1日10分〜20分、どんなに長くても30分程度、勉強することを目標にしましょう。

 

言い換えると、無力感をなくすためのもっともいい方法の一つは、目標を下げることです。

 

 

心理学では極端な例を出す人がいる

心理学、あるいは市販の自己啓発の類の本では、極端な成功例を上げてあたかも自分も成功できるような錯覚に陥らせるものがあります。

 

たとえば私が見たものでは、英語の勉強のプロジェクトで、数時間で英単語を2000語も覚えたというものがあります。
しかしこれは非常に手の込んだ、人もお金もかかった学習システムを使っており、ふつうの人や学校や塾で真似できるものではありません。

 

さらに2000語覚えたというのは、その授業を受けた人の中で最高の数値であり、平均ではありません。

 

ほかにも数か月の勉強で司法試験に受かったとか、成績ビリだった人が半年勉強して東大に受かったとか、そんな奇跡のような話が転がっていたりします。
これらはそのやり方で、成功した人の中でもごく一握りの大成功例を出しただけの話で、自分にも同じように適用できると思うと全然うまくいかなかったりします。

 

たとえるなら、宝くじに大当たりした人に「この店で買えば絶対当たるよ!」といわれて、その店で宝くじを買いに行くようなものです。
うまくいくはずがありません。

 

こういったお話は、聞いてやる気が出て「自分にもできる!」という気分になるのはいいのですが、本当にそれと同じことができると思って、途方もない目標を定めてしまうかもしれません。

 

気分を盛り上げても、目標や計画は現実的でなければなりません。